地理学評論 Vol. 89, No. 2 2016 年 3 月

●―短 報

都市近郊に位置する小面積の自然保護地域における利用特性と満足度――愛知県の湧水湿地における事例―― 富田啓介・53–67

●―書 評

清水長正・澤田結基編:日本の風穴――冷涼のしくみと産業・観光への活用――(田村俊和)・68–69

橋本雄一編:QGISの基本と防災活用(駒木伸比古)・69–71

林 紀代美:魚食と日本人――水産と人・生活・地域のかかわり――(荒木一視)・71–73

J. A. マシューズ・D. T. ハーバート著,森島 済・赤坂郁美・羽田麻美・両角政彦共訳:地理学のすすめ(渡辺満久)・73–74

2016年春季学術大会プログラム・75–99

学界消息・100–101

会  告・表紙2,3および 102–106

2016年秋季学術大会のお知らせ(第1報)・表紙2

 

 

短報

都市近郊に位置する小面積の自然保護地域における利用特性と満足度──愛知県の湧水湿地における事例──

富田啓介
法政大学文学部

自然保護地域の運営には,利用面の配慮が求められるが,都市近郊に位置する小面積の自然保護地域の利用実態は明らかではない.そこで,愛知県に存在する三つの湧水湿地保護区を事例に,利用者層・利用行動・利用体験の諸相を明らかにした.来訪者へのアンケートによると,来訪者の中心は,夫婦・親子・友人からなる2人または数人のグループで,その大半が近隣自治体に居住する50歳代以上の中高年者であった.主たる来訪理由は自然観察と散策で,滞在時間は短かった.こうした利用者の特性は,常時公開か否かといった公開方法や広報内容,公開時の運営手法によっても変わりうることが示唆された.利用者の満足度と満足内容を分析すると,保護対象についての知識や観察方法を適切にガイドすることが高い満足度に結びついていた.一方,湿原の植生遷移の進行や動植物の減少といった自然保護上の問題が満足度にも悪影響を及ぼしていた.

キーワード:自然保護地域,湧水湿地,利用者層,利用行動,利用体験,愛知県

(地理学評論 89-2 53-67 2016)