会長のあいさつ

戸所 隆

戸所 隆

幕末の志士・吉田松陰は『幽囚録』で「地を離るれば人無し、人を離るれば事なし、ゆえに事をなさんと欲する者は、まさに地理を究むべし」と、国家建設や目指すべき地域社会実現における地理学の重要性を述べています。

地理学の歴史は古く、文理統合の複合的総合科学として地表空間の様々な自然現象や人間の諸活動、および自然と人間が織りなす地域現象を研究し、その基礎理論の体系的構築に努めて参りました。また、地理学は地域科学の中心的位置を占め、隣接科学との広範な連携によって学術文化の発展に貢献しています。

地理学研究の特徴は、文理統合的視点から地域現象を様々なスケールで時空間的に俯瞰することにあります。また、その視点からインドアワークとフィールドワークの両方が重要となります。地理学の研究手法・研究成果は、多様化・複雑化する現代社会において益々存在価値を高めています。たとえば、地図は地理学の研究対象かつ時空間的・俯瞰的な地域分析を可能にする研究ツールです。また、私たちの世界観は地図の研究・作成によってかたちづくられ、地域社会の開発・近代化に貢献しています。さらに、地図とデジタル情報技術の一体化による地理情報システム(GIS)の開発は、地域社会に様々な変革をもたらしました。

次期高等学校学習指導要領ではGISや地域防災を含む『地理総合』が必修化されました。日本地理学会は日本学術会議や国際地理学連合IGU、地理学連携機構などと連携しつつ初等中等教育の地理教育を支援しています。また、工業社会から知識情報社会へ構造転換し、先行き不透明な今日では、人々が一体となって地域社会のあるべき姿、新しい国土像・世界像の創生が求められます。それに資する研究成果を日本地理学会は、『地理学評論Series A』『Geographical Review of Japan Series B』『E-journal GEO』の機関誌や各種出版物で公開しています。さらに「地理教育公開講座」や自然災害への対応・地域づくりなどを支援し、「地域調査士」・「GIS学術士」資格認定事業や高校生の国際地理オリンピックへの派遣事業などによって地理的技術の社会還元・人材養成を行っています。

これからも公益法人として基礎研究のみならず地域政策研究など地理学の応用・開発研究をも行い、社会貢献に努めて参ります。こうした日本地理学会の研究活動をご理解いただき、地理学研究活動にご参加・ご尽力賜りますことをお願い申し上げます。