会長のあいさつ - 日本地理学会

小口 高

小口 高

2022年6月25日に開催された公益社団法人日本地理学会の総会において、第39代会長に就任いたしました小口 高です。

日本地理学会は、大学や高校の教員、大学院生、研究所・官庁・自治体・民間企業の方々など、約3000名の会員を擁しています。本学会は1925年に、東京帝国大学・地理学教室の教授であった山崎直方によって創設されました。その3年前の1922年には、地理学を世界的に推進するための団体として国際地理学連合(IGU)がフランス・パリで発足しました。IGUの初代の会長はフランス人、事務局長はイギリス人、4名の副会長のうち3名もヨーロッパ人でしたが、残りの1名は山崎でした。百年前に国際的に高く評価されていた日本の地理学者が、IGUの発足を踏まえつつ日本の地理学の発展を願い、当学会を創設したと考えられます。地理学は世界全体を対象とする国際的な学問ですが、当学会も創設の当時から、国際的な視点を持っていたといえます。

2022年7月には、パリでIGUの創立百周年を記念する学術大会が行われました。その主題は Time for Geographers (地理学者の出番)でした。地理学は古代ギリシャ時代に遡る長い歴史を持つ学問ですが、上記の主題は、地理学が今の社会で改めて注目されていることを示しています。実際、グローバリゼーション、地球温暖化と気候の極端化、自然災害の増加、感染症の流行、持続可能な社会の実現といった今日的な課題は、世界の諸地域を文理融合の視点で扱う地理学が、大いに貢献できる対象です。

今の社会で地理学の重要性が増していることは、2022年度から日本の高校で「地理総合」が必修になったことにも反映されています。地理総合は旧来の高校の地理よりも、環境問題などの地球的課題や、日本で頻発している自然災害といった内容を重視しています。また、地理学的な検討を定量的に行うツールである地理情報システム(GIS)も重視しています。21世紀の状況に対応した新しい地理学が、国民の基本的な素養と認められたために、高校での必修化に至ったといえます。

このような地理学に対する大きな期待に応える活動を行っていくことが、当学会の重要な使命です。活動には学術研究とともに、教育やアウトリーチといった社会的な活動も含まれ、後者は公益社団法人である当学会の義務でもあります。このような多様な活動を進めていくためには、地理学に関心を持つ多くの方々の参画が必要です。皆様にも当学会に関心を寄せていただき、活動の輪に加わっていただければ幸いです。よろしくお願いします。

2022年7月
公益社団法人日本地理学会
会長 小口 高