災害対応委員会と災害対応グループ

●災害と地理学者
 これまでも災害時には、地理学者は個人的にその原因解明や対策の議論に積極的に関わってきました。阪神淡路大震災等の内陸直下型地震の際の活断層・古地震研究やGIS研究、火山噴火の際の火山研究、集中豪雨の際の河川地形学や気候学的研究などはその一例です。また多くの災害時にその人的・社会的影響についても地理学者が取り組んできました。

●組織的な対応を目指して
 しかし今日、とくに災害に対しては個人的対応の限界が指摘され、組織的対応が重要視されるようになりました。このため日本地理学会では、こうした社会的要請に応えるべく、災害対応委員会を2001年度から組織し、これを中心に学会としての災害対応を本格化させることにしました。災害対応委員会は、地理学会としての災害対応のあり方について議論を重ね、災害対応について次のような取り組みを開始しました。

●災害対応委員会の取り組み
(1)
ハザードマップ情報を整備し、被害予防のために「災害はどこでどのように起こるのか?」の基本的情報を積極的に提示する。
(2)学会員からなる災害対応グループを組織し、全国各地にその拠点を設ける。
→災害対応グループ募集中
(3)重大災害発生時においては、「災害がなぜそこに発生したか」を解説し、被害拡大や再発防止に役立てる。
(4)重大災害発生時には、必要に応じて緊急調査団を組織し、情報の収集に努めるとともに、速やかに成果を公開する。
(5)災害の人的・社会的影響についての調査を中長期的に継続し、災害発生から復興に至る過程の総合的研究を推進する。


1995年・阪神大震災・野島断層トレンチ調査
撮影:渡辺満久(東洋大学)


1995年・阪神大震災・阪神電鉄操車場
撮影:国際航業株式会社
災害ハザードマップについての重点的取り組み

 災害がどこでどのように発生するかを事前に予測・評価することは地理学の役割でした。近年、国が積極的に進めているハザードマップは、まさにその仕事の延長線上にあります。ハザードマップはコンピュータが自動的に描くものではなく、地点ごとの災害特性に関する地理的条件を評価して危険かどうかの判断をしているのです。したがって、地理的条件を総合的・分析的に見る目こそが重要です。
 日本地理学会災害対応委員会では、このような観点から「(仮称)ハザードマップ研究グループ」を組織して、ハザードマップ情報を収集し、整備状況を解説するとともに、その有効性と問題点についての議論を深めていきたいと考えています。



災害対応委員会の活動記録

日本の災害に関する地理学研究と災害対応委員会の活動(英語)(2013年)