発表番号,発表タイトル,発表者(学校名),発表要旨
伊藤陸(千葉県立木更津高等学校)
豊かな自然と伝統を感じる木更津市。その中でも木更津市には古くから多くの祭りが存在している。そのため、私が幼い頃から訪れていた木更津市の祭りを、地理的な観点から関連性を考察するという方法で本研究に取り組んだ。 本研究では、木更津市の祭りの歴史や目的を調べた結果、“海”との関係が深いところに着目し、仮説を立てて研究を進めた。そして、海との関連を調査する中で「地形的要因」と「気象的要因」の2つの観点に分けて分析した。すると、気候区分や風向、沖積平野や三角州の存在、地質などの要因から木更津市では地理的に港町が形成しやすい地域となっているということが明らかになった。本研究から、私は地理的要因により木更津市は古くから海と繋がりやすい環境であり、それゆえ、既存の祭りに対しても歴史や目的に海や大漁に関するものが見られるのだと結論づけた。
河内蒼馬(千葉県立木更津高等学校)
僕が住んでいる南房総市で作られている房州びわが、なぜ皇室献上されるほどの上質なびわなのか、びわの生産量日本一の長崎市と比較して考察した。まず、一年を通して温暖か、風は強いかなどの気候条件を二つの地域で比較した。次に、二つの地域の土壌を、県の調査結果と照らし合わせることで、土壌とびわが密接に関わっているかを分析した。結果、気候はどちらもびわの生育条件によく当てはまった。しかし土壌は、南房総市は肥沃であったが、長崎市はやせていて栽培に向いていないことが分かった。そこで、生産量の面では土壌より気候の方が大きく影響を与えており、びわの質の面では土壌が深く関わると仮説を立てた。調査の結果、気候を変えることは不可能だが、土壌は生産者の努力によって改善することが可能なため、土地がやせている長崎県でもびわが生産できたと考察した。そのため、気候と土壌の両方の条件が当てはまったからこそ、房州びわが皇室献上されるほどになったと結論づけた。(文字数超過)
髙田紗有里(千葉県立木更津高等学校)
本研究の目的は、静岡県沼津市にある千本浜と千本松原の成り立ちを、地形的形成と歴史的植林の視点から明らかにすることである。調査の対象は千本浜海岸と千本松原とし、古地図や伊能図、文献資料気象データ、現地観察の結果をデータとして用いた。方法として、文献調査と現地調査を行い、地形の特性や防風・防潮機能を分析した。その結果、千本浜は富士川や狩野川が運んだ砂礫が沿岸流により堆積して形成された自然の自然の砂浜海岸であること、また千本松原のクロマツは戦国期の伐採後、増誉上人と住民により防災目的で植林・維持されてきたことが文献調査で確認された。現地調査では、海岸で強風が吹く一方、陸側では松原の存在により風が弱まる効果を確認することができた。以上より、千本浜と千本松原は自然地形と人の営みにより形成・保存され、古くから地域の暮らしを守ってきた重要な景観・防災空間であると考察される。
石川蒼空仁(千葉県立成田国際高等学校)
本研究は、学校給食の主食の提供割合と地理的要因の関係解明を目的とする。各地域から抽出した自治体について、web上で公開されている献立表を基に主食別の提供割合を求め図示した。その結果、米とパンは日本海側で米が高く、九州中南部でパンが高かった。麺は北海道で高く、西日本で低かった。考察として、米の提供割合と米が主要作物である地域が一致し、国の地場産物の活用を促進する方針の反映が推察された。また、土壌条件や土地利用との関連も示唆された。パンは米の補完的役割が強いが、都市部では周辺地域の野菜生産規模が提供割合に影響する可能性も考えられる。一方、麺の提供割合は家庭での消費量に相関しており、給食と家庭での食生活との関係が深い可能性があると考えた。以上より、給食の主食構成には国の政策や地域の自然環境、産業的特性などが複合的に影響していることが明らかとなった。
浜本俊太(洛星高校)
国内外から観光客が集まる京都市ではオーバーツーリズムが問題となっており、特にバスの混雑が深刻化している。市内を走るバスは市民の足としても重要な役割を果たしているものの、混雑のための遅延や積み残しが常態化している。一方で、運転士不足も深刻であり、容易に増便できない。本研究では、リアルタイムのオープンデータが公開されている京都バスの路線を例に、バス会社へのインタビューやオープンデータで公表されている混雑状況のデータなどから混雑する区間や時間帯を特定し、そこからより効果的なダイヤの組み直しや有効的な車両の運用方法などを考察した。
得地優里(専修大学松戸高校)
千葉県柏市が抱える課題の一つとして少子高齢化の進展を挙げることができるが、それへの早急な対策を意識するよりも、住民が住み慣れた地域で暮らし続ける仕組みとして「柏モデル」が行政当局を主体に実施されている。本研究では、柏市のもう一つの課題である地域格差の改善が「柏モデル」を促進するとともに、高齢化にも寄与するという仮説を立てた。そこで、柏市や柏商工会議所等が発行している公的な資料を活用し、人口推移や人口分布に着目しながらそれぞれ異なる地理的特性を有する北部、中央、南部、東部の4地区間での比較を行った。その結果、北部・中央と南部・東部の地域間格差が著しい状況にあることが明らかになるとともに、格差の改善が「柏モデル」の促進とともに少子高齢化問題への対応にもつながることが明らかとなった。本発表では、地域格差の改善という視点から、少子高齢化問題の解決を含めた柏市が目指すべき将来像について考察する。
石田千里(ノートルダム清心高校)
現在、日本各地の住宅団地では、一斉入居から数十年が経過し、急速な高齢化と人口減少が共通課題となっている。1978年に入居が開始された広島県佐伯区の美鈴が丘団地においても高齢化が進行しているが、近年、若年層を含む新たな世帯の転入もみられる。本研究は、同団地の現況を明らかにし、団地が持続可能なコミュニティとして存続するための要素を明らかにすることを目的とした。調査方法として、居住者対象のアンケート調査を行い、居住満足度や生活上の利点を抽出した。また、近年の転入世帯に対して移住の決定要因の調査も追加で実施した。さらに、団地に携わる関係者から、団地の現状や運営方法について聞き取り調査を行った。調査・分析の結果、団地の存続には子育て世代のニーズに応える環境整備が欠かせないことが明らかとなった。また、社会関係資本を維持するために公民館が必要不可欠な存在であることが示唆された。
長谷川遼・鍬先一希・小林浩徳・近藤悠人・久常大輔・森安冠仁
津山盆地の霧は地域を代表する気象現象である一方、体系的な研究は少なく、未解明な点が多い。本研究では、岡山県津山盆地で秋から冬にかけて頻発する霧について、その発生要因や分布の特徴を明らかにすることを目的とし、複数の手法を組み合わせて実態調査を行った。まず、Googleフォームを用いたアンケート調査により、盆地内における霧の発生頻度や分布の地域差を把握した。次に、津山盆地の地形を縮尺化した地形モデルを作成し、ドライアイスを用いた実験によって霧の発生や拡散の様子を再現し、地形条件との関係を観察した。さらに、風や放射冷却といった気象要因を考慮するため、物理法則に基づくニューラルネットワーク(PINNs)を用いた数値シミュレーションを行い、霧の形成過程や挙動について検討した。
松本七凪・蘆田莉央(東京学芸大学附属高校)
本研究の目的はシカの個体数の算出と食害削減に向けての提案である。これらの目的のため、(a)間伐後に草が生えにくい原因(b)シカが嫌う植物を植えるとシカはその場所を避けるか(c)シカの個体数はどのくらいか、の3点について神奈川県相模原市の山林で調査した。調査(a)では異なる地点で光量・土壌水分・平均植生を比較し、食害であると判断した。(b)ではシカが嫌うマツカゼソウとサンショウを移植した。シカの侵入確率が約72%減少したため、嫌う植物を避けて移動した可能性があると考えた。(c)ではカメラデータ分析の結果、2025年は、地点ごと・季節ごとの個体数が大きく変化した。これらの変化について、山麓部の植物の減少による行動範囲の変化が要因であると考えた。そして結びとして、食害削減のため、シカの好物を山麓に植えないこと・シカ避けに効果がみられたネットやミカン科の植物(サンショウ等)の設置を提案する。
⽥村翠(東京学芸⼤学附属⾼校)
調布市・つつじヶ丘駅南口を頻繁に利用する筆者は、駅北口との商業的発展規模の差に不便さを感じた。それをきっかけに筆者は、その差が形成された経緯を解明し、また問題解消のため提言を行うことを目的に本研究を始めた。筆者は、まず調布市図書館のレファレンスや「今昔マップ」を用いた文献調査、両面の駅利用者数や商店数を計測する実地調査に基づき、駅両面の商業的発展規模に差が存在することを確認した。地域史の観点から調査を進めると、駅北に「京王つつじヶ丘住宅地」、駅南に「神代団地」が存在することが判明した。これら住宅地の建設理念や造成経緯を調査した結果、日常の商業活動が住宅地内で完結するか否かという差異があった。筆者は、商業施設を神代団地内に包含する南側は必然的に駅に向かう動機が薄くなるため駅両面の商業施設の分布に差異が出ていると考察し、駅南北の機能を相互補完的に再統合することを提案した。
カトラプス万梨花・今井咲空・玉澤心晴(専修大学松戸高校)
カレーは日本ではなじみ深い料理の一つであり、地域によって使われる食材や味付けに違いが見られる。我孫子市は千葉県北西部に位置し、利根川と手賀沼に面した自然豊かな地域である。この地理的特性を活かし、観光や地域活動が行われてきたが、近年は人口減少に伴う少子高齢化が進み、町の認知度の低さが課題となっている。実際に行った聞き取り調査においても、我孫子市の取り組みや魅力が十分に知られていない現状が確認された。発表者らは、この課題を解決する手法として、地域性を反映したご当地カレーに着目し、白樺派カレーを切り口に調査を行った。白樺派カレーは、文豪に由来する文化的背景を持ち、文学と食を結びつけた点に特徴がある。本研究では、さらに横浜カレー、沖縄黒糖カレー、大阪の自由軒カレーと比較することで、地域文化の発信方法を分析し、白樺派カレーをまちおこしのツールとして普及させるための具体的な方策を提案していきたい。
相澤光翔・小林なでしこ・渡邉朱莉(専修大学松戸高校)
千葉県北西部に位置する流山市。同市は子育て支援の手厚さに特徴があるゆえ人口が年々増加している。しかしその一方で、人口増加に伴い急速な開発が進んだ結果、環境破壊の深刻化や待機児童数の増加、公共施設の不足などの課題が浮かび上がってきた。だが、本校生徒にとって身近な地域であるにもかかわらず、流山市の現状や課題への関心が必ずしも高くないと感じたことから、本研究では同市の開発の現状と課題について調査を行い、持続可能で魅力的なまちづくりの在り方を考察してきた。具体的には、流山おおたかの森駅周辺の開発を対象にアンケート調査を実施し、住民や利用者の意見をもとに課題点について整理を行った。以上の点を踏まえ、本発表では、同じつくばエクスプレス沿線で近年人口増加が著しい茨城県つくば市との共通点と相違点を抽出し、比較することで、流山市を持続可能なまちとするための方策について考えることを目的とする。
志水 杏吏・後藤 爽月・澤田 夏葉・長友 千依(兵庫県立宝塚北高等学校)
訪日外国人旅行者数の増加に伴い、京都や大阪など一部地域への観光客の集中がオーバーツーリズムを引き起こしている。本研究は、この現状を踏まえ、外国人観光客が特定の観光地に集中する要因を「SNSによる情報拡散と観光イメージの固定化」という観点から分析した。京都の祇園・東山および大阪の道頓堀でのマルチメソッド調査(アンケート・インタビュー・参与観察)を通して、特に若年層はTikTokやInstagramなどを主な情報源とし、繰り返し共有される「定番観光地」の投稿が訪問先選択に強く影響していることが明らかになった。この傾向は欧米・アジア圏を問わず、特に 30代までの世代およびアニメ聖地巡礼などの観光形態において顕著であった。これらの調査結果の考察として、本研究ではJ.アーリの「観光のまなざし」を理論的視座として定番観光地化の過程をとらえ、SNS視聴、現地訪問・撮影、SNS掲載を循環構造としてモデル化して提示した。
