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2025 年農林業センサスにおける農業集落調査の継続を求める要望 - 日本地理学会

 2022 年 7月に行われた2025 年農林業センサス研究会において,農林水産省は,2025 年農林業センサスでは農業集落を対象とした調査を廃止するとの方針を公表しました.

 この提案について,本学会では下記の点から,調査の廃止を現時点で決定するのではなく,一部見直しを含めた調査継続を農林水産省に対して強く要望します.

  1. 日本の農業・農村をめぐっては,今日きわめて深刻な問題が存在します.特に,中山間地域では,個々の集落レベルの問題解決が強く要請されています.このような問題状況の改善には,実態の把握,さらにその解決に向けた政策の実行が必要となりますが,その基礎的資料の一つとして本調査の価値は極めて高いものがあります.この度,農業集落調査の廃止が検討対象となった背景に様々な課題が存在することは,農林業センサス研究会でも指摘されていますが,このような課題に対して調査そのものの廃止で対応するのは適切な対応と言えません.地域の問題解決のために必要な本調査であるからこそ,調査への理解を促し,調査方法の改善の検討を行って,解決策を追求することが重要だと思われます.
  2. 本調査の利用は,単に農業・農村の領域に留まりません.今日のデジタル・トランスフォーメーション時代においては,防災・国土計画・国土保全・地域計画・環境保護など国土や地域に関する広範な領域にとっても必要不可欠な調査です.近い将来,国民が容易に利用できる共用のデータベースが実現した場合,集落調査は,その最も基礎的な位置を占めるものです.この点でも本調査を存続させるべきであると考えます.
  3. 本調査は,1955年以来長期にわたって全国の集落を対象として固有のデータを継続的に蓄積しており,日本の農業・農村の把握にとって貴重な統計です.地域を研究の対象とする本学会の会員の多くが小地域の基礎的統計として学術研究に活用し,その成果を社会的に発信してきました.本調査が廃止されデータ蓄積が中断されますと,農業集落調査の価値は著しく損なわれ,研究成果の社会的還元はもとより,学術研究の発展を阻害することになりかねません.

2022年10月22日
公益社団法人日本地理学会理事会