2023年秋季学術大会 高校生ポスターセッション(オンライン)発表タイトルおよび要旨

発表番号,発表タイトル,発表者(学校名),発表要旨

01 秋田高等学校周辺の土砂災害対策のための提案
  佐藤光翼・大山智也・中村皇介・島田琢磨(秋田県立秋田高等学校)

(発表要旨)近年、日本各地で豪雨の発生が相次ぎ、それに伴う土砂災害の発生も急激に増加している。実際、秋田県でも令和5年7月に記録的豪雨が発生し、土砂災害が多数発生した。私たちの研究において調査対象とするのは、私たちが最もよく利用する秋田県立秋田高等学校の敷地とその周辺であり、その一部は土砂災害ハザードマップで危険区域に指定されている。そこで、本研究は本校周辺における土砂災害の危険性のレベルを把握し、今後の対策につなげることを目的とした。主に地質図と等高線を組み合わせることにより地質断面図を作成した。それを参考に地下構造を調べ、地質と地形の観点から分析を行った。その結果、調査対象の地質は脆く粘土化しやすい暗灰色泥岩の地層の上に、安定した地盤である更新世に形成された砂岩が真上に乗っているということがわかり、今回の発表では、これらを踏まえた土砂災害対策を提案する。

02 除雪地域の限定による地域安定化の提案 –山形県西川町を事例に–
  鷲 洸介・佐藤光之輔(山形県立東桜学館高等学校)

(発表要旨)山形県西川町は日本有数の豪雪地帯であり、年平均60〜180cmほどの雪が積もり、冬季の除雪費が大きな負担となっている。また、西川町は人口が減少傾向のある地域でもあり、昭和29年の15,754人をピークに、令和5年では4,710人と大幅な人口減少が発生している。同時に、急激な人口減少に伴う様々な問題が発生している。そこで、本研究では、特に冬季の除雪問題に焦点を当てて研究を行った。人口規模に合わせた効率的な除雪の方法がないかを模索し提案することで、課題解決の可能性を考察した。研究方法はフィールドワークで集めた写真やインタビューをもとに分析を進めた。また、西川町では2024年1月から全世帯へタブレット端末の配布を予定しており、実際に除雪地域を設定する際には住民の積極的なまちづくりへの参画が必要であるため、タブレット端末を活用し、住民がまちづくりに参加できる機会も同時に提案していきたい。

03 栃木県那須塩原市三島地区の街路網の謎 ~開拓者たちの足跡~
  藤田 優月(栃木県立矢板東高等学校)

(発表要旨)栃木県那須塩原市三島地区には碁盤目状の街路網を持つ地域がある。本研究では,三島地区の住宅街や用水路,博物館へのフィールドワークや,三島通庸の功績や那須野が原の歴史に関する文献調査を通じ,その理由について考察した。三島地区には,明治時代にのちの栃木県令となる三島通庸が肇耕社を設立し,開墾・植林・牧畜などの事業を幅広く行ってきた。また,株主に分配された土地をもとに三島農場が設立され,移住民と小作契約が結ばれた。移住民の定住化を図るために,アメリカ合衆国の開拓の際のタウンシップ制のような都市計画が行われたことで碁盤目状の街路網となったことがわかった。しかし,那須野が原扇状地の扇央に位置し乏水地である三島地区でどのように農業用水を獲得していたのかという問題があった。これについては,那須開墾社の矢板武と印南丈作が中心となって,那須疏水とよばれる水路を開削することで解決したことがわかった。

04 矢板宿の今昔 ~現代に残る屋号~
  河野邉 晶(栃木県立矢板東高等学校)

(発表要旨)栃木県矢板市を流れる河川に架かる橋の名称の由来を調査していた際に出会った「宿屋橋」という橋の存在から,付近に宿場町があったのではないかとの仮説を立て,その存在および様相を明らかにした。新旧地形図の比較と文献調査により,現在の矢板市の国道461号線沿いにある集落がかつて日光北街道と会津中街道が交差する地域にあって「矢板宿」とよばれており,江戸時代から,問屋,酒屋,紙屋,米屋といった,物資の取引,日用品・食料品などの販売が行われていたことを示す屋号を持つ家々が軒を連ねていたことがわかった。しかし,かつての「矢板宿」を訪れると,空地や中規模の事業所が目立つことが確認できた。一方で,「紙屋輪店」「かざりや釣具店」「はりまや(和菓子店)」など屋号を残した個人商店も見られ,聞き取り調査を通して,明治,大正,昭和,平成と激動の時代を経ながら,歴史を受け継いできた街としての一面も明らかにすることができた。