長家茉子(昭和学院高等学校)
神奈川県鎌倉市は交通渋滞やゴミ問題といった深刻なオーバーツーリズム問題に直面している。一方、スペインのバルセロナでは2024年のデモ活動を機に世界の先駆けとなる対策を講じ続けている。本研究では鎌倉市でのフィールドワークを通じて発見した問題をバルセロナの事例を参考に解決を目指す。調査の結果、最大の難題は地域住民との共生であると考えた。現在、鎌倉市南部では観光資源や宿泊施設が集中し地域住民の生活圏と混在している。同様の問題をバルセロナでは中心部のホテル建設を制限し郊外へ誘導することで解決に導いた。この政策を参考に、北部の大船地区に宿泊施設を建設し南部に集中する観光客を分散させることを提案する。しかし大船地区も人口が多く、観光客が増え続ける中で将来的に南部と同様の問題が生じる恐れがある。したがって、郊外も含めた市全体で観光客を受け入れられる社会体制の構築が不可欠であると結論づけた。
坂口結香・谷口瑠実(鳥取県立鳥取西高等学校)
特定の地域内で生産された農産物を、卸売市場を介さずに販売する施設である直売所には、地産地消の拠点、生産者と消費者の対話の場としての特長がある。全国の直売所には、価格の下げ過ぎや外部からの入荷の増加などの動向を把握した事例がある一方、鳥取県内の実態は把握されていなかった。本研究では、鳥取県東部の直売所11店舗を対象に、先行文献から抽出した全国の直売所で行われた施策と比較した。その結果、鳥取県においても「イベント開催」「出荷者による価格設定」「品質維持」「品揃えの確保」「売上情報の共有」の5項目が共通して実施されており、全国的な傾向と一致した。一方で、幹線道路や鉄道駅から離れた立地上優位といえない店舗において、独自の果実糖度検査や最低価格の設定による品質・価格の安定化を図る戦略が確認された。これは、不利な立地条件を独自の運営戦略によって克服している特異な事例として注目される。
葉狩和夏・森山優羽・八村まどか(鳥取県立鳥取西高等学校)
ラオス山間部の「伝統的焼畑」は、十分な休閑期間を設けることで植生を回復させる循環型農業として営まれてきた。しかし、近年は人口増加や政府の森林保護政策などの要因で休閑期間の短縮による土地生産性の低下、森林回復の停滞といった「焼畑の悪循環」が増加している(横山:2008,2013)。本研究では、Google Earthの衛星画像を用い、2000年から2020年までのラオス北部ルアンパバーン県パークセーン郡の一部地域を対象に、焼畑農耕の推移を時系列的に分析し、特に「伝統的焼畑」から「悪循環な焼畑」への変容の実態を検証した。その結果、対象地域における焼畑総面積は20年間で増加傾向にあった。一方、全体として休閑期間の短縮や、特定の道路周辺における焼畑面積の増加は確認されず、「悪循環な焼畑」への変化傾向を見出すことはできなかったため、本調査範囲においては悪循環が進行したと断定するには至らなかった。
森啓恭・坂口日南・大坪つばさ・金森良太郎・藤井悠貴・宇野春希(大垣北高校)
岐阜県岐阜市にある金華山は、山頂に繋がる登山道が主に5つあり、ルートを自由に選択できる。山頂にある岐阜城の改修工事に伴い、令和7年11月25日から登山道の一つ「めい想の小径」の山頂手前が閉鎖されたため、他の登山道から独立するとともに、岐阜城や山頂レストラン、トイレ、自販機などが利用できなくなった。これにより、登山者の選択する登山道の傾向が変化したのではないかと考え、研究を始めた。登山地図アプリのYAMAPを利用し、閉鎖後とその1年前の登山記録から、選択しているルートとその組み合わせを比較した。その結果、多くの登山者が登りと下りで別のルートを選択していることが分かった。閉鎖前はめい想の小径は登りのルートとして多く利用されていたが、閉鎖後はめい想の小径を選択している人の割合が極端に減少していた。また、YAMAPを利用している登山者以外の傾向を知るために、実際に山頂で登山者の人数をカウントし、その傾向を調査した。
中川徹平・川口央翔・岡田直丈・森川陽貴(兵庫県立神戸高等学校)
六甲山の夜景に着目し、地形・人口・社会環境・画像などの点から分析することでその独自性を考察し、神戸のインバウンド観光客数が大阪や京都より少ないという課題の解決を目指す。世界の有名夜景スポットの夜景のタイプを分類すると、タワーやビルから眺める「都市型」と山の上から眺める「山岳型」に分類できるが、山岳型自体が海外では少なく、山岳型の中でも六甲山の標高と海との距離の関係に類似するものがないことが分かった。また、山岳型の夜景写真に写っている人口を、QGISを使用して測定した。具体的には、三平方の定理より視覚範囲を定め、障害物の影響を考慮して実際の可視領域を設定し、その領域内の人口をメッシュマップを用いて算出した。その結果、他都市と比較しても視覚内の人口が多く集中していることが分かった。さらに、夜景写真の画像分析による比較や、治安や飲食・宿泊施設など社会条件からの比較もすることで、独自性を考察していく。
福崎友理香・山田さつき・薮田薫音・佐藤光莉(川和高等学校)
横浜市都筑区は「都筑野菜」という独自の野菜ブランドを用いて地産地消を推進している。しかし、私たちの視点では地産地消の実施状況は可視化されておらず参加への実感を持てずにいた。そのため本研究では区役所で行われている朝市で野菜を購入していた5名とJA横浜野菜部部長への聞き込み調査を通じて、消費者と生産者の視点からの地産地消の現状を明らかにした。消費者である5名には「朝市に訪れた理由・野菜を購入した決め手」、生産者側である野菜部部長には「地産地消の現状・特徴・広報活動」について伺った。調査の結果、消費者の年齢層は幅広く、生産者は地域の需要と供給の特性を生かした農業を行っていることから、地産地消の現状は明るいものであると考えた。加えて、SNSや品評会などの広報活動も積極的に行われていることがわかった。一方で朝市における消費者が固定化されていることから、新たな客層を開拓することが今後の課題である。
太田琴雪・鈴木利歩・増澤未夢(エクセラン高校)
松本市里山辺地域では、かつて「山辺藍」と呼ばれる藍の栽培が行われ、染料原料である藍玉の生産を中心とした伝統産業が成立していた。本研究は、山辺藍が里山辺で発展した要因を、地理的観点から明らかにすることを目的とする。調査の結果、里山辺は扇状地末端に位置し、地下水や湧水に恵まれていたことから、藍の発酵工程を伴う藍玉生産に適した自然条件を有していたことが分かった。また、藍玉などを保管する蔵が地域内に点在しており、生産・保管・流通を支える空間構造が形成されていた点も確認できた。一方、近代以降は化学染料の普及や産業構造の変化、担い手不足により生産規模は縮小し、山辺藍は衰退していった。本研究は、山辺藍が自然環境と人間活動の関係の中で地理的に発展した伝統産業であることを示すものである。
小川航平(中央大学附属高等学校)
本研究は、東京都中野区における交通空白地帯の解消を目的とし、GISを用いて実現可能性の高い新規バスルートの提案を行った。中野区は地域内交通網に課題を抱えており、特に公共施設へのアクセス向上が求められている。そこで、既存の交通網から徒歩5分圏外のエリアを特定し、道路幅員等の安全性および事業採算性を考慮した4本の新規路線を策定した。既存事業者のデータを基に収支試算を行った結果、1便あたり約19人の利用者確保により10年以内の黒字化が可能であることが確認された。これは都内平均を大きく下回る水準であり、計画の実効性は高い。本手法はオープンデータを用いれば非専門家でも容易に再現可能であり、GISによる定量的分析が交通インフラ整備の合意形成に有用であることを示した。
林実弥乃(千葉県立柏高等学校)
千葉県北西部の手賀沼周辺地域には、「手賀沼に潜った牛」という昔話が伝承されている。寺でかわいがられていた牛が、新しい住職によって邪険にされ、自ら沼に潜りその主となったというものである。古い時代から周辺の低地では水害が頻発していたことから、この「牛」は山梨県甲府盆地発祥の治水道具である「聖牛」を示唆するものではないかと考えた。両地域の地形や水害の様子を比較し、研究者への聞き取り調査を行った結果、手賀沼に「聖牛」を沈めた可能性は極めて低いことが分かった。また、寺に確認をしたところ生き物、家畜としての「牛」が実在したという記録もなかった。これらのことから、「牛」には、動物の姿を借りて描かれた沼の主という超自然的な存在を示す、また古語で「憂し」=「災害の多い危険な土地」を意味する周辺地域と対比して、避難施設としての神社仏閣の役割を強調する、といった意味があるのではないかと考察するに至った。
春歩夢(神戸大学附属中等教育学校)
本研究は、東日本大震災および福島第一原発の事故によって大きな被害を受け、未だ一部で避難指示が出されているものの、少しずつ活気を取り戻しつつある福島県の「浜通り地域」において、その「持続可能な交通体系」について「駅勢圏」をもとに考察するものである。調査方法は、浜通りの地理的条件、交通について実地調査とともに文献調査を行ったのち、公共交通の有用性を計るために「駅勢圏」を定義し、様々なデータをもとに考察した。現段階での結論としては、下記の通りである。浜通り地域における持続可能な交通体系は、鉄道のみ、あるいは自動車交通のみに依存するものではなく、地域ごとの実情に応じて複数の交通手段を組み合わせる形で検討される必要があると考えられる。その際、鉄道は主要な幹線的な役割を担い、バスやデマンド型交通(DRT)等がこれを補完する形が一つの方向性として示唆される。
仲村優希(東京女学館)
本研究は、東日本大震災の被災地における実態調査から、津波に強いまちづくりの条件を明らかにすることを目的とした。手法として、2025年8月、宮城県南三陸町にて、大規模な土地利用規制や高台移転の状況を観察するとともに、漁業者への聞き取り調査などのフィールドワークを実施した。調査の結果、堤防などのハード対策は地域の安全性を向上させた一方、漁業現場と居住地の分離による労働環境の変化や、利便性不足に伴う近隣自治体への人口流出といった、現場固有の深刻な課題が浮き彫りとなった。これらを踏まえ、津波に強いまちづくりには、物理的防御だけでなく、津波を想定した地域内でのリスクコミュュニケーションが不可欠であると考えられる。専門機関や企業と連携し、地域の生業と防災を両立させる運用体制の構築こそが、真の防災力と直結することを論じた。
坂野佑季(藤沢翔陵高等学校)
静岡県三島市を対象とした地域コミュニティや観光地の開発を目的とし、研究を始めた。今現在、三島は空き家問題と通過型観光地、人口減少という問題を抱えている。通過型観光地になっている原因の一つとして駅周辺にしか宿泊施設がないこと、周辺に箱根や富士山といった人気のある観光地が多々ある。三島の人口は2025年1月31日から12月31日の間で約一万人の人口が減っており、空き家問題が浮き彫りになった。これらの問題を解決するために、今ある空き家を宿泊施設、賃貸、ワーキングスペース、カフェなどのお店を開店することでリピーターや定住者が増える可能性を考察した。観光の需要を増やすことにより、三島市の経済発展や地域の発展にも役立つだろう。三島駅近くには日本大学や順天堂大学がある。この二つの大学の生徒と共同開発できる場所としても役立ち、生徒間の交流や地域コミニティーの活性化にもつながると考えた。
須藤乙葉・森田涼音・豊ゆいか(鹿児島県立大島高等学校)
奄美大島方言(奄美語)は,UNESCOが指定する消滅危機言語の1つである.奄美大島方言は,島内での地域差が大きいにも関わらず,その分布に関する研究は少なく,方言の地域的多様性が明らかにされていない.本研究では、方言の保存と継承を目的に,奄美大島における方言分布を示す方言分布地図を作成した.フィールドワークによって,地域差を明確に示す35語について29集落における方言形を聴取した.これらを基に分布地図を作成・分析したところ,大きく5種類の分布パターンが見出された.祖父・目上の相手の呼称などは名瀬・住用を中心とする周圏分布,トンボ・サンゴなどは島内を縦貫する国道58号を軸線とする分布を示した.今後は本研究の成果を柴田武(1984)と比較し,方言分布の変化や分布要因の解明を進める予定である.
