●――論 説
Summersモデルに代わる新たな都市境界層熱収支モデルの構築とその正弦型加熱強制に対する応答
──都市ヒートアイランドは共振か?──
中川清隆・渡来 靖・273-293
●――書 評
稲垣 稜・牛垣雄矢・小原丈明・駒木伸比古・西山弘泰・山口 晋:
日本の都市百選 第2集 (武者忠彦)・294-295
田邉 裕:地理・地誌・地理学の論理構造.(高木彰彦)・296-297
石川 徹: 都市空間のエクスペリエンス──経験と認識から空間を知る(伊藤 悟)・298‒299
中村 努: 地方のローカル・ガバナンス──多元的アクターの協働空間(佐藤正志)・300‒301
地理教育システムアプローチ研究会・宮崎沙織・泉 貴久・阪上弘彬・中村洋介・山本隆太編:
社会問題の解決を目指す地理教育──システム思考からさらにその先へ(秋本弘章)・302‒303
桐村 喬・上杉昌也・米島万有子・相 尚寿・鈴木重雄:
基礎から学ぶGIS・地理空間情報(小泉 諒)・304‒305
神山 翼: Python による気象・気候データ解析I
── Python の基礎・気候値と偏差・回帰相関分析
神山 翼: Python による気象・気候データ解析II
──スペクトル解析・EOF とSVD・統計検定と推定(松山 洋)・306‒307
2025 年日本地理学会秋季学術大会プログラム・308-328
学界消息・329-330
日本地理学会創立百周年記念行事の報告・331
2025 年度公益社団法人日本地理学会定時総会記事・332-335
会 告・表紙2 および336-338
2026 年日本地理学会春季学術大会のお知らせ(第1 報)・表紙2
Summersモデルに代わる新たな都市境界層熱収支モデルの構築とその正弦型加熱強制に対する応答
──都市ヒートアイランドは共振か?──
中川清隆*, **・渡来 靖***
*立正大学名誉教授,**上越教育大学名誉教授,***立正大学地球環境科学部環境システム学科
都市気候学分野におけるパラダイムシフトと評されるSummersモデルは,風上側市街地端からのフェッチの増加に伴う都市境界層高度の漸増をうまく表現するが,都心を通過した後も都市境界層高度がけっして減少しないという問題点を有する.本稿は,その主因が冷熱源の欠如にあると判断し,水平熱拡散項および鉛直長波放射冷却を付加した新たな都市境界層熱収支モデルを提唱した.その結果,Summersモデルでこれまでよく議論された無限水平一様熱源分布では,風上側郊外の定常状態から市街地の新たな定常状態へのいわゆるステップ応答が発生するだけで,ドーム状の都市境界層やそれに伴う都市ヒートアイランドは形成されないが,非均一な水平熱源分布に起因する加熱に対する過渡現象と顕熱強制加熱応答が同時に発生すると,特定の気象条件や都市スケールの際に共振が発生して顕著な都市ヒートアイランドが形成されその位相が決定されることが明らかになった.
キーワード:都市境界層高度,熱収支モデル,正弦型加熱強制,都市ヒートアイランド,共振
(地理学評論 98-5 273-293 2025)