05 茨城県取手市における斜面の土地利用
  川田莉子(江戸川学園取手高等学校)

(発表要旨)取手市西部は谷津と台地が入り組む地形であり、街中に高低差があり斜面も多い。そこで斜面の土地利用に焦点を当て、市街地化の度合いが異なる地点 A〜D でフィールドワーク調査をした。その結果、谷津の谷底に農地が広がる地点 A の斜面には森林があった。一方、谷底に住宅地がある地点 B・C の斜面には、住宅やマンションがへばりつくように建ち並んでいた。さらに、谷底に駅や商業施設がある地点 D では、斜面の多くがマンションかビルに利用され、森林はほとんど見られなかった。このことから、市街地化が進むにつれて、斜面の土地利用は森林から住宅、マンション、ビルに変化していた。したがって、市街地内部における土砂災害のリスクが高いことが明らかになった。しかし、市街地内部の斜面の多くは土砂災害警戒区域に指定されていない。

06 茨城県取手市における水害対策の現状
  木下華綸(江戸川学園取手高等学校)

(発表要旨)茨城県取手市は利根川下流の左岸に位置しているため、ハザードマップでは、最大10mの浸水が想定されている。よって、住民は「外水氾濫」の危険性にさらされていた。また、取手市には「谷津」と呼ばれる谷状の地形があり、大雨が降れば、谷底に雨水が溜まって「内水氾濫」が起こっていた。こうした水害に対応する防災対策の現状について、フィールドワーク調査を行った。この結果、外水氾濫を防ぐ防災設備として、「堤防」や「調節池」、「樋門・樋管」が設けられていた。また、内水氾濫を防ぐ防災設備として、「排水機場」と「樋門・樋管」が設けられていた。以上のことから、流域治水の考え方にもとづいた、ハード対策が行われていたと判断した。このことで、令和元年東日本台風により、利根川が増水した際も、外水氾濫は起こらなかった。しかし、街中に洪水の危険性を知らせる標識が見られないなど、ソフト対策に改善すべき点が見られた。

07 若者の異文化理解における「カルチャーショック」に関する調査~フィリピンの少数民族「アエタ族」を例にして~
  山宮叶子(筑波大学附属視覚特別支援学校)

(発表要旨)本調査の目的は、高校生を中心に若者のカルチャーショックに関する意識調査を通して、異文化の受容について考えることだ。カルチャーショックとは、異文化に接することで生じる内面の様々な変化のことを意味する。本調査は筆者が参加したフィリピンの先住民族「アエタ族」を訪問するスタディツアーについて行った。調査方法は、文献調査・ツアーを企画したスタッフへのインタビュー・同じツアーの参加者とその他の学生への異文化理解に関連するアンケート調査である。アンケート調査では、ツアー参加者からは自己とアエタ族の共通点や相違点を尊重し合う関係性を実現したいという意見がみられた。その他の学生への調査では、アエタ族に教育や衛生面を中心に支援が必要などの具体的な意見が多くあった。調査全体を通じ、異文化に触れたときには自身の価値観からの位置づけがなされ、実際の現地での経験が自己の文化との相違を相対化する上で不可欠と考えられる。

08 千葉県松戸市矢切地域における農業の存在形態ー農家の経営状況の分析を通してー
  北澤一真(青山学院高等部)

(発表要旨)本研究では、千葉県松戸市矢切地域における農業の存在形態を、農家への経営状況の聞き取りから明らかにした。江戸川沿いの低地を対象とし、分析に当たっては、2022年秋季学術大会のポスター発表の成果と課題を踏まえた。その結果、ねぎとキャベツの二期作が卓越し、個撰で市場に出荷する農家が多いことが分かった。東京都心15km圏でありながら、近郊農業のような少品種生産である。都心からの距離を考えると、多品種少量生産で直売所を活用する都市農業が見られると仮定していたが、市街化調整区域であることが、この地域の農業の存在形態により大きな影響を与えていたことが分かった。対象地域では、物流倉庫などの開発圧力が強まっており、これを起因とする耕作放棄地も見られる。今後、都心に近く、開発圧力の強い市街化調整区域であるこの地域で農業を維持していくためには、都市農業のような地域とのつながりを意識する必要があると考える。