佐々木天麻(県立川越高校)
川越市郭町の一部を対象として、飲食系チェーン店の最も効果的な出店についてニーズ的側面、立地的側面からそれぞれ考察した。ニーズ的側面から結論を出すため、実際に地元住民22人にアンケートを取った。このアンケート結果より地元住民に最も好まれると予想される店のジャンルを決定した。具体的には西洋料理を主軸としたファミリーレストランである。アンケートを取った地元住民には家族暮らしが多く、また頻繁に行くチェーン店のジャンルは西洋料理が最も多かったためである。立地的側面から考えるため、自ら測定した交通量の結果を用いて、その地域で盛んに自動車の往来が起きていると予想される道路を絞った。加えて、榎本篤史氏、植井陽大氏による『図解すごい立地戦略』(PHP研究所、2023年)の内容を参考にして、その地域で最も人目につきやすいと予想される場所を特定した。具体的には交通量の多い道路の受け角に位置する場所である。
植田和揮(県立川越高校)
川越高校に隣接して川越城の城跡があり、周辺よりも高い場所に位置していることに着目し、埼玉県の他の城についても明らかにしたいと思いこの研究を始めた。本研究は、「功城団」というwebサイトを参考に埼玉県の90城の城郭の分布を地図化し、城郭の築城時代ごとに地形分類の観点から分析を行った。研究を進めていく中で、とくに戦国時代に築城した城郭は他の時代に比べて山地に位置している割合が高いことが分かった。また、全ての時代で多くの城郭が山地や台地の縁に分布していることが明らかとなった。それは、防御面や見通しの良さによる指揮の取りやすさなどの利点があったためだと推測できる一方で、低地に分布する城郭もあった。防御という面では、台地の縁のような自然の要害の地に比べると守備に脆弱な低地であるが、細かく調べると自然堤防などの自然地形を利用したり、河川を交通や水堀として利用したりしていることなどが分かった。
郭依漣・舘詩乃・峯森愛莉(横浜緑ケ丘高校)
横浜の「山手」は中区の地名であり駅名であるが、その範囲は明確に定義されていない。本研究では、外国人居留地としての山手に注目し、その範囲がどのように形成され、現在までどのように引き継がれてきたのかを明らかにすることを目的とした。研究方法は外国人居留地に関する古地図や資料を用いた。初期の横浜居留地、1867年の横浜居留地、GHQ接収区域の山手の範囲を比較し、ひとつの地図に重ね合わせて整理した。また、横浜市中区が発行している資料の中に、山手は東部・中部・西部に分けられるとあり、併せて参照した。その結果、山手は新たに形成された地域ではなく、居留地の歴史的経緯が引き継がれた地域であるとわかった。さらに現在の「山手」には、居留地由来で西洋館や学校、教会が立ち並ぶ地域の山手と、「横浜市街の山の手」を由来とするJR山手駅周辺という、異なる由来を持つ二つの地域が含まれていることを示した。
阿部悠希・大柴唯芽・志村昭太朗・森原由依子(横浜緑ケ丘高校)
原発災害があった福島県において、再生可能エネルギーが今後の主要な産業になり得るかについて考察することを目的とする。実際に福島県の浜通り地域でフィールドワークを行い、そこで見聞きしたことや感じたこと、現地の企業などを訪問して得た知見を通じて考察を行った。そこでの知見に加えて、公表されているエネルギー関係のデータも参考にした。それらから総合的に判断をして、現在の技術では産業の柱となるには限界があると考えた。その理由として、再生可能エネルギーのコストが高く採算がとれないこと、環境に多大な負荷がかかること、現地の住民の理解が十分に得られていないことが挙げられる。しかし、これから研究や技術革新が進み、これらの課題の解決への道筋が立てば、再生可能エネルギー産業は付随する研究施設などとともに地域経済に与える影響は大きく、今後の福島県を支える産業のひとつになりうるという結論に至った。
坂本亘平・前田真希・北村詩織・中井翼・中西凛(三重県立松阪高等学校)
本研究は、地理院地図に未掲載の自然災害伝承碑を新規に登録し、地域における防災啓発や防災教育への活用促進を目的としている。登録数が極めて少ない三重県の中部を対象地域に設定し調査を実施した。文献資料や情報提供に基づいて未掲載の災害伝承碑を調査し、碑の状態や内容について現地で確認した。さらに、碑に記された内容を詳細に把握するために、三重県県土整備部、松阪市役所などの行政機関及び、地域住民への聞き取り調査等を行った。これらの調査から、碑に記された災害の被害状況や、碑が設置された経緯・背景について詳しく知ることができた。調査結果を基に、登録の当否について国土地理院に確認し、該当する碑については行政機関に対して登録及び地域防災・教育での活用を提言した。自然災害伝承碑の地理院地図への登録は、災害の教訓を後世に伝える点で重要であり、地域住民の防災意識の向上への寄与も期待できる。
飯野美月・植本花奏・馬場美里杏[土浦日本大学中等教育学校]
本研究は、日本統治期の都市計画が現在のソウルの都市構造にどのように影響しているかを明らかにすることを目的とする。対象は、朝鮮総督府や旧京城府庁舎、旧京城駅などの植民地期建築と都市構造である。阿部和俊(2007)や須山聡(2006)などの先行研究をデータとし、統治思想と建築配置の関係を分析した。その結果、都市計画は近代化だけでなく、日本の統治権力や優越性を視覚化する役割を担っていたと考えられる。また、神社は撤去され公共建築は再利用されたことから、建築の存廃には実用性と歴史認識の双方が影響していると考察した。
山田 亮(私立武蔵高等学校)
本研究は、東京都練馬区を対象に、神社立地と地形的特徴の関係を微地形スケールで定量的に明らかにすることを目的とする。特に「台地と谷の境界」に着目し、神社が地形境界に選択的に立地しているか、またその傾向が祭神によって異なるかを検証した。練馬区内の神社100社を対象に、5mメッシュDEMを用いて、傾斜量、傾斜変化量、TPIを算出し、各地点に50mバッファを設定し地形統計量を指標化した。神社地点とランダムポイントを対象に統計的比較を行った結果、神社地点のバッファ内最大傾斜変化量は、ランダム地点に比して統計的に極めて有意に高かった(p<0.01)。祭神別では、軍神は相対的に高い地点(凸地)に、水神は低い地点(凹地)に分布するという「上下の使い分け」が確認され、神社の立地が神徳に応じた地形利用の分業構造を反映している可能性が示唆された。
原田耕太朗(神奈川大学附属高等学校)
本研究は、静岡県の熱海温泉と伊東温泉における共同浴場の数に差が生じた原因を、歴史的観点および地形的観点から明らかにすることを目的とする。対象は両温泉の中心地とし、地図で表した。宿泊客数・宿泊施設数を県の統計資料や市の資料、地理院地図を用いて比較分析を行った。熱海温泉は江戸時代に幕府直轄領として発展し、将軍家や大名の利用など上層階級との関わりが強く、大規模旅館による内湯中心の利用形態が早くから形成された。一方、伊東温泉は明治期以降に源泉掘削が急増し、鉄道開通を契機に発展したが、それ以前から存在した共同浴場も現在まで存続している。熱海は急峻な谷地形で平地が狭いのに対し、伊東は扇状地で比較的平坦であり、この地形差も温泉利用の集約・分散に影響した可能性がある。以上より、両温泉地の共同浴場数の違いは歴史的背景と地形条件が相互に作用したことによって形成されたと考えられる。
石井大樹・石垣真優・羽田歩夢・幡野佑季・山本啓生(山梨県立都留高等学校)
私たちは山梨県内には生徒数の減少により廃校になった学校が数多くあることに着目し、都留高校周辺の廃校を活用し、地域を活性化させたいと考えた。本研究は県東部・富士五湖地域における廃校活用方法の提言を目的とした。廃校活用の用途の分類や廃校活用マップの作成により、多様な活用がなされていること、県東部・富士五湖は県中西部に比べて廃校活用施設が少ないこと等がわかった。また、県中西部で廃校を活用している事業者への問い合わせを行い、その回答を分析した。廃校活用のためには地域住民との関わりが大切であると考察した。以上の前提を踏まえた上で、大月市が活用方法を募集している旧大月西小学校の廃校活用方法を検討した。首都圏からの流入人口が一定数いることや、周辺の自然環境を生かして第一次産業の促進が期待できることから、サテライトキャンパスとして活用するのが適当なのではないかという考えに至った。
森川侑香・佐久間結花・吉田彩良(山脇学園高校)
本研究は、大都市圏における都市農地の防災活用の可能性と制度的課題を明らかにすることを目的とする。対象は、防災協力農地を市域で展開する川崎市と、東京23区内で最大級の農地面積を有する練馬区とした。検証方法として、川崎市経済労働局都市農業振興センター農地課と都市農業担当部都市農業課に赴き、現状について説明を伺い、質疑を行った。その結果、川崎市では生産緑地約215万㎡のうち約3割を防災農地として位置付け、地震時の一時避難場所とするが、補償内容の詳細が公表されておらず、制度の実効性が判断しにくい点が課題である。一方、練馬区は約155万㎡の農地が広く分布し、仮設住宅用地や資材置き場、食料調達まで多面的活用を想定するが、補償の範囲や算定方法が明確に示されておらず、運用の透明性に課題が残る。以上より、都市農地の防災活用を実効的な政策として機能させるためには、補償制度の明文化と被災後の運用基準の整備が不可欠である。
渡邊泰知(東京都立三鷹中等教育学校)
本研究は、茨城県つくば市のシェアサイクル事業「つくチャリ」を対象に、曜日・時間帯・イベント開催の有無による利用傾向の違いを把握し、運営上の課題を整理することを目的とした。自転車在台数を指標として、平日、学園祭開催日の休日、イベントのない休日について、午前8時・午後0時・午後8時の3時点で市内複数ポートの調査を行った。平日には、つくば駅周辺や研究学園駅周辺で時間帯ごとの在台数変化がみられ、通勤・通学に対応した利用が確認された。一方、休日には、つくば駅周辺および大学周辺を中心に在台数の偏りが継続し、特定ポートへの需要集中が確認された。さらに現地調査から、駅周辺における自転車供給不足、ポートの視認性、平坦な地形条件が利用行動に影響していることが分かった。以上を踏まえ、観光・団体利用を想定した特定ポート間での自転車重点配置や、利用を促す料金施策など、需要に応じた運営手法の導入が必要である。
元木麻友(東京都立神津高等学校)
東京都神津島の住民が自分の住んでいる島をどのように認知しているのかを明らかにするために、高校生を対象に、自分の頭の中にある神津島を地図にしてかいてもらう「メンタルマップ」の調査を行った。集計の結果、山や海を描いている人が多くみられた。神津島の山である天上山を書いた割合は61%、海の名称である前浜は80%、赤崎は58%、多港湾は54%であった。自然環境以外には学校を描いている割合が高かった。また、島内の安心する場所、苦手な場所、成長を感じた場所について調査したところ、それぞれに海に関係する場所を回答した割合が高かったことから神津島の高校生にとって海は印象深く、様々な思いを持っていることがわかった。また、歩けば必ず知っている人に会うから集落が苦手という、コミュニティが狭い島ならではの回答もみられた。神津島の自然環境は住民の記憶に定着しており、重要性が高いと考察した。
宮脇遼成(島根県立大田高校)
地理の授業で大田市の地形を学び,その土地利用に興味を持った。大田市には特産品の農産物がいろいろあるが,それらが市内の特色ある土地を利用してどのように作られているかを調べ,大田市内外の人に伝えることが研究の目的である。とくにブドウとワサビについて注目し,フィールドワークと聞き取り調査を行った。ブドウは大田市鳥井町で水はけのよい海岸砂丘で作られており,海岸に近く寒さが穏やかことに加えて,夏の成熟期に適切な温度を保つためにハウス栽培で作られている。ハウスはかつて潟湖(ラグーン)だった水田を埋め立てた場所にも広がっている。ワサビは大田市三瓶山の周辺で作られている。栽培されている固有種の「三瓶わさび」は風味豊かでさわやかな辛味と甘味が特徴であり,水温が安定して水質の良い三瓶山の湧水帯を利用して栽培されている。今後は他の農産物も調べ,食材を生かす料理などを通して大田市の誇れる特産品を発信していきたい。
服部花奈(愛知啓成高等学校)
本研究の対象地域である愛知県稲沢市は、植木四大生産地の一つとして全国的な一大流通圏を形成しているとともに、植木が観光資源として利用されている。しかし、近年稲沢市での植木の生産が減少傾向にある。本研究では、愛知県稲沢市での植木生産の減少要因を明らかにし、観光資源の側面を持つ農業の持続可能性について検討する。研究方法として、植木生産の起点となった地域とその周辺地域における植木生産の分布を地図化し、過去と現在での植木生産規模を比較した。また、植木生産の現状と生産減少理由について、植木生産を支える方々から聞き取り調査を行った。結果として、緑化用樹木を用いる公共事業の縮減や植木需要の変化、少子化に伴う後継者不足に加え、市内の小中学校での農業に関する教育の差が生む、植木事業への理解度の違いが、生産減少に影響しているとわかった。これらの減少理由から、農業の持続と市の魅力を宣伝する展望を検討していきたい。
関口優希・池田奈弓・髙橋侑良(獨協埼玉高等学校)
本研究は、スターバックスコーヒー ジャパン株式会社(以下、スターバックス)が、なぜ勉強や作業に適した場所として多くの人に支持されているのかを、①立地に関する視点②店舗設計の視点から分析する。①については地理院地図を活用し、埼玉県内にあるスターバックスの分布図を作成した。その結果、県内の主要駅やショッピングモール内だけでなく、高校や大学などの位置についても関係があることがわかった。②ついては、複数の店舗が隣接する、大宮駅構内およびその周辺の店舗と、レイクタウン駅周辺の店舗の、客層や内装などについて、現地調査やインタビュー調査および文献調査を行った。これらの調査より、スターバックスは立地の良さに加えて、内装の工夫などから、異なる目的の顧客を同時に受け入れる空間を実現していることが、幅広い層に支持されていることがわかった。
森淳(筑波大学附属高等学校)
