災害と地理学および日本地理学会

●災害は起こるべくして起こる
 災害は偶然起きるわけではありません。起きるべくして、起きるべき場所に発生します。これは古くから地理学の教えるところでした。20世紀においてもこの視点は重視され、頻発する中小規模の災害に対する防災力は大きく向上しました。しかし、今なお、巨大災害に対する備えは十分ではなく、時折大災害に見舞われています。

●地理学的視点による分析の重要性
 大地震や火山噴火、集中豪雨や大規模土砂災害等に対しては総合的防災戦略のあり方が模索されています。そのためには、まず、どの程度の被害がどの程度の確率で発生するかを正確に予測することが重要で、災害が過去から現在に至る時間の中でどのように起きてきたか、起きる場所にはどのような地理学的条件があるかを見極める必要があります。また、災害は自然と人為の複合で起きるため、両者の関係を追求してきた地理学的視点からの分析が重要で、「環境との共生のあり方」が模索される今日において、いっそうその重要性は高まっています。

●日本地理学会としての取り組み
 このような観点から、日本地理学会は災害対応委員会を設置し、災害に対して学会として積極的に取り組み、我が国および世界各国の防災力の向上に貢献するべく体制を整えています。

1993年・鹿児島豪雨災害による土石流
撮影:国際航業株式会社