09 北海道新幹線延伸による観光客数の変化〜鉄道会社とのコラボ講座・ニセコ町での現地調査を通して〜
  東口杏里・斎藤奈月・貫彩乃・大儀ゆあ(品川女子学院)

(発表要旨)品川女子学院では、様々な分野の企業とコラボ講座を展開している。そのうち、不動産会社・観光協会とのコラボで北海道ニセコ町を訪問する講座と、鉄道会社とのコラボで品川駅エリアの再開発現場を訪問する講座に参加し、2つの地域を訪れる観光客の属性や目的の違いを知った。そこで、公共交通機関の新設によって街の使われ方が変わり、訪れる客層はどのように変化するのかを調査した。北海道新幹線は、2030年に札幌まで延伸することが予定されている。これにより、スキーリゾート地として知られているニセコ町にも、新幹線が開通するため観光客の大きな変動が見られるのではないかと考えた。ニセコ町で現地の方への取材やフィールドワークを通して実態調査を行い、冬は外国人観光客が多く空路で訪れることが基本となっていることが分かったことから、新幹線開通によって観光客数が増加するのは日本人観光客が多い夏に限定されると考察した。

10 宿泊施設の観光地別特徴の変遷と展開―3地域の比較を通してー
  加藤睦乃(品川女子学院)

(発表要旨)宿泊施設に関する近年の研究は,労働力やまちづくりとの関わりというように,観光客自身よりも施設の運営に焦点を置いたものが多く見られる一方,施設の特徴を地域ごとに分類したものが見られない。そこで本研究では,観光地ごとに観光客の特性を分類し,地域ごとに宿泊施設の特徴がどのように異なるのか,施設そのものに焦点を当てる。そこで,旅行者数の多い温泉地として知られる大分県別府市,1㎢あたりの宿泊施設が最も多い東京都新宿区,夏は避暑地として多くの観光客が訪れるなど季節によって観光客の変動が激しいと考えられる長野県軽井沢町の3つの地域を比較し,宿泊施設そのものがどのように異なるのかをまとめた。大分県別府市では家族向け旅館が多い一方,東京都新宿区ではカプセルホテルが多いほか,長野県軽井沢町ではカプセルホテルと民泊を禁じているなど,観光地ごとに宿泊施設の特徴は大きく異なっていることが明らかとなった。

11 熊野灘沿岸地域の災害伝承碑と寺社の関係
  中西柚名・山中琴羽(三重県立松阪高等学校)

(発表要旨)神社や寺は周辺地域の避難場所であり、移転を経験しているものもあることから、自然災害、特に沿岸部の地域が警戒すべき津波に遭いにくい場所にあると考えた。そこで三重県南部の鳥羽市、志摩市、南伊勢町、大紀町、紀北町、尾鷲町、熊野市、御浜町、紀宝町、和歌山県の那智勝浦町の沿岸部にある津波に関する自然災害伝承碑を対象に、自然災害伝承碑と周辺の神社・寺の位置と標高を調べた。加えて、地理院地図を用いて、ハザードマップの津波浸水区域と自然災害伝承碑の位置関係を調査した。結果、伝承碑には過去の災害の状況を記したものと亡くなった人々を供養するものがあり、対象とした伝承碑の周辺の神社は「スサノオノミコト」を祭神とするものが多く、寺に近い伝承碑は災害で死亡した人々を供養するものが多い。また南海トラフ巨大地震発生時にはこれらの伝承碑の標高を上回る規模の津波が想定されていることも明らかになった。

12 三重県における医療格差の現状と課題―特に産科医療に関して-
  藤田俐子(三重県立松阪高等学校)

(発表要旨)南北に長い三重県は、名古屋市に近接した北部と、人口減少の著しい南部地域で、平均所得などに大きな格差が存在する。特に、医療など生活インフラにおける格差は深刻である。今回の研究では、特に産科医療の南北格差の現状と課題を探った。なお。今回の研究では、三重県南部地域を東紀州地域の5市町(尾鷲市、熊野市、紀宝町、御浜町、紀北町)と定義する。出産可能性が高い年齢を18~45歳と特定した場合、南部地域は北部地域と比べ、特定年齢人口比で、産科(分娩可能な医療機関)数が少ない。この状況は、他の診療科より深刻で、産科医療における地域格差が特に大きいことを示している。この状況に対し、各自治体の問題意識と対応をアンケート調査し、課題を分析した。長期的な対応として、地域の国公立大学の医学科受験の推薦枠で、地域医療に携わることを目的とする産科推薦枠の創設などは、有効な対応と考えられる。

