(27)地理学的地すべり論研究グループ - 日本地理学会

代表者 松四 雄騎

 地理学的地すべり論研究グループでは、各種の斜面変動によって引き起こされた災害について発災地の個別調査を行い、現象の地理的・地質的側面について検討した。2018年7月の豪雨で岩盤崩壊の多発した四国宇和島では、熱水変質を受けた砂岩を基盤とする斜面における風化帯の発達に関する調査を進めた。水文的な観点からも斜面崩壊様式の検討を行うため、間隙水圧観測装置を設置するなど、モニタリングのための調査を進めている。2018年9月の胆振東部地震で発災した北海道厚真町については、恵庭山や樽前山を起源とするテフラの層厚調査を進めた。斜面に存在する崩壊予備物質としてのテフラ累層の厚みを、給源火山の噴火史に基づいて推定するモデルの構築を進めている。東北日本や西南日本のいずれにおいても、斜面崩壊の素因となる斜面特性の成立過程に関する知識の普及と防災リテラシーの獲得による地域レジリエンスの向上が、地理学的な研究によって得られる知見の社会還元の方向性として重要であることが再認識された。今後も、地すべり災害における時空間スケールの異なる地理的要因を整理し、斜面システムの統合的な理解に基づいて起きうる現象を想定できるよう、より多くの具体的なケーススタディーを通じて一般化を進める。最終的には、地理的な知見に立脚した社会実装可能な方策の提案により、地域減災への貢献を目指したい。


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