交通網の麻痺など社会的影響が大きく、正確な予測が求められる関東平野の大雪について、発生の周期性とその要因解明を目的とした。東京のアメダスのデータを用いて、偶数・奇数年別の降雪特性をMann-WhitneyのU検定により比較した結果、降雪日数に有意差はないが、降雪量および1事例あたりの強度は偶数年で有意に多いことが判明した。JRA-55再解析データを用い、Pythonで気温偏差を地図化した結果、偶数年は大陸から日本上空にかけて全層的な寒冷偏差が確認された。これは成層圏準2年周期振動に関連した北極振動の負偏差に伴う偏西風の蛇行により、低気圧の発達と寒気の南下が促されるためと考えられる。この環境下では、山越えの北風がもたらす乾燥と降水時の蒸発冷却が、関東平野特有の冷気ドーム形成をより強力に促進しており、こうした広域循環と局地プロセスの連関が降雪量の有意な偶奇年差に関与していると推察される。
菊浦実緒・川上華芳(鷗友学園女子高等学校)
ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄付をするとその自治体から返礼品が送られ、その代わりに自分の自治体への納税額を減少させることができる仕組みである。今回はふるさと納税の寄付額上位の泉佐野市、都城市の事例から、寄付額下位の横浜市にどのような提案ができるか考えた。泉佐野市は、圧倒的人気を集める地場産品がないため、手頃でインパクトのある返礼品の他に、クラウドファンディングを用いて補助金を捻出し、新たな返礼品開発を支援する制度が行われている。都城市では、返礼品を宮崎牛や焼酎など地元の有名な産業に絞り、あえて品数を減らすことで他自治体との差別化を図った。横浜市への提案として以下が挙げられる。まず、横浜市の特産品や中華街など特定の返礼品を全面に押し出すことで、他自治体との差別化を図る。また、クラウドファンディングの拡大やポータルサイトの分析などのネット戦略も重要だと考える。
内田菜緒
複数の鉄道路線が交差し、交通の結節点である川崎市高津区溝の口駅周辺を対象に、飲食店の分布構造と多様性を定量的に分析した。経済センサスから高津区全体の業種別店舗数の推移を分析し、ぐるなびPOIデータを用いて溝の口駅から半径500m圏内の地域の飲食店に関する営業時間や価格帯、業種、経営形態(個人店/チェーン店)の分類等の情報を取得した。分析の結果、溝の口周辺は高い中心地機能を持ちながら個人店割合も高いという特異な構造を有することが明らかになった。さらに、溝の口周辺において特徴的な性格を持つ地域を3つ設定し、GISで飲食店情報を地図化し分析した。その結果、溝の口周辺は一様な商業空間ではなく、性格が異なる複数の地域が存在する多層的な構造を持つことが明らかになった。こうした地域ごとの差異が駅周辺における飲食店の多様性、すなわち個人店割合の高さを維持する一因となっている。
工藤陽菜・井上七柚(鷗友学園女子高等学校)
本研究は日本の農業の持続性を探るため、外国人労働者増加と気候変動に着目し、北海道と松山市を対象に行政機関と農業関連事業者への聞き取り調査を行ったものである。北海道は農業人手不足解消のため特定技能実習生を増やしているが、文化差や経済面、農閑期の仕事確保が課題である。道庁は経済支援やJA・農家連携で安定した就労を支える取り組みを進めている。また、松山市は収益性や高齢者対応、需要増からみかんをアボカドへ転換しているが、生理落果や温度障害で収量が少ない課題がある。同市は幹への白色塗料塗布などで対策し、気候変動対応と国産生産拡大にもつなげている。同市の取り組みをモデルに他の作物でも転換を進めるべきだ。ただし、作物の転換によって農業形態を確立させたとしても、それを持続させるためにはやはり農業の担い手が必要不可欠である。よって北海道の対応を参考にして外国人労働者の活用を進めていく必要性があると考える。
廣瀬真子
近年、京都府全体では観光入込客数の増加とともに観光消費額も拡大している。しかし舞鶴市では、観光入込客数が同様に増加する一方、一人当たり観光消費額は横ばいで推移している。本研究は、この乖離に着目し、舞鶴市の主要観光地を対象に、空間構造と交通条件が観光行動と観光消費に与える影響を検討した。統計資料による観光行動の分析に加え、需要期の異なる二期に現地調査を行い、現地観察と関係者への聞き取りから観光拠点と交通条件の空間配置を整理した。その結果、旧軍港地域と城下町地域に分かれる都市構造に加え、各地域内でも観光資源が分散する二重の空間的分散が確認された。これが公共交通の接続条件と相まって観光客の行動圏を制約し、結節点周辺への滞在・消費の集中や地域を跨ぐ周遊行動が成立しにくい傾向が示された。以上より、市内にみられる二重の空間的分散が、観光客の消費行動を制約する要因として大きく関係していることを示した。
青木悠真(学習院高等科)
本研究は英国の「アトランティック・バスティオン計画」を参考とし、常時監視と抑止を重視した日本の新しい海底ケーブルの防衛モデルを検討することを目的とする。研究対象は、日本周辺海域に敷設される国際・国内の海底ケーブルおよび、それを取り巻く安全保障環境である。分析には、同計画に関する英国政府の公式声明、海底ケーブルの分布データ、無人潜航機に関する先行研究を用いる。研究方法としては、英日両国の脅威認識の違いを比較し、日本に適合可能な防衛要素を抽出する比較分析を行った。その結果、小型 UUV、固定式監視センサー、民間事業者との連携を組み合わせた分散型・重層的防衛体制が、日本の海底ケーブル防衛においても有効であることが示された。考察として、海底ケーブル防衛の実効性を高めるためには、軍事的対応に限定せず、平時からの可視的な監視体制と官民協力を制度化することが、抑止力強化の鍵となると結論づける。
井上喜朝(県立川越高校)
研究の目的は、地産地消による二酸化炭素の排出量の削減を明らかにすることである。現状では遠方の産地で出荷された農作物が市場に流通しているが、これをできるだけ地産地消に置き換えることによって期待される二酸化炭素の削減量を、白木達郎ほか(2006年)「生産•流通を考慮した地産地消•旬産旬消によるCO2排出量削減に関する研究」を参考にして計算した。農作物は大根とし、データは農水省の「青果物卸売市場調査」(令和5年)を用いた。計算結果から、年間約1700トンの二酸化炭素排出量の削減が期待できることが分かった。これは、現在の大根の流通過程で発生しているとみられる二酸化炭素排出量23595トンのうち、わずか7%に過ぎず予想を大きく下回った。これは、大根が東京や大阪といった大市場から遠い北海道などで多く生産されており、地産地消を実現しようにも需要を満たすためには遠方の産地に依存せざるを得ない現状があることが理由として考えられる。
竹中志織・西美咲・水野聖也・山岡夢來・山岸美依奈(小松高校)
震災後に問題となる「災害関連死」や「二次災害」の発生を背景に、避難所生活や仮設住宅の配置を事前に検討することで、被災地の復興初動の遅れを軽減できると仮定し、小松市における仮設住宅の最適な建設場所について考察した。研究では、小松市HPに掲載された建設条件の整理に加え、市役所での現地調査や周辺環境の確認、研究メンバーが設定した安全性・生活利便性・地域連携などの条件を基に、福井平野東縁断層の活動による大規模被害を想定して配置を検討した。その結果、市内6か所を仮設住宅の建設候補地として提案した。今後は本研究の成果を小松市へ提案し、防災対策の強化に寄与するとともに、地域コミュニティの維持や居住者の年齢層に配慮した「ソフト面」の工夫も含め、心身ともに安心して暮らせる仮設住宅モデルの構築を目指す。
別宮 亜蓮・大畠 遥花・下田 寛樹・佐々木 将哉(小松高校)
石川県内で多発する水害を受け、ハザードマップから読み取ることのできない脅威を立体化し検証しようと考えた。対象は著者らの所属する高校周辺とし、付近に位置する一級河川の氾濫が発生したものを想定する。「Unity」と「Blender」を用いて校舎及び河川付近を作成、再現した3Dモデル上で河川が氾濫したことを想定した流体シミュレーションを行った。結果、住宅街の細い路地では流速が加速し急激に水位が増した。一方、公園やグラウンドは水位が下がり流速は加速しなかった。ビルや住居が密集した地点では水が集中することにより、ハザードマップ上の同じ危険度の区分の中でもより危険度が高いと考えられた。対象的に開けた場所では水を集中させず拡散させ、流速を遅くする防災機能を持つことが考察できた。
後藤葵・礒菜々子(栃木県立矢板東高等学校)
アルゼンチンにルーツを持つ親族をきっかけとして、神奈川県藤沢市湘南台における日系アルゼンチン人を事例に、日本におけるその歴史や文化の生成過程について、文献調査、行政資料の分析、フィールドワーク、関係者への聞き取り調査などを通して考察を行った。1960年代から住宅都市・工業都市としての機能が急速に高まってきた湘南台には、1980年代後半~90年代にかけて、自動車関連産業や派遣業に就く日系アルゼンチン人を中心にコミュニティが形成された。その名残を求め、湘南台の公共施設やアルゼンチン料理店を訪問したが、リーマンショック等による経済状況の悪化を受けて、コミュニティの存在は確認できなくなっていた。一方、湘南台において、20世紀後半から日系人向けの日本語教室・スペイン語教室が開かれていることより、日系アルゼンチン人が日本という異国で生活しながら、そのアイデンティティを保持していくための取り組みがなされてきたと考えた。
河和汰來・手塚悠天(栃木県立矢板東高等学校)
内川と宮川・2本の河川の合流点に位置する矢板市立旧川崎小学校は、浸水想定区域であるにもかかわらず指定避難所になっており、災害種によっては危険性が高いと考えられる。このことから、矢板市市街地の河川流路の変遷と氾濫対策を考察した。「今昔マップ on the web」で新旧地形図を比較すると、昭和7年の段階では現在の市街地を流れる河川の大半が大きく蛇行していたが、昭和53年には内川や宮川が直線化されたり、中川が内川に導かれる河道の整理が行われたりしたことが確認できた。市の過去の広報紙によると、これは昭和30年代半ばから始まった河川改修によるもので、その際、河川の護岸工事も進められたことがわかった。また近年は堆積土の除去も実施された。現地を訪れたところ、河川に消波ブロックが敷かれていたり、河川の合流点の下流側に堰が築かれていたりと多様な河川構造物も見られ、一定の氾濫対策が行われていることが確認できた。
菊池咲穂・芳賀穂乃香(栃木県立矢板東高等学校)
駅から学校への通学路の街路樹がどれも同じような樹であることに気づき、アプリ「Picture This」を用いて樹種を調べると、全てがイロハモミジだった。学校付近の他の通りの街路樹300本弱についても同様に調べると、通りごとに樹種が概ね同じで、4つの通りに5つの樹種があることが確認できた。さらに、それぞれの樹の幹の太さを計測して通りごとの樹の平均値や中央値を算出するとともに、1975年版以降の各年度の『ゼンリン住宅地図 矢板市』を参照してどの通りがいつできたかを調査して照らし合わせたところ、古くからある通りの街路樹ほど太い傾向が見られた。一方、例外として、市の木である「ナツツバキ」が後から植えられたことも推察された。そして、歩行量が少ない通りに街路樹があること、古くからある通りに剪定された街路樹もあることなどを踏まえ、それぞれの通りにおける街路樹の機能について、緑化・日よけ・景観向上・防災といったものがあると結論付けた。
喜多陽菜・小南桃香・坂尾玲奈・寺上桃叶(小松高校)
本研究は、金沢市などの他地域にはない小松市独自の強みとして「新幹線駅と空港の距離の近さ」に着目した。新幹線開通に伴う空港利用者の減少という課題に対し、両者の連携による「小松ならではの体験」の創出が鍵となると仮定し、市の政策課への調査を行った。結果、市側も空港を核としたまちづくりを最重要政策と位置づけ、自動運転バスの導入検討など、アクセス利便性の向上に意欲的であることが分かった。これらを踏まえ、私達は「SNS活用」「ターミナルビルの魅力向上」「自動運転バスの活用」「マスコット活用」の4点を提案する。具体的には地元高校生による発信や、空港内での体験型イベントの実施、ラッピングバスの運行などが挙げられ、市からは実現性や課題について前向きな見解が得られた。これらの施策を通じて、空港を単なる通過点ではなく、滞在や交流を促進する産業・観光の拠点へと進化させることが小松市の持続的な発展に繋がると考える。
本地一稀 吉田敦史 西山凛太朗 西田悠真(岡山県立倉敷南高等学校)
真備地区は高梁川と小田川の合流地点が湾曲しており、古くから洪水被害が多発してきた。2018年7月の西日本豪雨では合流部の水流悪化によりバックウォーター現象が発生し、小田川の水位上昇によって堤防決壊や氾濫が起こった。また、夜間に決壊したため、多くの犠牲者が出た。災害後、行政は合流地点の付け替えや堤防強化、防水壁設置などの治水事業を行い、水位低下が確認され復興は一定の成果を上げた。夜間でも避難できるように小田川堤防に夜間でも避難できる公園や駐車場も整備された一方で人口は減少し、特に生産年齢人口と幼年人口が減り、更に高齢化が進んでいる。産業面では建設業などは増加したが、卸売業や製造業は減少した。今後は避難所不足の解消や住民と行政の連携強化、地域の魅力向上による人口流入が課題である。
川崎優真(さいたま市立大宮北高校)
近年、日本では書店数の減少が続いているが、その要因や影響は地域や立地条件によって異なると考えられる。本研究は、書店の経営実態を空間的観点から捉え、立地条件と来店行動・売上構造との関係を明らかにすることを目的とした。方法として、出版市場や書店数に関する統計資料の整理に加え、駅前型・郊外型・住宅地近接型の書店を対象に聞き取り調査を実施し、周辺環境や客層の特徴を比較した。その結果、駅前立地では通過人口が多い一方で滞在時間が短く、目的買いが中心となる傾向がみられた。また、住宅地に近い書店では家族連れの利用が多く、地域拠点としての役割が確認された。これらのことから、書店経営は個店の努力のみならず、立地条件や周辺人口構成、人の動線といった空間構造に強く規定されていることが示唆された。本研究は、書店減少問題を空間的差異の視点から捉え直す点に地理学的意義がある。
柏浦璃久・影山昊紀(さいたま市立大宮北高等学校)
