2020年秋季学術大会 高校生ポスターセッション(オンライン)発表リスト

 2020年秋季学術大会において、高校生ポスターセッション(オンライン)を開催いたします。高校生が作成した計13件のポスターが発表されますので、積極的なご参加をお願いいたします。
 なお、高校生ポスターセッションへの参加には申し込みが必要です。下記サイトからご登録ください。後日、特設サイトの情報を通知いたします。
〔参加申し込み期間〕2020年9月16日(水)-2020年9月30日(水)
〔申し込みサイト〕 https://www.ajg.or.jp/2020autumn_registration/

 ポスターの公開期間や質疑応答については、下記ページからご確認ください。
  https://www.ajg.or.jp/20200720/6766/


2020年秋季学術大会 高校生ポスターセッション 発表リスト

発表番号,「発表タイトル」,発表者(学校名)、発表要旨
(発表者中の下線は筆頭発表者)

01,「観光における写真の影響-写真の撮影・保有と満足度・記憶度との相関についての考察-」
       村岡優菜・木村理瑞(鳥取県立鳥取西高等学校)

(発表要旨)写真撮影,写真保有が,旅行満足度・記憶度にどのように影響するかを調査した。本校の台湾研修旅行参加者280人を対象に,外山ほか(2015)の調査方法を援用したアンケート調査を実施した。写真の撮影枚数および保有枚数,写真の被写体(人,物体,場所)別枚数,満足度と記憶度の指標27項目等について,1週間後と5週間後の2度の調査を行った。調査期間中における満足度の向上と保持には,観光へのポジティブな感情,観光地への満足感の2つが関連することが明確となった。総合的に高い満足度・記憶度を保持した属性では,観光本来の意味での観光を満喫したことと関連していた一方,他の属性では撮影や同行者との有意義な時間の重視など観光本来の意味からずれやすかった。撮影枚数と観光の楽しみ方は相互作用関係にあり,記憶度や満足度を向上させるためには,自己の観光に対する意識や楽しみ方を再認識することが有効である。

02,「地球上における二酸化炭素の流れの可視化」
 齋藤真理子・寺嶋桜子(お茶の水女子大学附属高等学校)

(発表要旨)地球温暖化の急速な進行が問題となっており、その解決策として二酸化炭素を始めとする温室効果ガスの排出量の削減が求められている。しかし、単純に二酸化炭素の排出量が減少すれば、世界の気温上昇は一様に緩和されるのだろうか。本研究では、地球上のどこで二酸化炭素が多く発生し、それがどのようなルートでどこに広まり、最終的に何と結びついて気温上昇を引き起こすのか、という一連の流れを可視化することで、温暖化対策を考える上での一助とすることを目指している。
 文献調査や、総務省統計局や地図帳の国別統計データ(二酸化炭素排出量、森林面積など)をGISを用いて重ねていく作業を行った結果、二酸化炭素の排出量や吸収量は地点によってばらつきが大きいにも関わらず、年単位で見ると大気中の二酸化炭素濃度は世界で一様に上昇していること、また、北半球の中高緯度では気温の上昇傾向が特に大きいことが分かった。”

03,「高校生がショッピングモールを選ぶ上で重要な条件とは」 
 鷺山惟織(千葉経済大学附属高等学校)

(発表要旨)千葉県には主要なショッピングモールが5つ程あり,中でも“イオンモール幕張新都心”は平成25年開業の比較的新しい施設である。しかし,本校の生徒238名を対象にアンケート調査を行ったところ,利用頻度の高さは“ららぽーとTOKYO-BAY”に次いで2番目に留まった。
 本研究の目的は,“ららぽーとTOKYO-BAY”と“イオンモール幕張新都心”の高校生における利用者数に大きな差がある要因を導き出すことである。
 本研究では,一般的に高校生は金銭的な制約があり,在住自治体からの物理的な距離の短さや,交通費の安さで利用するショッピングモールを選ぶという仮定の下,上記のアンケート調査を分析し,現地調査を行った。
 その結果,服飾店の多さ,モール内での過ごしやすさ,そして最寄り駅からモールまでの所要時間の短さが高校生にとって重要であることが明らかになった。
 以上から,高校生がショッピングモールを選択する際,自宅からの物理的な距離は重要ではないと言える。

04,「千葉県市区町村の人口移動様態における「重力モデル」の応用分析」
 石川翔太(千葉県立千葉高等学校)

(発表要旨)千葉県の人口移動様態における一般的傾向と地域的特徴を解明するため、国勢調査データを用いて作成した千葉県の人口移動に関する3つの主題図から見出した3つの特徴(調査課題)-①東京大都市圏の影響、②木更津市や茂原市など、地方の中核機能を持つ市の、人口移動への影響、③銚子市の人口転出に見られる特異性-において、演算方法についての様々な検討・吟味を行った上で「重力モデル」の式を用いて市区町村間の年間の移動量の理論値を算出し、実際の移動量との比較分析を実施した。これらの分析の結果から、東京の近郊ほど東京の影響を強く受ける、また、地方の中核都市がその周辺市と活発な人口のやり取りを行っているという一般的傾向が仮説通りに見出されると共に、銚子市と茨城県神栖市の間では、特別に強い結びつき(影響力)が存在するといった地域的特徴が計算によって明らかになり、これらは、地方創生の問題などへと繋がる知見となった。

