地理学評論 Vol. 92, No. 1 2019年 1月 - 日本地理学会

●―論 説
アンケート調査からみた全国の高等学校におけるGIS利用の現状と課題
──「地理総合」の実施に向けて── 谷 謙二・斎藤 敦・1‒22

 

●―書 評
安成哲三: 地球気候学(中川清隆)・23‒25

?水裕也編著: 本当は地理が苦手な先生のための中学社会 地理的分野の授業デザイン&実践モデル(松山 洋)・26‒27

吉田和義: 手描き地図分析から見た知覚環境の発達プロセス(岩本廣美)・28‒29

阪上弘彬: ドイツ地理教育改革とESDの展開(西脇保幸)・30‒31

日本社会科教育学会編: 社会科教育と災害・防災学習――東日本大震災に社会科はどう向き合うか(寺本 潔)・32‒33

藤岡換太郎著: フォッサマグナ――日本列島を分断する巨大地溝の正体(小野映介)・34‒35

小野寺真一・齋藤光代・北岡豪一編著: 瀬戸内海流域の水環境――里水(佐藤芳德)・36‒37

 

●―フォーラム
地理学のアウトリーチに関する活動と展望(長谷川直子・植木岳雪・早川裕弌)・38‒39

 

学界消息・40‒41

2018年日本地理学会秋季学術大会および秋季代議員会記録・42‒44

会  告・表紙2,3および45‒46

2019 年春季学術大会のお知らせ(第3報)・表紙2,3

 

 

論説

アンケート調査からみた全国の高等学校におけるGIS利用の現状と課題──「地理総合」の実施に向けて──

谷 謙二・斎藤 敦**
埼玉大学教育学部,**埼玉県立深谷高等学校

2018年3月に公示され,2022年から実施される新高等学校学習指導要領では,「目標」と「内容」に地理情報システム(GIS)の利用を掲げた新科目「地理総合」が必履修科目とされた.本研究では全国の高等学校に対してアンケート調査を行ってGIS利用の現状と課題を明らかにし,「地理総合」の実施に向けて必要な対応を検討した.調査の結果,高校でのGIS利用率は23.9%であった.GISを利用している教員は,地理を専門とし,大学でGISを実習形式で学ぶか,GIS研修を経験し,情報機器の整備された学校に勤務する傾向がみられた.GIS利用者は無償のGISソフトやサービスを利用し,WebGISへの期待が大きい.GIS利用の課題として情報機器の整備が第一に挙げられ,普通教室での投影機器とインターネット接続の普及が急務である.その上でGISを利用できる教員を研修等により増やす必要がある.GIS研修に際しては,教員の意欲や技術を考慮し,WebGISの閲覧・操作を中心とした簡便な内容が求められる.

キーワード:高等学校,地理総合,GIS,学習指導要領,アンケート調査

(地理学評論 92-1 1-22 2019)