本研究は、都市部と農村部における大気環境の地域差が生活環境の認識にどのような影響を与えるかを、地理学的視点から明らかにすることを目的とした。調査は都市地域としてさいたま市大宮区、農村地域として秩父地域を対象に実施し、人口密度や土地利用の違いに着目しながら、PM2.5やNO₂の数値比較、現地観察、アンケート調査を行った。その結果、都市部では交通量や人口集中の影響を受け、大気中の微小粒子状物質や二酸化窒素の値が相対的に高く、空気が重い・においを感じるという回答が多く見られた。一方、農村部では森林や自然環境の広がりにより空気が澄んでいると感じる傾向が強かった。さらに世界的な事例として空気環境と平均寿命の関係を比較した結果、生活環境の差には大気質が関係する可能性が示唆された。以上より、人口密度や土地利用の違いが大気環境の地域差を生み、それが生活環境の評価や健康意識に影響していると考えられる。
八木同仁・杉山浩一(静岡理工科大学静岡北高等学校)
静岡市内の幹線道路では、朝から夕方にかけて渋滞がよく発生している。原因は様々であるが、特に鉄道と踏切で交差する場所では、遮断機が下りていない状態でも一旦停止をせねばならないことと、踏切近くの信号が青でも遮断機が下りているために進行できない「無効青時間」が発生することが、車の流れを悪くさせる一因になっている。一方で、道路交通法第33条では「信号機の表示する信号に従うときは、踏切の直前で停止しないで進行することができる」とされており、実際に踏切信号によって一旦停止義務のない踏切も存在している。そこで、運行頻度の高い私鉄路線と幹線道路の交わる踏切3か所において、朝の通勤ラッシュ時の無効青時間の発生状況と踏切通過に要する時間の計測を行った。この結果をもとに踏切信号化した場合のシミュレーションをした結果、当該地域での交通処理効率は約3.10倍上がるという予測値を得ることができた。
岩崎愛結・平山緋音・黒田結菜・髙橋美来乃・陳奕瑄(さいたま市立大宮北高等学校)
本研究は、地域における子ども食堂の展開過程とその社会的役割の変化を明らかにし、現在の課題と今後のあり方を考察することを目的とする。子ども食堂は、子どもの貧困や孤食への対応として地域住民の主体的な活動から始まり、近年では食事提供にとどまらず、居場所や見守りの機能を担う場として広がってきた。本研究では、アンケート調査による認知度と利用状況の把握、フィールドワークによる運営実態の聞き取り、新聞記事の分析を通して現状を整理した。その結果、認知度は高い一方で利用率は低く、「貧困対策の場」というイメージが心理的な利用障壁となっている可能性が示された。また、運営がボランティアに依存している現状や、支援の可視化がスティグマを生むといった構造的課題も確認された。子ども食堂は地域における重要な居場所として機能している一方、その役割の拡大は社会的支援のあり方を問い直す契機となっている。
大豆生田航也・関沢優斗・西久保琉偉・山田晴也(横浜緑ケ丘高校)
神奈川県綾瀬市は、離島や平成以降の合併市等を除き全国に6つしかない「鉄道駅のない市」のひとつであり、交通空白の解消が課題である。本研究では、市内への鉄道導入の可能性を、地理的・経済的側面から多角的に検討した。手法として、市内中学校の生徒および教職員を対象とした意識調査、市史の分析、市交通課へのヒアリングなどを行い、工業地帯を通過する需要の高いルートを選定した。その上で、自走式ロープウェイ「Zippar」を用いた採算性シミュレーションを行った。意識調査の結果、75%以上が駅の必要性を感じており、特に広域的な接続需要が確認された。これを受け、相模野台地の起伏や米軍厚木基地等の地理的要因を考慮しつつ、海老名駅―湘南台駅間を結ぶ南北ルートを考案した。試算の結果、既存鉄道路線より安価な運賃設定でも黒字化の可能性が見出された。本発表では、持続可能な地域交通のあり方を提言する。
栗原青空・西垣一晃・野崎碧生・野崎竜乃介・坂本泰樹・山岡秀・大橋奏斗(藤沢翔陵高校)
日本国内でも競技人口が多く、年齢を問わず親しまれている登山。
この山を安全で快適に楽しむためには、山小屋や登山道の維持管理が必要不可欠である。ところが、この登山道の管理について、実は、管理者不在の登山道が数多く存在することは、あまり知られていない。管理者不在の要因として、管理者の負担や責任が重くのしかかるものだと考える。つまり、管理者に対するサポート体制を整えられなければこの問題は解決しない。現在抱えている問題の事例としては、国有地である涸沢岳にある登山道の決壊による責任追及の問題で、国の所有する山でありながら、管理者不明の登山道だった為、地元の自治体が登山道の修繕費の一部を出費した事例がある。対応策などを踏まえ、管理者不在の状況を解決する為に、私たちは入山料の認知度上昇、登山道の整備NPOへの寄付・サポート、裁判費の補助、気象庁に協力を要請するなどの提案をします。
荻原佑和・有賀翔・新海陽太(韮崎高校)
甘利山は山麓に活動度B級の活断層を抱え,多雨環境にあることから,第四紀後期を通じて各地で地すべりが繰り返し発生してきた可能性が指摘されている。その中腹に位置するさわら池には赤牛伝説が残るが,先行研究では同様の伝説が残る地域には共通して土砂災害の歴史があるとされる。実際,さわら池は1992年に大規模な浚渫工事が行われたにもかかわらず,2025年の私たちの調査では平均水深が58cmと浅く,土砂の流入が進んでいることが確認された。私たちは,地すべりによって偶然形成された池の周囲に集落が成立し,その後も地すべりや土砂災害が周期的に発生してきた地形であると仮説を立てている。1992年の工事によって当面の災害は抑制されたものの,今後10数年で再び池が土砂で埋まり,同様の現象が繰り返される可能性が高い。以上を踏まえ,私たちは景観形成の歴史と将来予測をテーマとして研究を進めている。
奥原晶太郎(東京都市大学塩尻高等学校)
地方の関係人口の創出からも注目されたワーケーションは、新型コロナ禍以降全国的に縮小傾向にある。そのような状況下において、長野県では現在も堅調な地域・施設が存在することから、その要因について聞き取り調査を行った。長野県におけるワーケーションが堅調な地域・施設の共通点は、企業研修やチームビルディング、越境学習などの団体受け入れ体制が整い、企業等のクライアントの多様な要望に応じたプログラムの構築・提供を行うプランナーが存在する点である。加えてアクセスの良さも重要である。長野県は公共交通機関を利用した移動が不便な地域も多い。最寄り駅から近く、レンタカー等の交通手段を必要としない施設では安定した利用者を確保している。よって、ワーケーションの堅調な運営には団体需要に対応した施設か否かに加え、クライアントの要望に応じたプログラムの構築・提供を行うプランナーの存在、交通アクセスの良さがその要因といえる。
戸田遥人(千葉県立千葉高等学校)
地名は、地方ごとに様々な特色を持ち、固有の風土や環境について考える際に有用性の高い手段だが、多様な解釈ができるためこれを用いた研究は主観的になりやすい。本研究では、アイヌの本州における南下の南限について調べるため、本州各地のアイヌ語として解釈できる地名を基準に沿って地理院地図や『角川日本地名大辞典』を用いて探し、それぞれの地名のアイヌ語での意味を推測した際に、その周辺環境と一致しているかどうかを調べた。また、各地における北海道との交易の有無を調べるために遺跡発掘資料などの調査を行った。これらの結果、東北地方より南の地域ではアイヌの南下を示す根拠は確認できなかった。次に、岩手県でアイヌ語由来の可能性が高い地名がまとまって分布している場所を『角川日本地名大辞典』を用いて調査した。その結果、まとまった分布の南限は和賀郡(現在の北上市周辺)であったため、アイヌは北上市周辺まで南下したと結論付けた。
高橋諒一(千葉県立千葉高等学校)
首都圏では鉄道通勤が広く浸透している。しかし、通勤の利便性を左右する視点は運賃や運行本数など複数存在するため、各駅の利便性に対して客観的かつ同一基準で比較を行い、データに基づいて評価を行うことは難しい。 本研究では、千葉県内の各駅のもつ東京駅へ通勤する時のデータからそれぞれを定量的に評価するという目的に対し、一つの評価基準を作った。この評価基準は本数と利用者数あたりの両数の積を分子に、運賃と所要時間の積を分母に組み立てた。この基準をGISソフトでマッピングすることで県内各駅の評価基準で可視化した。この地図から、千葉県内において南北に強くスコアの差が開いたことを読み取ることができ、直通運転の有無、複線と単線による本数の差、所要時間が利便性に大きく影響を与えていると考察した。また、路線ごとの家賃に対して散布図を用いて分析し、地域評価をダイヤから推定する際の活用可能性を示した。
渡邉颯亮(千葉県立千葉高等学校)
近年、千葉県いすみ市ではキョンやイノシシなどの有害鳥獣による被害が深刻化している。一方、捕獲された個体の多くは焼却・埋却処理され、資源としての活用は限定的である。本研究は、いすみ市の有害鳥獣対策を「処分」から「活用」へ転換する可能性を、地理的条件と行政施策の両面から検討することを目的とする。 具体的には、有害鳥獣捕獲数分布、道路網をGISで重ね合わせ、捕獲後に放血・内臓摘出・冷却までを行う小規模一次処理拠点を新たに配置する場合の立地適性を分析した。また、行政ヒアリングおよび先行事例をもとに、行政と民間の役割分担と支援の在り方を整理した。その結果、南部地域に一次処理拠点を配置することが合理的であり、行政は基盤整備と流通支援に関与し、商品化・販売は民間主体とするモデルが現実的であることが示唆された。本発表では、地理的分析と制度設計を統合した「いすみ市型ジビエ活用計画」の試案を提示する。
宮村優花・高崎薫乃 (埼玉県立浦和第一女子高等学校)
「まち」には人を引き付ける魅力がある。安全・安心は「まち」の付加価値をあげる。文教地区である浦和は、多くの学校が集中し、商業施設や文化施設に富む。浦和駅の乗車人員は1日あたり約9万人。平日には最寄りや乗換駅として多くの学生や社会人が利用し、休日には観光客でにぎわう。埼玉県では2021年に全国で初めてエスカレーターの利用に関する条例が施行された。しかし利用状況は改善されておらず、すべての人が安心安全に利用できない状況が続く。エスカレーター(ES)の安全な利用に関するアンケートの実施、浦和駅の協力も得て、効果があると考えたステップ加工の検証、ESの利用に関する現地調査も行った。現地調査をもとにESの安全な利用の経済効果について検討し、今後の対応について考察した。
秋元優希(埼玉県立草加東高等学校)
埼玉県越谷市にあるショッピングモール越谷レイクタウンの付近には農住混合型市街地がみられる。都市化による過密や自然との共生などをどのように農業で解決しているかに興味を持ち、今回の研究テーマとした。対象範囲は越谷市の相模町とする。相模町2丁目から7丁目は田畑と住居が立ち並ぶが1丁目だけ田畑がない住宅地である。こしがやスマイルマップをみると、1丁目だけ市街化区域に指定されていて、2丁目から7丁目は都市計画区域に指定されている。しかし、市街地の中に農地が完全にないというわけではなく、一部生産緑地がある。越谷レイクタウンに訪れる人々への令和元年度消費者アンケートによると、ショッピング以外にいちご狩りなどを楽しみたいといった声が多く、越谷レイクタウン付近の農業には需要があることが分かる。このように、各自治体の都市計画に農業がどのような影響を与えているのかを、越谷レイクアウン付近を中心に研究した。
塚野颯美(福島県立白河高等学校)
現在の福島県白河市は、2007年に旧白河市・旧大信村・旧表郷村・旧東村の4市村が合併して成立し、その前後において、1998年の平成10年豪雨や2011年の東日本大震災といった災害を経験した。合併によって災害伝承にどのような変化が起きたのかを解明するために、①市史や村史などの文献調査②フィールドワークと災害伝承活動の実態調査を行った。文献調査では発行元の自治体の特色によって記載されている災害の内容の傾向も異なることが分かった。また、合併前から制作が始まって合併後に発行された文献では、合併前の自治体の記録であるにもかかわらず、合併後の災害の記載が多く占めていた。フィールドワークと実態調査では、自治会やボランティアガイドによって、合併後に発生した東日本大震災について、災害伝承が行われていると分かった。今回の調査から、市町村合併によって地域ごとの特色が反映された災害伝承が失われていると推測した。
目々澤ゆう(福島県立安積高等学校)
近年、集中豪雨や局地的大雨の発生が増加しており、その形成には局所的な強い上昇気流が関与している。本研究では、将来的に上昇気流の抑制・緩和がどのような人工構築物や地形により起こるかを検討するための基礎段階として、人工構築物周辺における空気の流れの可視化を目的とした。高度の異なる位置に4つの温湿度計を設置し、気温および水蒸気量の鉛直方向の変化を測定した。これと、風船を用いた測定、建物からの垂下測定、建物間での測定を比較した結果、建物間に温湿度計を設置する手法が最も測定条件が安定しており、気温および水蒸気量の鉛直変化から空気の流動構造を大まかに推測できる可能性が示唆された。一方で、日射や人工構築物の影響を十分に切り分けるには至らず、現場記録を併用した観測結果との対応や、人工構築物との距離が測定結果に及ぼす影響の空間的範囲、一定の条件下で測定できるようにすることも今後の課題である。
小林綾莉(福島県立安積高等学校)
福島県は面積が13,783.90平方キロメートル、北海道、岩手県についで全国で3番目の広さを持つ県である。県内は「中通り、浜通り、会津地方」と3つの地域に分割され、広大な面積ゆえに、各地域はそれぞれ気候や文化が異なる。日本全体の教育格差を俯瞰したときに、しばしば都市部と地方における教育環境の格差が挙げられるが、福島県内の各地域を比較してみると県内でも各地域間に学力差が生じていることが分かった。本研究は、福島県の地域ごとの学習塾の数や交通の利便性、県内総生産や経済活動別構成比のデータ等と学力調査の結果を比較し、各地の産業や交通の特色と学力との関係を明らかにするものである。また各地における格差の原因を探ることで、福島県ならではの地理的要因があることが見えてきた。これらを踏まえて格差是正の解決策を提案する。
坂田彩夏・楠本百花・岡田珠里(愛媛大学附属高校)
