地理学評論 Vol. 92, No. 2 2019年 3月

●―論 説
ウランバートルにおけるゲル地区の形成と居住者の移住・移動・定着 松宮邑子・47‒71

 

●――短 報
「新宿二丁目」地区におけるゲイ男性の場所イメージとその変化 須崎成二・72‒87

 

●―書 評
伊東維年・鹿嶋 洋編著: 熊本地震と地域産業(松山 洋)・88‒89

荒木一視・岩間信之・楮原京子・熊谷美香・田中耕市・中村 努・松多信尚:
救援物資輸送の地理学̶̶被災地へのルートを確保せよ(関根良平)・90‒91

帝国書院編集部編: 百年前の地図帳・教科書から読みとく大正時代の日本(安藤哲郎)・92‒93

 

 

公益社団法人日本地理学会『「新ビジョン(中期目標)』」94‒105

 

2019年日本地理学会春季学術大会プログラム・106‒130

学界消息・131‒132

会  告・表紙2,3および133‒134

2019年秋季学術大会のお知らせ(第1報)・表紙2

 

 

論説

ウランバートルにおけるゲル地区の形成と居住者の移住・移動・定着

松宮邑子
明治大学大学院生,日本学術振興会特別研究員

本稿では,体制移行後のウランバートルで転入人口の増加とともに拡大した居住地「ゲル地区」を対象に,ゲル地区という住まい空間が形成され拡大していくマクロな過程を,居住者個々の移住・移動・定着というミクロな実践から描き出す.ゲル地区の形成は,遊牧生活に由来する住居「ゲル」,所有権を付与された広い土地,親族関係の紐帯に基づく居住地移動によって担われてきた.これを象徴するのが,移住や移動において活発に実践される親族のハシャー(居住区画)での一時的なゲル居住である.ゲル地区は,居住者が自らのハシャーを取得していく過程で外縁部へと拡大すると同時に,内部において固定的な家屋が建設されることで恒久化が進む.さらに居住者は,自らが定着を進める過程で新たなゲル居住者を受け入れていく.ハシャーという個々の空間につねに定住性と遊動性を有しながら,居住地としての恒常性を獲得してきた点に,ゲル地区という住まい空間の固有性が見出せる.

キーワード:過剰都市化,都市内移動,親族関係,ゲル地区,ウランバートル,モンゴル

(地理学評論 92-2 47-71 2019)

 

 

 

「新宿二丁目」地区におけるゲイ男性の場所イメージとその変化

須崎成二
首都大学東京大学院生

本研究は,日本の地理学では実証研究が乏しいセクシュアリティに着目し,ゲイ男性の新宿二丁目に対する場所イメージを,彼らの実践および経験に基づいて検討したものである.首都圏に居住するゲイ男性24名への聞取り調査を行った結果,オンラインツールなどによるゲイ男性同士の新たなつながりの創出は,新宿二丁目のゲイバー利用を妨げるわけではないことがわかった.また,新宿二丁目ではマスメディアなどの影響によって異性愛者の流入もみられるが,それに対してゲイ男性は拒絶と受容の相反する認識を持っている.ゲイ男性の多くは,安心してセクシュアリティを解放できる特別な場所として新宿二丁目を肯定的にとらえているとはいえ,その特殊性の認識には人間関係の構築や自己の確立に伴う変化がみられた.

キーワード:場所イメージ,セクシュアリティ,ゲイ男性,ホーム,新宿二丁目

(地理学評論 92-2 72-87 2019)