地理学評論 Vol. 91, No. 5 2018年 9月

●―論 説

ナミビア北東部ブワブワタ国立公園における住民の生業活動と植生の関係 芝田篤紀・357‒375

日本におけるイチゴの育種・普及プロセスとその産地間差異 小林 基・376‒394

 

●―書 評

石川義孝: 流入外国人と日本――人口減少への処方箋(中澤高志)・395‒397

山下脩二・樋口利彦・吉冨友恭編: 環境の学習と観測にもとづいたグローブプログラムの理論と実践
――学校における観測活動から地球と地域の環境を考える(山川修治)・398‒399

神谷浩夫・丹羽孝仁編: 若者たちの海外就職――「グローバル人材」の現在(石川義孝)・400‒401

柴田陽一: 帝国日本と地政学――アジア・太平洋戦争期における地理学者の思想と実践(森川 洋)・402‒403

S. アルマン編,荒又美陽・立見淳哉訳: 私はどうして地理学者になったのか――フランス地理学者からのメッセージ(福田珠己)・404‒405

岩田修二: 統合自然地理学(小野有五)・406‒408

加藤幸治: スイスの謎――経済の空間的秩序(加藤和暢)・409‒410

 

 

2018年日本地理学会秋季学術大会プログラム・411‒427

学界消息・428

2018年度公益社団法人日本地理学会定時総会記事・429‒432

会  告・表紙2および433‒435

2019年度春季学術大会のお知らせ(第1報)・表紙2

 

 

論説

ナミビア北東部ブワブワタ国立公園における住民の生業活動と植生の関係

芝田篤紀
京都大学大学院生

ナミビア共和国北東部のブワブワタ(Bwabwata)国立公園で暮らす地域住民クエ(Khwe)の人々の生業活動が,公園内の自然環境に与える影響について明らかにした.4カ月の住み込みによる参与観察や聞取りと,植生調査や地形測量などの定量的調査の結果から,国立公園制定にともない設定された二つの区域では,採集・伐採活動の有無による植生構造の差異が推察された.また,伐採と栽植によって有用樹種の分布が偏り,村周辺の植生景観が影響を受けていることが判明した.一方で,伝統的に行われてきた野焼きや,一部の住民によって行われている農業は,周辺環境との有機的な関係が考慮されており,自然環境の維持や管理に関わっていることが示唆された.クエの人々が営む生業活動は,周辺植生に大きな影響を及ぼしその景観を形成しているが,自然環境についての深い知識と認識により,国立公園の自然環境の維持管理の役割を担っている一面もあることが考えられる.

キーワード:国立公園,地域住民,生業活動,植生,自然環境

(地理学評論 91-5 357-375 2018)

 

 

日本におけるイチゴの育種・普及プロセスとその産地間差異

小林 基
大阪大学大学院生・日本学術振興会特別研究員

農産物産地の形成と産地間競争に関する既往の研究では,イノベーションが競争を駆動するものとして認識されていたが,その具体的なプロセスと地域的差異については必ずしも詳しく論じられていない.本稿は農業において技術の研究開発から普及を経て導入に至る過程をつなげて把握すべく,イチゴの品種の育成・普及を素材として検討した.この結果,まず,規模の大きな産地は小さな産地より速く品種が普及する傾向にあること,大きな産地ほど多くの品種が育成・登録されていることが伺えた.また,大きな産地では県内の試験場で育成された特定の品種の最終的な普及率が高かった.これらの産地では農協を通じた系統出荷率が高く,農協は,新品種への転換の方針決定と情報提供により,普及の速さと最終的な普及率を高めていた.産地におけるイノベーションは,研究の規模と蓄積,生産者の組織化の態様という各産地の事情を反映した過程であるといえる.

キーワード:イノベーション,産地形成,研究開発,技術の普及,育種,イチゴ

(地理学評論 91-5 376-394 2018)