会長講演のお知らせ

下記の通り会長講演を行いますので多数御参加下さい.

1.日 時 327日(木)17時~1745

2.場 所 国士舘大学34号館B棟第1会場

 

矢ケ﨑典隆(日本大):探検と発見のアメリカ地誌――地誌学の再構築に向けて――

 

 地理学は総合の科学であり,地誌学は地理学の核心をなす領域であるという認識が長い間地理学研究者によって共有された.地誌学の重要性が唱えられる一方で,地理学の細分化・専門化・多様化が進行し,地域の取り扱いは不明瞭となり,地誌学の存在感は薄れてきた.しかし,グローバル化が進行する今日,さまざまな地域スケールにおいて地域を正確にバランスよく認識し,地域が抱える問題を地域の枠組みにおいて検討することは重要である.地誌学的な視点や知識が社会において演ずる役割は大きい.本講演では,アメリカ合衆国を事例として,地誌学的な調査研究の魅力と重要性を提示し,地誌学を再構築することの意義を論じる.

 野外科学としての地理学は,過去においても現在においても,地域を研究対象としてきた.アメリカ地域研究の枠組みで考えると,社会科学や人文科学が地域研究の上部回路を構成し,政治的経済的および文化的歴史的な理解を提示する一方,地理学は地域研究の下部回路を構成し,地域に密着して地域の姿をダイナミックに描く.アメリカ地誌の考察の枠組みとして,自然と人間(自然を認識・利用・改変する人間の役割),起源と伝播(大陸間の移動・交流とそのインパクト),地域と景観(文化地域の設定と文化景観の解釈),時間と変化(過去の復元と地域変化の解釈)を設定することが有効である.この考察の枠組みに基づいて,アメリカ地誌を六つの時期に区分して描くことができる.

 コロンブスの到来によってヨーロッパとの接触が始まる以前は,南北アメリカにおいて,今日のアメリカ合衆国の地域は人口の希薄な辺境であった.ヨーロッパ人の入植開始から19世紀中頃までのアメリカ地誌は,北西ヨーロッパ系小農経済文化地域,プランテーション経済文化地域,イベリア系牧畜経済文化地域の形成過程として理解することができる.今日のアメリカ合衆国の北東部には北西ヨーロッパ系小農経済文化地域が形成され,また南東部にはプランテーション経済文化地域が,南西部にはイベリア系牧畜経済文化地域が形成された.19世紀中頃から19世紀末までのアメリカ地誌は,北西ヨーロッパ系小農経済文化地域が南へ,南西へ,西へと拡大する過程であった.20世紀初頭から1960年代末まではアメリカ的生活・生産様式の進展の時代であり,産業の発展,生活様式の等質化,地域主義,多民族化によって特徴づけられた.1970年代以降のアメリカ地誌は,アメリカ型多民族社会の進展として把握することができる.そして21世紀のアメリカ地誌を考察するために,「世界の博物館としてのアメリカ」という枠組みを提唱する.

 地誌学の存在意義は,地域を説明するための考察の枠組みを提示し,地域スケールに応じて地域像を描くことである.アメリカの地域性を理解するために地域区分は有効な方法である.同時に,南北アメリカの枠組み,大西洋の枠組み,環太平洋の枠組み,そしてグローバルな枠組みにおいて,アメリカの地域像を認識することも重要である.アメリカ地誌には,探検と発見の可能性に満ちた魅力的な研究フロンティアが存在する.

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  • 投稿日:2014年02月25日