熟練農家が持つ暗黙知の可視化は、現在の農家のみならず若手農家の就農にも役立つ。そこで、水稲栽培で実用化されているNDVIを活用し、愛媛県の基幹産業である柑橘栽培をスマート化したい。本研究では、愛媛果試第28号を対象に作物センサーとドローンでNDVIを取得し、QGIS等で解析を行った。その結果両データに大差はなく、UAVデータが利用可能であることが示された。また、使用した愛媛果試第28号は、JAえひめが課す規格を通過することで、紅まどんなとして高額で取引される。この、糖度10.5以上酸度1.2未満といった味の規格を満たすか否かを栽培の段階で知ることは、農家にとって極めて重要である。そこで、取得したデータを生成AIで解析した結果、NDVIや施肥量、気象データを考慮することで、高精度の糖酸度推定式を作成することができた。よって、柑橘栽培におけるNDVIを活用したスマートな営農の可能性が示された。
築山碧柑・泉沢幸明・岡村春秋(駒澤大学高等学校)
本研究では、防災意識を高めるために開発されたすごろく型の防災ゲーム(GuraGuraTown,NPO法人プラスアーツ)を用い、江戸川区/葛飾区と世田谷区の学童に通う小学生(主に1・2年生)を対象に防災学習を行った。ゲームの前後では災害に対する意識アンケートを実施するとともに、その地域の避難場所や地形・特有の災害を紹介する防災ゲームを行った。各地域とも研究に参加してくれた小学生は10~20名であるため、その差異に対して統計的な有意性を示すことはできないが、両地域ではアンケートに書かれた災害に関連するキーワードに対してテキストマイニングを行い、語句同士のつながりについて地域間比較を行った。また防災学習前後での災害に対する意識の変化から防災学習の効果を検証した。
名越芽生・高田結和・佐藤怜(駒澤大学高等学校)
神田神保町の古書店街は、本の街として現在も多くの市民に親しまれている。先行研究(外山ら2018,景観・デザイン研究講演集)では、1940年代~2010年までの古書店の分布の推移を検証し、1980年から2010年にかけて主に靖国通りと白山通りの交差点付近の北東部で古書店の集積が見られることを明らかにした。そこで本研究では、その地域を対象にアンケート・インタビュー・立地調査を行い、先行研究と比較した。2010年から2026年にかけて、電子書籍の流通、コロナ禍での三田線神保町駅の利用客の減少、訪日外国人の増加という急激な社会の変化が起きている。これらの社会の変化が各書店に与えた影響を調査し、現在の魅力ある景観を維持していくための課題を考察した。社会的な影響は特に大通り沿いの店舗に大きくみられた。また、店舗の維持のために、扱う書籍や商品を多様化・特色化する店舗が見られた。
横山勇眞(兵庫県立加古川東高等学校)
本研究は、地区防災計画が未策定である加古川市加古川町粟津地区を対象に地域の現状と計画策定を阻む要因を明らかにし、計画作成に向けた提案を行うことを目的とする。資料収集、QGIS を用いた地理情報整理、合理式・マニング式による浸水被害想定に加え、市役所、他地域、町内会へのインタビューを実施した。ハザードマップおよび地形分析から、粟津地区は旧河道・低地に位置し、豪雨時に最大約 1m 超の浸水が想定されることが示された。また、住民の防災意識の差、専門人材不足、個人情報への懸念が計画策定を妨げていることが明らかとなった。これらを踏まえ、危険箇所の把握と住民意識向上を目的とした防災まち歩きの実施や地域独自の防災マップ作成を提案した。その上で実際にまち歩きを行い危険箇所を確認するとともに、防災マップと地区防災計画の雛形を作成し提案の実効性を検証した。
若狭優唯・小鷹あかり・佐藤乃子(都留高校)
現在山梨県上野原市では市外への人口流出が進んでいる。本研究では、人口流出の要因として地域への愛着度の低下があると考え、様々なデータから客観的な愛着度の指標を作成し、他地域と比較・検討した上で愛着度の向上を図ることを目的とする。文献調査などから得た、地方選挙の投票率・居住年数・地域活動への参加度・地域経済といった4つの視点によるデータから、愛着度を算出した。比較地域は、上野原市と人口規模が近い地域の中で立地や観光資源が似ていることや、シンボルの有無を基準に選んだ。また、他地域で愛着度向上のために行われている取り組みを調べたり、上野原市役所を訪問して職員の方とどのような取り組みが実行可能なのか話し合ったりした。そして最終的には市の認知度に関わらず、市民一人ひとりの思いが愛着度を形作ると気づいたことから、行政と市民が連携し、市民から主体的に行動することが人口流出を抑える切り口になると考えた。
山田泰成・ 横山勇眞・野中樹(兵庫県立加古川東高等学校)
本研究は、地点固有の地理条件を反映した被害想定シナリオを生成する地理活用型生成 AI「GeoCrisis」を試験的に構築し、その有用性を検証することを目的とする。対象は首都直下地震時の東京とし、震度、全壊棟数、焼失棟数、避難所情報、携帯電話不通率などの地理情報を用いて被害マップと属性値抽出プログラムを作成し、指定地点ごとのシナリオを生成した。さらに、GeoCrisis、汎用型生成 AI+地理情報、汎用型生成 AI のみにおいて出力結果を 4 観点で比較した結果、GeoCrisis は地点の被害特性を反映した具体的かつ一貫したシナリオを示し有用性が確認された。一方で、過去事例が乏しい複合災害条件では地理情報の制約により判断の柔軟性が低下する可能性が示された。なお、本モデルは属性値を持つ分野であれば低コストで構築可能であり、防災以外の領域にも応用可能な汎用性を有する
木島光輝・河村凛太郎・渋谷果・岡部花梨・神谷雄星(川和高校)
都筑区を対象に、避難所の数と配置が人口に対して十分か、避難所を新設すべき場所を明らかにすることを目的に調査した。都筑区の選択理由は、住宅地が起伏のある地形であり、災害時に避難が困難になりやすいと考えたためである。国土地理院やjSTAT MAPを用い、避難所までの経路や高低差などから避難経路の問題性を確認した。また、学校避難所を中心とする直径500m圏を設定して圏の重なりから避難所の圏が重ならない空白域をみつけ、これらから避難が困難になり得る場所を「新設の検討が必要な候補地」として抽出し、物資ニーズも含め改善策をまとめた。また、都筑区の人口密度から避難所1か所に約1162人が集まると推計し、過去の災害から1避難所あたりの想定避難者数を約72人と見積もった。避難所の面積を国際指針の避難スペースで換算してでた収容可能人数約230人と比較した結果、収容人数面では概ね不足しないとも考察した。
堤恵悟(東京都立三鷹中等教育学校)
近年ローカル鉄道の経営は厳しく、全国のローカル鉄道98社中およそ80社が赤字になっている。本研究では千葉県の小湊鉄道を研究対象として、ローカル鉄道とその周辺地域の観光産業の活性化の方法を検討することを目的とした。研究方法として、小湊鉄道の利用者にアンケート調査を実施するとともに、職員にメールで質問し回答を得た。アンケートの結果は、小湊鉄道の利用者は多くが首都圏に在住しており、公共交通機関での訪問が大部分だった。また、小湊鉄道の魅力は「昭和レトロ感」と答えた人が多かった。職員によると、地元住民とは季節によって様々なイベントなどで関わっており、沿線住民に関心を持ってもらうことがローカル鉄道を廃線にしないためには大切とのことだった。この結果から、活性化の方法として、各駅でのレンタサイクルの実施や、ドラマやアニメのロケ地として誘致することで小湊鉄道の利用を促進することを検討した。
伊藤咲和・原口結月・後藤優依・丸山英泰(川和高校)
都筑区を対象に保育所の充実や環境面に焦点を当てて考察した。都筑区の選択理由は、年少人口割合が横浜市で最も大きく、子育ての街と呼ばれているからである。子育てしやすい=保育所が多いという仮説を基に、都筑区と他区の保育所数を地図上で数え市のHPからも検索した。結果は都筑区の保育所が最も多く、企業や地域と連携する保育所が多い傾向にあった。この結果を踏まえ、都筑区で保育所が増えた背景について、区役所で話を聞く調査を行った。32年前の区の誕生と都市開発を機に、若者が定住して家庭を持ったことがその後の子供の増加に繋がり、それに合わせて保育所を充実させたとのことだった。このことから、子供が増えたことによって、地域と連携する保育所の数が増えていったことが明らかになった。また、調査の中で都筑区では緑道の整備や商業施設の充実、地域交流など、子育てのしやすさに繋がるパイプが多くあると明らかになった。
駒形琉花(千葉県立船橋高校)
本研究では、習志野市奏の杜に見られる畑の溝や水路跡に着目し、航空写真、地理院地図、今昔マップ、下水道台帳、史料などを用いた調査や市役所、企業局へのヒアリングを行った。その結果、かつてこの地には「庄司ヶ池」という池があり、その水を東京湾に流す排水施設が計画、整備されていたことが明らかになった。この排水施設は、池を横断する水路、高台地下に埋設された鉄筋コンクリート管、低地の溝によって構成されていた。地図を用いた検証から史料との高い整合性が確認でき、現在は分断されている畑の溝と水路跡がもとは1つの水路であり池を横断していたことや、鉄筋コンクリート管、低地の溝の位置を考察することができた。現在、排水施設は下水道に組み込まれ、街の排水機能を担っている。市が提供するハザードマップによれば、かつて池や湿地が存在した場所には液状化の可能性があるとされており、災害リスクについては今後検証が必要である。
武安輝一郎
本研究の目的は、公共交通不便地域重点地区に指定されている「千葉県船橋市松が丘地区」を研究対象地域として、交通不便者の減少に向けた地域の特性に沿う交通サービスの提言である。具体的には、アンケートに基づく分析によって導かれた「地区全域から住民の利用が多い商業施設までの交通システムの整備案」を基に、GISによる人口分布の可視化や道路状況を鑑みたうえで、地区内を網羅できる最適ルート案および停留所案を検討した。さらに、アンケート調査を基にした推定利用者の算出、使用車両の選定、行政へのヒアリングに基づく運行経費の算出を行い、実現した際の利用促進方策の検討も同時に行う。地域の特性と様々な主体との対話を踏まえ、既存の路線を効果的に活用する提言を目指した本研究は、他の公共交通不便地域解消に向けた1つの参考事例になり得ると考える。
大槻咲瑛・佐々木美晴・野口桃花(お茶の水女子大学附属高等学校)
本研究は、首都圏においてリスクが高い内水犯濫に対し、住民による「自助」と行政による「公助」を組み合わせた対策の有効性を検討することを目的とする。内水氾濫被害が大きく想定される埼玉県越谷市新方川流域の弥栄町・弥十郎地区を対象とし、GIS を用いて解析した。「各家庭で雨水を貯留すれば内水氾濫被害を低減できるのではないか」という仮説の下、内水ハザードマップに基づき床上浸水量を概算した。次に、メッシュ分析を行い、より正確な床上浸水量と必要な貯留世帯数を算出した。解析の結果、総床上浸水量112,000㎥のうち、周辺地域を含む45,000世帯の雨水貯水により、約40%にあたる45,000㎥を抑制可能であるという結果が得られた。貯留しきれない約70,000㎥の水量は、小規模な調節池の整備により補完できると考察した。以上より、内水氾濫に対しては家庭での分散型貯留と行政による施設整備を併せた「流域治水」の視点が極めて効果的であると結論づけた。
當原心美・川節桃香・川口真臣・鈴木乃衣・安田一覚(鹿児島県立大島高等学校)
空き家はさまざまな社会問題の総体であると同時に、地域特有の事情が複雑に絡み合う課題である。本研究は奄美市・龍郷町を対象に、都市・農村・中間地域における地理的な違いの実態解明と対策を目的とした。総務省統計局のデータを活用した分析、現地調査、約20 団体へのヒアリングを実施した。その結果、都市部では特定の住宅の老朽化が進行しており、問題が顕在化しにくいことが判明した。また、中間地域では良質な物件が存在するにもかかわらず、所有者の心理的不安により市場に出ていない事例が多いことが明らかとなった。このように地域ごとに課題が異なるため、それぞれの特性に応じた対策が必要であると考察した。中間地域の解決策としては、空き家所有者の貸借に対する不安を軽減するため、短期間の貸出を可能とし、信頼性の高い公務員を対象とした貸出制度を提案する。現在は実装に向けて、公的機関へのヒアリング調査および活動の広報を行っている。
浅野孝明・濱谷奈緒(京都教育大学附属高等学校)
発電所(蹴上,墨染,美浜)の見学を通して、電気や発電所を身近に感じた一方、エネルギー問題が自分事として捉えにくい背景には、発電所との心理的距離があるのではないかと考えた。そこで、エネルギー問題を身近に感じるためのアプローチとして、近畿地方に電気を供給する主な発電所を地図化し、発電所の紹介動画、発電量ランキングを作成した。本研究では、日常で使用する電気の発電源や発電方法、発電所名に関する知識の提示が、エネルギー問題への意識に与える影響を明らかにすることを目的として、アンケート調査を実施し(高校生145名)、情報提示前後の意識を分析した。その結果、意識の向上が見られない生徒も多く、関心の高い生徒の多くは小中学校での探究活動を契機としていた。以上より、知識提示のみでは不十分であると考え、発電や電力需給を疑似体験できる小学生向けエネルギーゲームを開発し、体験的学習が意識形成に与える影響を検証した。
井戸千沙都(宮城県仙台二華高等学校)
本研究は、現代カンボジア社会におけるアニミズム信仰の象徴である金色の祠に着目し、その形態的変化と空間的分布を、地理的・経済的視点から考察したものである。2025年12月にシェムリアップ郊外の道路沿い、農村、およびトンレサップ湖水上集落をフィールドとし、GISによる分布調査と農村における世帯の聞き取り調査を行った。調査の結果、道路網の発達した地域では既製品の祠の流入による「標準化」が見られる一方で、農村部では経済的困窮が設置そのものや、形態に影響していた。また、水上集落では設置する土地がないという物理的制約に対し、柱を利用するという環境適応的な形態維持が確認された。これらの結果から、祠の標準化は信仰の普及を促す一方、経済的・地理的制約のもとで多様な適応が生じていることが明らかとなった。
西田 涼・澤田 結太・徳永 美香・中井 亮太・福田 結梨・大森 一輝・佐藤 伽風・段中 大将・井上 その・正部 愛莉 (箕面自由学園高等学校)
