首都圏直下型の地震を正しく畏れ、みんなで備えよう
〜埼玉の地震災害とその対策を考える〜

一般公開シンポジウム概要報告

日時:2006年3月27日(月) 13:30〜17:00
場所:さいたま商工会議所会館2階 第1・2ホール

2006年3月27日、さいたま商工会議所会館(さいたま市浦和区高砂)において、標記シンポジウムが開催された。開始時刻からほぼ満席になり、立ち見の方の出るほどの盛況の中、シンポジウムが始まった。延べ参加者は約350人であった。参加者は埼玉県民が約300人、学会関係者が約30人、その他が約20人であった。
 
当初出席予定の埼玉県知事は所用により欠席であったが、埼玉県危機管理防災部長により知事のメッセージが読み上げられ、首都直下地震に対する埼玉県の取り組みに関して積極的な意思表明がなされた。続いて、遠藤邦彦(災害対応委員長)より、このシンポジュウムの趣旨や日本地理学会の取り組みとして、市民ともに学び、情報発信していくことが述べられた。
 
ひき続いて、9名の方々から埼玉県の地震防災に関係の深い話題提供がなされた(講演の詳細は以下の表を参照)。
 以上の発表のあと、会場からの質問票に答える形で総合討論が行なわれた。立川断層、荒川断層、綾瀬川断層、久喜断層のことなど活断層に関わる質問が多く、発表者の渡辺と角田が答えた。また、埼玉県南部の軟弱地盤や斜面災害危険区域の把握などについての質問があった。会場から、市民レベルの防災の重要性やボランティア活動支援体制の必要性についての提案があった。最後に、備えるべき地震動として、予防用最大震度分布図の活用について中林から補足説明があった。

講演の発表資料と動画がこちらから閲覧できます



会場の様子




発表要旨

発表者(所属)
演  題
要  旨
中林一樹
(首都大学東京)
切迫する首都直下地震災害とは
−その被害想定から−
首都直下地震の被害想定をもとに、首都直下地震の特異性、深刻さ、甚大さ、気象条件等によって変わりうる被害様相などを詳説した。また、兵庫県南部地震と新潟県中越地震の災害特性・対応などを比較しながら、被害軽減のための住宅耐震化、災害関連死対策の必要性を示した。
角田史雄
(埼玉大学)
埼玉県の地震災害と被害想定 南関東の地震と伊豆・小笠原諸島の火山活動の関係について、歴史地震-歴史噴火の関係から地震活動の北上説を示した。深部基盤構造を反映した強震動域の存在、それによる建物被害の危険性を解説した。地殻・地盤(構造)を考慮した土地利用の必要性を強調した。
渡辺満久
(東洋大学)
埼玉県の活断層と地震災害 過去の内陸地震と活断層の関係を例示し、活断層が地震を起こすことを示した。新潟県中越地震も活断層上で起こった地震であり、活断層と地震、活断層と地震被害は深い関係にある。活断層の位置を知ることが地震対策上極めて重要で、埼玉県でも綾瀬川断層の存在を確かめることが重要性であることを強調した。
風間秀彦
(埼玉大学)
地震による斜面災害の実態について 新潟県中越地震での地すべり、斜面崩壊の特徴を解説した。斜面崩壊と地すべりの違い、斜面災害の素因と誘因を示し、地盤災害タイプを事前に想定しておくことが、斜面災害の軽減につながることを強調した。
吉野淳一
(埼玉県)
埼玉県の地震対策の取り組み 埼玉県の地震対策のトピックスとして、帰宅困難者対策、援助物資の管理対策、緊急高度人命救助機器など新しい問題点への県の取り組みを示した。また、自主防災組織の普及と活性化、企業との連携など自助、共助の芽を大きくしていくことの重要性を強調した。
鈴木康弘
(名古屋大学)
坂上寛之
(ファルコン)
地域防災の取り組み
-名古屋の事例-
東海地震、東南海地震への関心の高まりを背景として、近年の愛知県・名古屋大学での取り組みを紹介した。土地条件や開発の経過を知り、木造建物の構造によっては極めて脆弱あることを知り、補強を進めることの重要性を示した。また、地域防災力向上シミュレーターを紹介した。
清水 實
(水谷東小学校区自主防災会連絡会)
地域の安心安全を構築するための市民活動
−消防庁地域安心安全ステーション整備モデル事業の実践報告−
水害危険地域にある富士見市水谷東地域の住民組織が自主的な取り組みとして、地域の安心安全に取り組んできた経過を紹介した。消防庁から「地域安心安全ステーション整備モデル事業」の地域指定を受け、地域を愛する気持ちをもって災害危険と真剣に取り組む姿勢を説明した。
宇根 寛
(国土地理院)
地震防災のための地図情報 地域防災力向上のために、国土地理院の持つ地図情報(土地条件図、旧版地形図など)は有効であること、土地条件図を使うことによって、土地の成り立ち、災害タイプやその危険度が推定できることの事例を紹介した。