05,「withコロナ時代における鎌倉の小町通りの食べ歩きと課題」
 武井香奈子(桐光学園高等学校)

(発表要旨)COVID-19の影響で落ち込んだ旅行需要の回復を目指して政府がgo toトラベルキャンペーンを実施するなどwithコロナ時代の観光に対して様々な取り組みがなされている。本研究では、食べ歩きが醍醐味である鎌倉の小町通りにおけるwithコロナ時代の観光について取り上げる。2019年秋に小町通りで実施したフィールドワークでは、歩道の狭さと人通りの多さからゴミ箱の設置が課題であること、事業主のごみ箱設置に対する意識が低いことが観光地の課題として明らかとなった。一方で現在、連日メディアで報道されている通り、旅行や観光には感染予防対策が必要となり、2019年秋の観光に対する課題とは変化があるのではないかという仮説を持った。そこで2020年夏に再度小町通りにインタビュー調査を行い2019年秋から2020年にかけて、観光客向けの事業者や観光地における課題にどのような変化があったのか、さらにwithコロナ時代における新たな課題を明らかにした。

06,「バイヨン中学校におけるバガス製品を活用した教育向上案」
 木村宗洸(宮城県仙台二華高等学校)

(発表要旨)カンボジアでは、ポル・ポト政権による知識人の虐殺や、教師の収入が高くないなどの理由から様々な教育問題が存在している。シェムリアップ州、アンコールクラウ村にあるバイヨン中学校は都市から離れた地域に建設されていることから、さらに教師不足や教育の質の低さといった問題を抱えていることが先行研究による現地調査から明らかになっている。
 そこで本研究では、中学校の売店で販売されているサトウキビジュースの搾りかす(バガス)に着目し、通常は廃棄されるバガスを生徒が加工し、それを販売して得られた収入を教師が補講授業を開く際の費用に充てることで、教師不足および生徒の学力向上が可能か検証した。作成が容易だと思われるノートへの加工とその需要について、現地でインタビューおよびアンケート調査を実施し、そこで見えてきた課題と今後の展開について報告する。

07,「カンボジア、バイヨン中学校における口腔衛生の現状」 
 井崎英乃(宮城県仙台二華高等学校)

(発表要旨)「歯」とは人間誰もが一生使い続けるものであり、体全体の健康と深い関係にあることが知られている。DMFT指数で比較すると、先進諸国と比べて東南アジアや南アメリカ諸国では特に大きな値が示されており、原因の究明と対策が必要である。
 本研究では、カンボジア王国シェムリアップ州、アンコールトム遺跡のすぐ西にあるバイヨン中学校の生徒53名を対象に、歯に関わる生活習慣についてのアンケート調査を行った。その結果、歯磨きの回数と比較し、虫歯の保有率が非常に高いことが明らかになった。さらに、インタビューからは、虫歯予防や口腔衛生教育が不十分で、近くに歯科病院もなく治療が行われていないことや、使用している水にも問題があることがわかった。彼ら・彼女らが置かれている状況や環境を踏まえると、虫歯の予防をするために何よりも学校教育において虫歯予防、公衆衛生教育を導入していくことが大切だと考えられる。”

08,「京都府八幡市の飛び地における課題」
 金政秀雄・金光 奏・田中大熙・德和目脩太(洛星高等学校)

(発表要旨)飛び地とは、同一市町村が地理的に離れて他の市町村に囲まれて存在するものである。私たちは、飛び地は市町村本体から切り離されているため、行政サービスの面や住民の防災の面において、様々な支障が出るのではないかと考え、周辺地域とどのように連携しているのかを調査した。
 そこで平成27年国勢調査町丁・字等別境界データを用い、全国の飛び地の分布を調べると、全国に飛び地は数多く存在していることが分かった。
 その中でも八幡市の飛び地は、京都に住む我々に身近で、洪水被害を解消するための木津川の付け替え工事によって発生したものであると分かっている。そこで現地調査等によって、飛び地に対してどのような対応を行っているのかを調査すると、周辺の京都市や久御山町との綿密な連携の様子が見えてきた。このような連携を行うことで、飛び地を無理に解消する必要性もなくなり、住民の意向を反映することができると考える。

09,「Web地図やARアプリを使った日本遺産「石見神楽」の魅力の情報発信」
 田原志菜(島根県立益田翔陽高等学校)