大阪府北部の住宅地に見られる不自然な道路の湾曲や利用実態の不明な空閑地に着目し、これらが戦時中の「弾丸列車」計画に由来すると仮説を立てた。同計画は満州事変以降、東海道本線の輸送力逼迫を背景に、大陸連絡を目指した標準軌新線として建設が進められたが、戦況悪化により頓挫した未成線である。本研究では、GISを用いて1947年米軍撮影空中写真をジオリファレンスし、現代地図上に当時の計画線を復原した。さらに現地踏査を実施した結果、神崎川における橋脚跡や三角形状の家屋群など、計画線と一致する遺構を確認した。これらは戦時中の用地買収が、戦後の東海道新幹線建設や現代の街区形成に「経路依存性」をもたらしている証拠である。本手法により、都市景観に埋没した戦争の記憶を可視化し、地理学的アプローチによる地域分析の有効性を明らかにしたい。
福嶋 凜大(常磐大学高等学校)
2014年に文部科学省より報告された『今後の英語教育の改善・充実方策についてグローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言』では、「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」の4技能の育成を目指し、各自治体では、それに対応すべく様々な工夫を凝らした英語教育の支援が行われるようになった。私の地元、茨城県笠間市では、2015年から『ABC笠間プロジェクト』のもと、英語検定の助成事業や英語指導助手の配置、異文化交流事業などを行っている。英語検定助成事業により、生徒に一定レベルの英語力が身についていることが分かった。英検助成事業は多くの自治体で行われている。本研究では英検助成事業によって、茨城県内の自治体で英語力にどのような影響が生じているのかを比較し、英語教育のあり方について検討した。
河内千桜・笹原裕美子・田中彩音・浦邉寛之・坂田萌絵(江戸川学園取手高校)
近年、ダムカード等の公共配布カードが人気を集めている。これはダムなどの施設や設備の認知や理解を目的とした無料のコレクションカードであり、それらの写真と解説文により構成されている。しかしながら、これらは自治体や公共施設によって発行されるため写真や解説文にはそれらの主張を内在していることが予測される。本研究では複数の公共配布カードを比較し、写真や解説文の相違点を調査する。その上でカードに込められた発行者の主張を読み解く。調査の結果、黒部ダムのダムカードは観光放水をしている写真を使用しており、観光客の抱く黒部ダムのイメージを強調していた。また、解説文には破砕帯との格闘を描いた映画への言及がありながらも、実際の工事における犠牲者への言及が見られない。以上のことからダムカードは、ダムの持つ事故や環境破壊等の暗いイメージを払拭し、明るいイメージをアピールする装置として機能していると考えられる。
阿部蓮・阿瀨遥陽・牧祐惺(江戸川学園取手高校)
つくば霞ケ浦りんりんロードは茨城県南部に位置するサイクリングロードであり、茨城県は観光計画において重要な観光資源として位置付けている。一方で観光産業には必ずしも地域に貢献しているとは言えない現状がある。本研究では、茨城県つくば市の旧筑波駅周辺地域を対象とする。この地域は筑波山麓門前町からは3kmほど離れているが、近年はカフェやブルワリーなど新たな店舗の開業が見られる。実地調査としてこれらの店舗や関係者及び利用者への聞き取り調査を行い、立地特性や成立過程におけるりんりんロードとの関連性を明らかにする。また、それらの店舗がオルデンバーグの提唱するサードプレイス概念にもとづき、サイクリストだけでなく地域住民が過ごす場として機能しているか調査する。そのうえで、これらの店舗がシビックプライドの形成に果たす役割を明らかにし、りんりんロードが周辺地域のサードプレイス化および地域振興に果たす役割を考察する。
鈴木啓太郎(早稲田大学系属早稲田実業学校)
沖縄県国頭郡今帰仁村は、豊かな自然と歴史文化を有しながら名護市へのアクセスが良く、毎年400人前後も県外・県内他地域から転入する、地域活性化の高いポテンシャルをもつ村である。しかし現実には、自然減と社会微減による人口減少が続き、高齢化率は約38%に達している。本研究では、今帰仁村の転入・転出パターンと移住希望者のニーズに着目し、移住しやすい環境を整える対策を提言することを目的とした。文献調査と聞き取り調査の結果、生活機能の分散による車依存、移住希望者の医療・福祉・就業への不安、地域の人間関係などへの懸念が移住の障壁となっていることが明らかとなった。そこで、「行政主体の移住体験住宅や条件付き支援金制度の導入」と「生活機能を集約したコンパクトな街づくり」を組み合わせることで、人口流入促進、流出抑制、将来世代の定着を実現することができると考察した。
佐伯杏奈・海老根理咲・鳥居エマ(江戸川学園取手高校)
私たちは離島医療の実態調査と改善策の検討を目的に調査を行った。第一に本校医科コースに在籍する中学3年生から高校2年生の生徒249名にアンケート調査を行い、医師志望の中高生が離島医療に抱く関心度を調査した。生徒の半数以上が離島医療に関心を示した一方、離島勤務に抵抗がある生徒は8割以上を占めた。第二に東京都、小豆島、壱岐島、沖縄県で離島医療に取り組む病院および医療機構に、医療提供体制についてのヒアリング調査を行った。結果、地域独自の医療情報ネットワークで、本島の病院と密接に連携し、緊急性を疑う画像の遠隔読影を行っていることがわかった。また、人的・物的医療資源の限界や、後継者不足が課題だが、医師側には総合医療が学べ、多様な症例を経験できるという利点があった。以上より医療人材・設備の不足が課題であり、特に人材不足については離島医療の魅力を伝え、関心度を高めることがその解決に寄与すると考えた。
北條文隆(早稲田大学系属早稲田実業学校)
この研究では、観光地化を進める沖縄県中頭郡読谷村において、交通アクセスと観光施設の課題を明らかにし、「わざわざ訪れる必然性」を高めることで観光客の満足度を上げる解決策を提言した。RESASを用い村内のバス路線の役割を分析した結果、主目的は住民利用で、観光客の移動手段として十分に機能していないことが明らかになった。この結果と、資料調査で得られた観光客の訪問先は限定的で世界遺産や焼き物地域などの伝統資源が十分に活用できていないという現状、および聴き取り調査から、交通手段としてのシェアサイクルの活用や各施設を「踏み込んだ体験型」にすることが読谷村の観光業の発展につながると考察した。このように地域が主体的に歴史とその価値を再評価し観光客の受容環境を整えることは、この村のみにとどまらず、地域活性化やオーバーツーリズムの解消に貢献して、向かうべき日本の観光業のあり方を提示することができるだろう。
三宅里菜・田村優芽・平原美玖(岡山県立玉野高等学校)
本研究は岡山県玉野市における要配慮者利用施設の避難確保計画に関する現状と課題を明らかにすることを目的とする。「玉野市地域防災計画」に掲載されている浸水想定区域・土砂災害警戒区域内の要配慮者利用施設数は44であり、そのうち高齢者関係施設数は21を占める。夜間時の災害対応を比較するために、浸水想定区域内にある認知症対応型共同生活介護事業所、土砂災害警戒区域内にある介護老人福祉施設に加え、周囲が浸水想定区域内にある介護老人福祉施設において聞き取り調査を行った。浸水想定区域の施設では、立ち退き避難を想定しておらず、屋内安全確保を想定した避難計画を立てていた。夜間の職員数は60名定員の介護老人福祉施設では3人、18名定員の認知症対応型共同生活介護事業所は2人と少なく、発災時の対応に不安がある。また、認知症などの症状に対応した避難訓練の実施についても課題があることがわかった。
白上侑那・山本依央哩(高知県立高知国際高等学校)
高知県庁の観光課の方へのインタビューにより、高知県が「どっぷり高知旅」を通して観光業を推進していることが分かった。それをきっかけに、本研究では、県の観光政策はどの程度効果があるのかを明らかにすることを目的として、高知龍馬空港で、観光客58名に対して紙面によるアンケート調査を行った。アンケートのデータ分析より、空港利用者の基本属性とそれぞれの方がどこに観光しているか明らかにしようとした。分析からは、若年層は高知県の中心部に集まる傾向があり、高年齢層は郡部地域への観光を行っている傾向や、ビジネス目的で高知へ来た人は高知市中心部でついでに観光していく、旅行目的で来た人の方が郡部地域への観光を行っている傾向が見えてきた。ただし本研究では、「どっぷり高知旅」の知名度や、訪れる観光地での活動を知ることができなかったため、今後はそれらについて再度調査、分析しようと考えている。
森脇慧(早稲田大学系属早稲田実業学校)
本研究の目的は、沖縄の地域格差の課題を踏まえ、二大都市計画の可能性を検討することである。資料調査と聴き取り調査の結果、北部の中心都市である名護市では人口増加しているにも関わらず、那覇市への若者の流出や商業の縮小が見られ、地域の衰退が進んでいること、発展による環境破壊を心配する現地住民の声があることが明らかとなった。地域衰退の1番の要因は東京や大阪などの大都市からのアクセスが悪いことにあると考えられるが、名護市ではジャングリア沖縄等、新たな観光拠点の整備が進行しており、沖縄第二の都市になるポテンシャルは十分にある。そこで、環境破壊を最小限にとどめるため、国道沿いに鉄道を整備し、市の既存の観光施設や大学、魅力を最大限生かすことで、鉄道費用便益比を1.0以上にする計画を構想した。この計画により、名護市が沖縄県の観光収入の1割近くを担う大都市に発展でき、沖縄県の更なる発展に繋がると考える。
平野清暁(獨協埼玉高等学校)
本研究は、埼玉県東部を流れ東京湾に注ぐ、中川及び綾瀬川流域の旧河道における土地利用について考察したものである。今回の調査対象地域は、埼玉県越谷市と同県春日部市内にある8箇所とした。これらの地域の選定は、地理院地図の治水地形分類図を参照した。調査方法は、今昔マップの航空写真を用いた年代別の変化及び現地調査である。さらに、地理院地図の計測ツールを用いて、各旧河道内の住宅、田畑、公園などの敷地面積及びその割合を算出した。その結果、東武伊勢崎線と野田線の駅から近い地域では、旧河道の半分以上が住宅に利用されていた一方、同線の駅から遠い地域では、田畑や空き地などになっていた。しかし、同線のある駅に隣接する旧河道では、未だに住宅の割合が半分以下となっていた。
高橋佳のこ・梅澤美羽・川名紗楓・北見優里愛・世良優奈・髙田祐希・渡部古都実(品川女子学院)
校内で防災意識を高めることを目的とした活動を行っていることで,出身地によって防災意識が異なるのではないかと疑問を感じた。そこで,地域ごとに防災意識の温度差を測ることを研究の目的として,防災士の取得率に着目した。本研究を通じて,各市区町村または県ごとの防災士取得率と人口,各自治体の防災に関わる活動を比較し,主な市区町村において「防災士受験助成」「認定講習の有無」「防災講座の有無」について調査を行った。結果的に,人口あたりの防災士取得率が0.8%を上回っている県の多くは,防災士の受験助成や防災に関する独自の講座を実施しているなど,行政の熱心さが防災士の取得率を高める結果になっていることが明らかとなった。
伊藤拓生(駒場東邦高等学校)
本研究では、近年一部で検討されている江戸城天守の再建計画を仮定して、都市への影響を予測的に検討する。はじめにGoogle Mapsにおけるレビュー数から、現状では皇居や東京駅が都市の中心として外から人を集めている一方、他地域は人の流れが固定的であることを確認した。次に、QGIS上でPLATEAUのデータを用いて大手町を3Dで再現し、江戸城天守の可視領域を示した。この可視領域のうち、歩行者から見えやすい地点を現地調査により明らかにし、それらの地点で高層ビルの隙間から天守が見える構造を解析した。その結果、一部の地点で天守幅が隙間幅に対し約7割と大きな割合を占め、高層ビルにより他の視界が制限されることにより、新たなヴィスタが演出され、今までオフィス街として成立していた大手町に別の一面が生まれることを示唆した。しかし、大手町が持つ閉鎖的空間の特徴により、この変化は他地域に波及せず、天守再建の影響は限定的であることも同時に明らかにした。
千葉真綾(宮城県仙台二華高等学校)
貧困の程度は一般にその世帯の収入額で語られる場合が多い。しかし、カンボジアの農村部では、農業や日雇い労働への依存度が高く収入が安定していないため、収入額だけではその貧困の程度を十分に把握できない可能性がある。そこで本研究では、収入額だけによらない新たな貧困の指標として各家庭の家電の所持状況に着目した。約90軒の家庭を対象に現地でインタビュー調査を行った結果を用いて、スマートフォンや冷蔵庫などの家電製品を点数化することで、各家庭の家電の所持状況を点数化した「家電得点」を算出した。その結果、収入額と家電得点の間には一定の関係が見られたものの強い相関は確認できなかった。一方で、家電得点が6点以下である家庭は生活必需家電さえも所持していないことを示し、優先的な支援を必要としていることが示唆された。
西山瑛士(洛南高等学校)
東日本大震災で犠牲となった方のうち災害関連死と認定された方は約15%であった。そしてその後の自然災害でも災害関連死の割合は減っていない。防災や減災という言葉が世間一般に広まっている中で、災害関連死で犠牲となる方の割合も減らせるのではないか。そこで本研究では、私の通っている高校と中学校の生徒にアンケートを実施した。すると、過去に被災した経験を持つ人は少なかったにも関わらず、災害関連死という言葉自体を聞いたことのある人は多かった。ただ、災害による生活環境の変化によって亡くなる方が一定数いる事実を知っている人は少なく、このままでは過去の災害に比べて二次被害が減少する見込みは少ないと感じた。この研究によって、今の若い世代の人により実践的な災害時の対応を知ってもらうかが課題であることがわかった。そのため、教育の場において災害時の避難所での生活などをより詳しく伝えていくべきだと提案する。
石坂遥瞭(駒場東邦高等学校)
渋谷駅は極めて複雑な地下空間を有している。本研究は、外国人観光客への聞き取り調査を通して、渋谷駅地下空間の複雑性がどのように利用者に影響を与えているかを明らかにすることを目的とした。特に、地下空間からハチ公方面への導線に焦点を当て、アンケート調査および観光案内所における聞き取り調査を実施した。その結果、多くの利用者が案内表示のみでは進行方向を判断できず、Google Mapsに依存して移動している実態が確認された。また、地下空間では地上景観が見えないため、出口選択の誤りが生じやすく、結果として目的地から離れた地点に出てしまう事例も多く見られた。これらの調査結果から、渋谷駅地下空間では空間の複雑性と案内情報との間にずれが存在することが明らかとなった。以上を踏まえ、本研究では、地上への出口付近に地上景観の写真を提示することで、地下空間における視覚情報を補完することが、この問題の解決につながると考察した。