13 松阪市中心商店街の変化と今後の方向性について-時間・空間の二つの視点から-
  藤田葵子(三重県立松阪高等学校)

(発表要旨)松阪市の中心商業地域(松阪駅前商業地区)を構成する各商店街の、変化と今後の方向性について、アンケート調査などをもとに、時間・空間の2つの視点から分析した。まず、駅前に中心商業施設「ベルタウン」が完成した1980年代から現在までの各商店の業態や取扱品の変遷から、商店街の客層・集客力・商圏の変化を時間軸に沿って分析した。さらに、中心商業地域と、松阪駅・松阪城・松阪城下町(観光中心地区)との距離(位置関係)により、商店街の変遷(変化)に差異が生じる可能性を、空間的視点から考察した。また、各商店に行なったアンケート調査から、市中心部の小売店舗経営者の高齢化が店舗数の減少を招いていることなどにも焦点を当て、今後の、松阪市中心商業地域の活性化に向けた方策を検討した。

14 斜面特性と風倒木発生の関係にかかる一考察~京都市北部鞍馬寺境内仙徳谷を事例に
  板坂 郁・松野紅里・山本友晴・近藤煌也・沖野詩子(京都府立北稜高等学校)

(発表要旨)2018年台風21号は京都市北部鞍馬山に大規模な風倒木被害をもたらした。本研究では本校及び京都先端科学大学のドローンによる撮影データを用い、斜面の特性と風倒木発生の関係を風倒木発生が著しかった鞍馬寺境内仙徳谷を事例に分析した。GISを使って空撮データ、地理院地図、DEMデータ、水系図等を組み合わせ関連性を考察し、現地踏査と地域住民へのインタビュー調査も実施した。結果は、風倒木は同じ谷の中でも南西向き斜面に集中し、北東向き斜面ではほぼ発生していなかった。南西向き斜面では水系の発達が乏しく、表土の乾燥により樹木の支持力が低下し、風倒木が発生したと考察した。一方、北東向き斜面では水系が発達し、表土の保水力が高く樹木の根が広がっていたため、台風に耐えた樹木が多かったと考察した。今後は、両斜面の植林時期や森林管理の差による人為的要因も風倒木発生に影響する可能性があるため、その因果関係も追究していく。

15 大阪市の商店街から見る特徴と今後の課題について
  平山 寛朗(履正社高等学校)

(発表要旨)全国の商店街は郊外ニュータウンの建設や、モータリゼーションの波に押され、シャッター街と化してしまっているものが多い。しかし、現在でも商店がひしめきあい、栄えて続けている商店街も存在する。そこで、大阪市内の8つの商店街を選び、その特徴を実地調査したところ、かつて街道の通り道に沿って形成されたり、参道が発展してできた商店街に、2~3つの商店街が合併して存続しているなど、複数の共通点を発見することができた。しかし、跡継ぎがいないことによって、高齢化した際に店を畳まざるを得なくなったり、2階を住居に、1階で商いをする従来の定義が、単にチェーン店が立ち並ぶのに変わろうとしているなど、様々な課題が露呈していることも発見した。商店街の繁栄の存続のためにも、地域が一体となって魅力的な施策を講じることが必要である。

16 これからの社会に求められるショッピングセンターとは―神戸・阪神地域の消費生活をもとに―
  品川優人(神戸大学附属中等教育学校)

(発表要旨)本研究は「これからの社会に求められるショッピングセンター(以下SC)とは」という問いを設定し、自動車に頼らないSCを模索した。本研究では兵庫県阪神地域に出店するSCを用い、その位置情報をGISで地図化した。また、SCを規模とアクセスとでそれぞれ分類して分析を行った。すると、駅に近い小規模なSCは南部に、駐車場が多い大規模なSCは北部にあることが分かり、北部には課題が残っていた。次に消費者へアンケート調査を行った。この調査から、高頻度で小さな店舗に徒歩や自転車で行く消費者と、低頻度で大きな店舗に自動車で行く消費者の2パターンがあることや、自動車に頼らないSCの例が分かった。最後にそのSCを実際に調査した。そのSCは駅の高架下を利用した商店街のような形態であり、利用者は徒歩や自転車で気軽に利用していた。これらの調査の結果、問いへの答えは「利用者が気軽に立ち寄れる小規模で効率的なSC」であった。

17 環境保護のために自転車使用率を増加させるにはどうすればよいか-兵庫県西宮市の道路を例として-
  渡邉凛(神戸大学附属中等教育学校)