(発表要旨)本研究の目的は,2019年に日本遺産に登録された島根県西部石見地方の伝統芸能「石見神楽」の魅力を情報発信する方法を,パソコンやスマホ上のWeb地図や,位置情報などが使えるARアプリなどを用いて方法を考案することである。「石見神楽」は,島根県西部では今のところ人気があり,多くの社中(地域で継承する団体)やその下部組織の子ども神楽もある。しかし,今後少子化の中で後継者不足は避けられない課題である。地域内の子供たちや石見地域外の人に広く石見神楽の魅力を発信し今以上にファンを増やす方法を検討したい。方法として,Web地図アプリを使い石見神楽の演目の舞台となった場所を図示して説明したり,ARアプリを使って位置と動画配信を組み合わせ魅力を伝えたりする方法を考え,結果を考察する。プランは地域遊びイベント「いわみん」に参加し,実際に体験プログラムとして今年秋に実施する。その成果を報告したい。

10,「after/withコロナ時代の鎌倉の観光」
 藤井 結※1・池田明日香※1・岩田梨聖※1・川久保真里※2・目黒奈央※2・谷地田桜子※2(※1 山脇学園高等学校,※2 鷗友学園女子高等学校

(発表要旨)神奈川県鎌倉市小町通り商店街を対象に、オンライン上で高校生・地元住民でafter/withコロナについて、VR動画やインタビュー記事を参考にディスカッションを行いプレゼンテーションを実施した。混雑状況がリアルタイムで分かるドットマップやアートを使った集客、オンライン上で小町通りを再現してショッピングを楽しんでもらうなど、ユニークなアイデアを出し合った。
 これらを踏まえて、コロナウイルスにおける観光地の現状や課題について調査した。
 コロナ前の小町通り商店街の利用者の集中を調べるため、鎌倉の各観光地の入り込み客数を地図に示した。また、小町通りの店舗に聞き取り調査を行い、様々なジャンルのお店が実際にコロナとどう向き合っているのか調べた。
 ディスカッションで考えた理想と実際に聞いて分かった現状を踏まえて、より具体化した新たなアイデアを提案した。

11,「都心に残る古民家集合地区の防災について」
 松島美月(品川女子学院)

(発表要旨)本研究は、木造住宅や井戸といった都心に古くから残されている建造物や施設と、それぞれの関係を踏まえ、防災のあり方がいかに変化しているかを調査するものである。近年発生している大きな災害を踏まえてみても、築年数の長い木造住宅は、地震や火事の被害を受けやすいことは明らかである。また、これらの地区には高齢者が多く住んでいることが多いことから、住居とそこに暮らす住民は災害への対策が進んでいないと考えられる。そこで、東京都心の任意の2地域において新旧の地形図を比較し、過去の災害履歴を踏まえ、住宅街の中に築年数の古い住宅街の一画がどうして残っているのか、災害への危険性や対策という観点で、その一画特有の条件があるのかフィールドワークを通じて考察を行った。

12,「水害対策を身近なところから疑ってみた」
 山内愛華(千葉県立船橋芝山高等学校)

(発表要旨)昨年「高校生等防災パワーアップ講座」で学んだことや、今年7月の球磨川の氾濫により市街地が浸水したことをきっかけに、身近な地域における同様な災害の危険性や避難行動における安全性について、千葉県市川市を例に調査した。真間川・江戸川の氾濫や内水氾濫を想定したハザードマップを読み取り、浸水想定範囲について、避難場所の立地や安全性について検討した。その結果、浸水時に使用することが困難であると考えられる避難場所もあることが明らかになった。例えば、浸水想定範囲に立地し、すぐ隣に川があり、周囲より標高が高いわけでもないという避難場所が多く見つかったので、その避難場所が本当に有効であるか検討した。河川との位置関係や、標高や地形との関わりを考慮した避難場所の設定やハザードマップへの反映が必要であることを考察した。ハザードマップに頼るばかりではなく、自分で考え行動することが命をわけることにもなると考えられる。

13,「学校周辺の地形―甘い立体地図を作ろう」
 植草和花(千葉県立船橋芝山高等学校)

(発表要旨)私は親しみやすいものから地理を学ぼうと思い、『地図趣味』という本で紹介されていた等高線ケーキを制作した。地理が苦手な生徒にも、地理をわかりやすく、楽しく学べる方法を検討し、GISを用いて地図を作成し、それを基に地形を模したケーキを制作した。生地の型紙は「カシミール3D」で基盤地図情報を使用し、等高線間隔を2メートルに設定し、それを印刷した。また、地理院地図の「自分で作る色別標高図」で地図とケーキを比較するための色別標高図も作成した。ケーキは生地を緑から茶色のグラデーションになるように調節しながら焼き、等高線に沿って切り、重ねた。身近で高低差の激しい本校周辺を対象とし、台地と低地とその斜面、2つの水系の分水嶺も一目でわかる立体的なケーキが完成した。GISの使い方を学び、ケーキを作る楽しさが地理を学ぶ楽しさと繋がるこのアイディアを生かし、さらに学習を楽しくすることができるものと考えられる。

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高校生ポスターセッション これまでの発表者・受賞者リスト
https://www.ajg.or.jp/20190316/5238/