片岡侑樹(洛南高等学校)
本研究では、原子力発電所の事故を契機に再生可能エネルギー導入の先駆けとなっている福島県における実際の導入状況と発電所の空間的分布、そして課題を分析し、日本全体における再生可能エネルギーの主力電源化による脱炭素社会の実現可能性を検証した。長い海岸線を生かした洋上風力発電、猪苗代湖の豊富な水を生かした水力発電など、震災復興と脱炭素社会実現のために同県では、多様な再生可能エネルギーの導入が進められ、既に2023年度には年間の再生可能エネルギー導入量が150.29億kWhとなり、県内の電力消費量を上回った。研究の結果、福島県と似た地理的特徴を持つ他の地域でも再生可能エネルギーの主力電源化は可能だと考えられるが、広大な用地確保に伴う環境破壊や、不安定な電力供給などが課題として挙げられるため、発電所建設に際しては慎重な判断が必要である。
西部 俊(埼玉県立浦和高等学校)
本研究の目的は、今日の公共交通機関、特に一般路線バスについて事業の状況を把握した上で、その課題を明らかにすることである。フィールドは規模の近い埼玉県さいたま市と神奈川県川崎市を選定し、両市の比較を行った。一般路線バス停留所の位置や数については国土数値情報や両市のホームページから情報を入手し、国勢調査のデータも活用した。両市とも停留所の総数はほぼ同じであり、停留所から半径500mの範囲に含まれるエリアは市の面積の7割程度をカバーするものになっている。また、鉄道駅や一般路線バス停留所から離れた「交通空白地帯」となり得る地域においては、コミュニティバスの運行が行われている。今後の生産年齢人口の減少を考慮すると、バス便数の減少と「交通弱者」の増加に伴うバス需要の増大が予想される。コミュニティバスやシェアライドの充実、技術革新による自動運転技術の推進などが解決策として求められると考えられる。
石原 大暉(埼玉県立浦和高等学校)
本研究の目的は、公衆トイレの設置状況から地域ごとの特徴を捉えることである。非競合性と非排除性とを持つ公共財である公衆トイレに関する地理学的な研究は蓄積が少なく、意義は大きいと思われる。フィールドは、ある程度の人口規模を持ち、公衆トイレの設置状況に地域差が見られる可能性が高いと思われる埼玉県さいたま市とし、市内に設置されている400余りの公衆トイレについて、行政区ごとに標本を抽出し調査を行った。それぞれの公衆トイレの持つ特徴を5つの視点から評価し、行政区ごとにそれらの比較を行った。また、昼間人口あたりの公衆トイレ設置数、公衆トイレ周辺の土地利用の状況ついても比較した。結果として、いくつかの行政区ではこれらの特徴について有意差が確認された。そのような地域においては周辺の土地利用にも相違が見られた。以上より、公衆トイレの設置のあり方については、土地利用から最適な設計ができるのではないかと考えられる。
宮丸莉子・東京学芸大学附属国際中等教育学校
狭山茶は埼玉県入間市周辺で生産されている日本茶で、静岡茶や宇治茶と並ぶ日本三大銘茶である。しかし、近年若者において狭山茶の認知度が低迷しているため、本研究では若者における狭山茶の認知度を向上させる方策を明らかにすることを目的とした。はじめに、日本三大銘茶である静岡茶、宇治茶と狭山茶を比較し、狭山茶の強みや課題を整理した。次に、近年若者の間で流行している事象とその背景を分析し、現代の若者が抱えているインサイトを明らかにした。その結果、若者に狭山茶を訴求するためには「非日常性」「視覚的魅力」「日常適応性」などが重要であると明らかになった。これらの結果を踏まえ、「レトロ体験」「デザイン性の高いパッケージ」「狭山茶を使用したカフェドリンク」という3つの有効なプロモーション方法を導き出した。これらは近年の流行に基づいているため、狭山茶の魅力を最大限、若者にアピールできる可能性が高いと考えている。
豊田侑生、金子喜和、田口紗凪、松本咲(宮城県仙台二華高等学校)
本研究は、人びとの生活にとって必需品ともいえるトイレに着目し、カンボジア、タイ、ベトナムの農村部における現状を、本校で約10年間に渡って実施しているフィールドワークの調査結果をもとに明らかにし、その改善の可能性について検討したものである。現地では手桶で水を汲み、その水で排泄物を勢いよく流す形式のトイレがよく見られるが、カンボジアのアンコール遺跡周辺では、遺跡保護の観点から無許可で1.5m以上の穴を地面に掘ることが禁止されている。そのため、この地域ではトイレの設置率が他地域よりも低かった。また、世帯でのインタビューの結果からは、下水については地下のタンクに貯めており、多くの世帯が汲み取りをしていないため水分は地面に浸透している可能性が明らかになった。そこでこれらを解決するために、穴を掘らない、水を使わないトイレの設置が実現可能か検討した。
兼吉舞衣(市川高校)
千葉県北西部に位置する浦安市は人口戦略会議(2024)により、人口増加を社会増加に依存する「ブラックホール型自治体」に分類されている。本研究ではこれが課題であるか強みであるかを明らかにすることを目的とした。分析のために東京駅から半径15km圏内の自治体と、千葉県印西市、流山市、千葉市の33自治体を対象として、地図を用いた比較分析、クラスター分析、また子育て政策の比較を行った。結果、ブラックホール型自治体は都心西側郊外に集中しており、クラスター分析において浦安市は東京都文京区、渋谷区、目黒区と最も近い群となった。市区町村の群ごとに子育て政策の差は見られなかったが、これとは別に東京都は独自に支援を行っていた。以上より、浦安市は他の東京都の自治体とは遜色ない特徴を持っており子育て政策も充実しているが、都道府県単位では子育て政策の差があり、これが出生率に影響していると考えられることがわかった。
吉住知紘・東京学芸大学附属国際中等教育学校
現在、日本には400万人近い外国人が生活をしているが、特に東京都新宿区は総人口に占める外国人割合が高く、外国人が集まりやすい地域となっている。本研究では東京都新宿区を対象地域として、歴史的背景や統計データから外国人が集まりやすい要因を明らかにし、外国人との共生に向けた方策を考察することを目的とする。分析・考察にあたっては、出入国在留管理庁や東京都、新宿区が提供する統計データを活用するとともに、外国人の生活支援を行う企業や公的機関など、外国人との共生に関わる複数の担い手にインタビュー調査を実施した。新宿区には日本語学校や外国人が居住可能な住居が集積し、生活を支援する各種サービスも充実していることが、外国人人口の増加につながっていることが明らかになった。外国人との共生を進めていく上で解決すべき課題などを整理し、行政、企業、地域住民のそれぞれの立場から取り組むべき方策を提案したい。
岡部美月(市川高校)
市川高等学校の防災避難経路についてセルオートマトンを用いて検証した。使用した経路は、校舎の吹き抜けの階段、高校棟のA階段とB階段である。これら3つの階段に注目して高校3学年の避難経路をクラス単位で場合分けし、それぞれシミュレーションを行った。セルオートマトンでは時間経過を表す縦のセルを数え、目的地までに何セル必要かを示したステップ数を算出し考察した。結果、各学年が1列になって避難するよりも各クラスが最寄りの階段を使用して避難する方が高校全体で早く避難することができると考えられる。また、吹き抜けの階段を使用する経路は避難に時間がかかる傾向にあるが高校棟B階段を使用する経路は比較的早く避難できることがわかったため、各クラスが最寄りの階段を使用した上で、吹き抜けの階段を使用するクラス数を少なく、高校棟B階段を使用するクラスを多く設定することで効率よく避難できるわかった。
丸川晴南(豊島岡女子学園高等学校)
日本の神社は自然災害の被害を避けるように立地しているといわれている。宗教施設におけるこのような立地傾向は日本に限られるのだろうか。本研究では、他国の自然災害が多い地域においても宗教施設の立地がその被害と関係を持つのかを明らかにした。具体例として、洪水が頻発し、また多くのモスクがみられるインドネシアのジャカルタ特別州北部を対象に、洪水被害との関係におけるモスクの立地傾向を検証した。研究方法は、モスクの分布図を用いた立地分析と中央ジャカルタ行政市のモスクへの聞き取り調査である。その結果、まずその立地は概ね均等であったが、これは一般的にモスクが地域社会に密着して建設されているとされるためだと考えられる。その上で、洪水リスクのなかでも少なくとも河川からの距離を考慮して建設されているモスクが一定数あることがわかった。以上より、日本国外においても宗教施設の立地は自然災害と関係を持ち得ると考えられる。
森みなみ・阿萬暖々果・押川隼人・丸春緋・綟川湧大(宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校)
本研究は,熊本-延岡間の九州横断軸における移動ルートの変遷を可視化し,九州中央道の整備が中間地点の五ヶ瀬町や五ヶ瀬中等教育学校に与える影響を分析することを目的とする。江戸時代の日向往還から現代の高速道路に至る各時代のルートを対象に,GISを用いた到達圏解析(デジタル)に加え,聞き取り調査(リアル)に基づく「2時間の壁」を考慮した心理的アクセシビリティの分析を試みた。結果,江戸時代と現代の高速道路におけるルート選定に類似性が見出された他,道路整備により本校からの2時間圏が過去30年間で拡大していることが明らかとなった。こうした時間距離の短縮は,救急搬送時間の改善や道の駅構想など,生活圏の変容を促すだけでなく,少子化下における広域的な生徒募集や関係人口の創出に寄与する。本研究は,五ヶ瀬町が九州の交流拠点としての機能を担う可能性を示唆し,中山間地域の活性化に向けた基礎資料となり得るものである。
津江梨之介・眞﨑新路・興梠祐玖・児玉有希乃・谷﨑美佐紀・前原惇之介(宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校)
本研究は,世界農業遺産「高千穂郷・椎葉山地域」の景観を支える「山腹用水路」の特異性を,先行研究を深化させ,土地利用の垂直的構造から検証することを目的とする。宮崎大学農学部竹下准教授との協働により,阿蘇山の火砕流台地が広がる五ヶ瀬町三ヶ所地区を対象として,GISを用いた縦断面解析(デジタル)と,現地調査(リアル)を組み合わせ,地質・傾斜と土地利用の関係性を精査した。その結果,山腹用水路が山地と火砕流台地の境界を等高線に沿って走ることで,本来水が得にくい台地上に農地や宅地が配置される土地利用の空間的秩序を明らかにした。一方で,公的データ(筆ポリゴン)と現地の耕作状況の乖離を浮き彫りにし,デジタル解析と実地調査を併用する有効性を実証した。本研究は,地形に適応した景観構造を科学的に解明し,先人の知恵と維持管理の情熱に支えられた「生きた価値」を次世代へ継承する意義を強調するものである。
田上葵・大塚彩穂衣・樋口來実・長田雄太(宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校)/藤島龍・川﨑柚華・根井愛祐美・岩下泰己・山河佑仁(宮崎県立日南高等学校)
本研究は,先端技術(デジタル)と現地調査(リアル)を融合させ,宮崎県沿岸部の地震・津波災害から命を守る実践的研究である。今年度は五ヶ瀬中等と日南高校の共同研究として,知見の「普及」に重点を置き,地殻活動監視ダッシュボードの活用や防災士資格取得により専門性を高めつつ,青島での夜間・夏季・冬季訓練や串間での福島高校との協働調査等,活動を県内広域に広げた。聞き取り調査の結果,日向灘地震から1年が経過し,記憶の薄れによる防災意識の低下が顕著な実態が浮き彫りとなった。一方,宮崎市への提言により看板改善等を含む防災予算約7,000万円が計上されたことは,中高生主体の多角的な分析が行政施策に具体的に反映された成果である。本研究は,各季節や時間帯の避難課題を提示するとともに,受動的から能動的防災への転換を促し,学校や地域の垣根を越えて防災を「自分事」として捉え直す共創社会の構築に寄与するものである。
吉田八重子(東京都立三鷹中等教育学校)
本研究は、東京都杉並区西荻窪駅周辺地域における“西荻窪らしさ”と呼べる魅力を再検討することを目的として行った。調査は三つの手法で実施した。第一に、西荻窪地域の世帯構成を調べ、杉並区および東京都全体と比較した。第二に、杉並区役所にてまちづくりおよび再開発に関するインタビューを行った。第三に、区主体の「(仮称)デザイン会議」における議事録を基に、住民の考える長所・短所をテキストマイニングによって抽出した。その結果、再開発には賛否両論あり、まちづくりに対し多様な意見が出されている現状が明らかになった。西荻窪は夫婦のみ世帯や高齢者世帯が比較的多く、住民は商店街や緑地、街並みを魅力として評価する一方、道路や自転車など交通環境の改善を求めていることが分かった。以上より、西荻窪らしさとは、歩いていて心地よく、多世代が共存できる生活環境にあると考えられる。
加藤 詩織・相澤 日向・根岸 陽向・山形 菜々美(成蹊高等学校)
本研究では振動水柱型の波力発電の設置適地について調査した。構造上台風に強く、発電能力が安定し高耐久性で設置場所の制約が少ない方式であることから、日本沿岸への設置に向いている。この方式は、波の上下運動による圧力で機械内部のタービンを回して発電する。波エネルギーPは波高Hの二乗と周期Tをかけて計算されるため、波高が高い場所ほど発電量が多くなる。そこで国土交通省港湾局「ナウファス」掲載の波高と周期のデータから波エネルギーPを算出し、その値が大きい所を発電装置の設置適地とした。沿岸部で最も波エネルギーが大きいのは平良港(宮古島)で、石垣、名瀬、那覇、久慈、留萌、むつ小川原が続いた。しかし大型台風の接近頻度が高い地域は危険性が高いと判断し、九州地方や南西諸島を設置適地から除外した。その結果、振動水柱型波力発電装置の設置適地は、東北地方の沿岸海域、福井県付近の日本海側と考えた。