(発表要旨)本研究の目的は二酸化炭素排出量削減である。そのためには自転車の使用率を増やし、自動車の使用率を削減する事が有効である。この問い( 仮説)について西宮市内で営んでいる自転車屋さんへインタビュー調査を行った。そこで「自転車を利用する人のマナー」と「自転車が走る道路 ハードウエア)」の2つの問題を認識した。これをもとに問題解決への具体的な原案をさらにいくつか作成し、西宮市議会議員のたかのしん氏へその原案に対するインタビュー調査を行った。インタビューの中、たかのしん氏はハードウエア面について「本来使いにくく、使用したいと思わない道路を使用せず、目的地に到達するために本来のルートと別のルートを開拓する」という案を提案してくださった。これらにより、上の結果と地理的条件を様々な地域にあてはめ、日本全国で行っていくことで日本の自転車使用率は上昇するだろうという結論に至った。

18 中国の農村部における貧困の解決ー持続可能性を観点にー
  岡村雄太郎(神戸大学附属中等教育学校)

(発表要旨)近年、中国はGDPが世界第二位になるなどめざましい経済発展を遂げている。一方で、国内の経済格差は拡大し続けている。特に、内陸部では機械化の遅れによる貧困から脱却できていない農村が多い。本研究は、中国の経済格差が広がった理由と農村部の貧困の現状について文献調査を行った。先行研究から、既存の資源を活用できていないことや貧困者自身の意識の欠如により貧困に陥っていることが明らかになったほか、「貧困の罠」や「内生的経済成長理論」といった知見および実際に農村部での貧困解決のために行われている事例を参考にし、中国の農村部での状況と絡めて考察した。貧困を根本的に解決できなければ、さらなる応急的な支援を繰り返すことにつながるため、持続可能な発展は極めて重要である。これらを元に中国の農村部における貧困について、「数組の農家が出資した組織による農機具の貸出」を基軸とした解決策を提案し、その有効性を述べた。

19 正しい避難支援 ~倉敷市真備地区における豪雨災害の復興から考える~
  中塚 悠稀 (岡山県立岡山大安寺中等教育学校)

(発表要旨)2018年の西日本豪雨から4年、倉敷市真備町では決壊した堤防の復旧工事がようやく終わろうとしている。この豪雨で、多くの死者が出た原因は避難の遅れであり、これを解決し、岡山の災害死者を今後ゼロにすることを目指す目的で研究を行った。本研究では、豪雨の実態について文献調査、現地調査を行うことで、避難意識の定着と避難の課題を町の様子から考察した。結果、避難意識の高まりは数多く確認できたが、復興後の町特有の避難の問題が浮上した。それは、高齢者の平屋住宅の増加である。また、市の調査から特定の避難所に人が集中してしまうという課題が見つかった。これらの問題を解決するために、「VACAN」と防災無線を用いた避難施設の混雑状況の提供と避難所への高齢者送迎バスを組み合わせることを提案したい。自然災害の危険が年々増している中、このような避難の支援を行い、洪水への不安を小さくすることが必要だと考える。

 

参考出展(国際地理オリンピック2023バンドン大会日本代表ポスター

Mt. Fuji for Community Revival in Tokyo ~Can Landscape appreciation build an inclusive urban community?~ 

田中 穣(東京都立桜修館中等教育学校)・石井 智貴(灘高校)・井上 尚多朗(広島学院高校)・辻 昂太朗(ラ・サール高校)

(発表要旨)第19回国際地理オリンピックのポスターテーマは”creative culture for inclusive urban community” であり、各チームはこのテーマに沿ったポスターを作成し大会期間中にプレゼンテーションを行った。日本代表チームは、東京大都市圏において、富士山の景観が地域のコミュニティ再生にどう寄与できるかの考察を目的にポスターを作成した。東京では、江戸時代の民間信仰、富士講など富士山に対する信仰や巡礼が村落共同体で重要な役割を担ってきた歴史がある。一方、近現代の状況として明治以後の人口流入は伝統的共同体を解体し、また、ここ数十年の超高層建築は富士山の眺望を阻害している。富士山の活火山としての危険性と、共同体での重要性は地域内で語り継がれていくべきものだろうと考察した。こうした景観喪失への対策として、都市計画など2つの既存のアイデアの紹介と歴史を基とした3つの新たなアイデアの提案をした。景観保護に伴う地域の価値の共有がコミュニティの再形成に繋がるだろう。