名誉会員候補者推薦委員会

2010年度活動報告
委員長:山下脩二
委 員:石井英也、高橋眞一、中田 高、永野征男
本委員会は日本地理学会規約に則り、委員間で慎重に検討・審議した結果、対象となる全会員の中から、下記の3会員を付記した理由により、名誉会員候補者として推薦することに決定致しました。

名誉会員候補者:小池一之会員
 推薦理由:小池一之会員は、駒澤大学に四十有余年の長きにわたって勤務し、地形学、とりわけ海岸地形を中心に自然地理学の幅広い分野の研究と教育に従事してきた。この間、13編以上の著書(単著、編著、共著など)、および地理学評論掲載論文4編、書評等16編を含め多くの論文を発表し、地理学の研究・教育を推進してきた。
 同会員の研究分野は地形学・第四紀学であり、火山灰編年学を基礎とした地形発達史をその中心テーマとし、関東平野を中心に日本各地の河成・海成段丘地形の研究に取り組み、数多くの貢献を行った。また、阿武隈山地の侵食平坦面の地形学的研究では先駆的な成果を挙げた。最近では、地球温暖化に伴う海岸環境の変化予測を視野に入れた新しい時代の海岸環境の変遷史、特に歴史時代から現在に至る海岸線の変化や人為的な地形変化の研究に成果を挙げている。対外的にもIGBP-LOICZ(Land-Ocean Interaction in the Coastal Zone)(沿岸域における陸地と大洋の相互作用)日本国内研究委員会委員(1994年~)として活躍してきた。  日本地理学会では、会員歴54年、その間専門委員会委員(編集)、常任委員(編集専門委員長、庶務専門委員長)の重責を務めた。さらに、評議員・代議員6期、名誉会員候補者推薦委員および委員長などを歴任した。日本地理学会の法人化にあたっては法人化準備委員会委員長、法人化推進委員会委員長、法人化実行委員会副委員長を務め、日本地理学会の発展に多大なる貢献をしてきた。
 以上の功績により、小池一之会員を本会の名誉会員候補者として推薦する。

名誉会員候補者:佐々木 博会員
 推薦理由:佐々木 博会員は、長年にわたり、立正大学・筑波大学・目白大学に勤務し、人文地理学の研究と教育に従事してきた。また、DAAD奨学生(1962~64年)・フンボルト財団研究員(1972~73、1978年)として3度にわたりドイツに長期留学され、外国研究に精力的に取り組んできた。この間3編以上の著書、および地理学評論掲載論文5編、書評等16編を含む多くの論文を発表し、地理学の研究・教育を推進してきた。
 同会員は、主要著書である『現代のドイツ―風土・民族・産業―』(二宮書店、1977年)、『ヨーロッパの文化景観』(二宮書店、1986年)、『EUの地理学』(二宮書店、1995年)や、初期の論文「ドイツにおけるブドウ栽培の発達」(人文地理学、1965年)や「甲府盆地東部と南西ドイツKaiserstuhlにおけるブドウ栽培景観の比較」(地理学評論、1966年)に示されているように、留学経験をいかして外国研究への道を切り開いてきたことに第一の貢献がある。同会員が留学された時代には、まだ船を利用する時代で、人文地理に関する日本人の研究成果もともすれば翻訳に頼るきらいがあった。そのような時代の中で、つねに日本との比較を念頭に実証研究を積み重ね、今日に至る国際化の道への先鞭をつけられた功績は大きい。
 ヨーロッパに関しては同会員ほど多くの地域に足を踏み入れたものは少ないと思われるほど各地を歩いている。それは、好奇心の強さと興味の幅の広さにある。そのため、数多い著者や論文が多岐の分野にわたっていることがもう一つの特徴である。フィールドは主に日本とヨーロッパであるが、専門の農業地理のほか、人口・都市・工業・山村、観光や文化のほか、応用的色彩の強い環境評価や住民意識、あるいは地理学史などに関する重厚な論考を発表してきた。近年では地理教育や社会における大学の役割などに関しても、大学紀要などを通して活発に発信を続けている。
 日本地理学会では、会員歴56年、その間専門委員(集会2期、渉外、編集)を務めた。さらに評議員を4期にわたって歴任し、日本地理学会の発展に多大なる貢献をしてきた。
 以上の功績により、佐々木 博会員を本会の名誉会員候補者として推薦する。

名誉会員候補者:田邉 裕会員
 推薦理由:田邉 裕会員は、長年にわたり東京大学、慶應義塾大学、帝京大学に勤務し、人文地理学の研究・教育に従事してきた。同会員はフランスのレンヌ大学に留学、フランスの政治地理学研究ばかりでなく地誌研究にも従事してきた。この間、多くの著書・論文・翻訳書を発表するとともに、地理学評論に欧文論文を含め論文7編、書評等5編を発表し、地理学の研究・教育を推進してきた。
 同会員は政治地理学研究から出発し、行政地域としての市町村とその領域、その内部構造と関連させた研究は、従来の政治地理学研究からみて新境地の分野であり、政治地理学の研究を前進させる上で大きな役割を果たした。特に明治前期の町村人口の大きさを地域比較する研究、合併による明治行政村の内部の政治社会的条件による成立過程の研究、さらに行政区域と職業、地域構造と購買の階級性とを関連させた研究等は、統計学的手法も駆使した精力的に展開した研究で、高い評価を得た。
 日本の行政地域研究から導き出された通勤・通学、職業人口と地域構造等の研究、さらに歴史地理、都市地理、地理教育の分野でも多くの成果を挙げてきた。抜群の語学力を生かした翻訳では、フェーブルの『大地と人類の進化― 歴史への地理学的序論―』(岩波書店、1972年)等多くを手がけ、日本の地理学者の研究に大きな役割を果たした。一方で、啓蒙的な活動にも貢献し、同会員が総監修翻訳した『図説大百科世界の地理』(朝倉書店、1996~2000年)は、現代世界をコンパクトにまとめた地誌で、人びとに地理学を学ぶ興味を引き起こすことに寄与した。また、フランスの地理学研究とともに、パリ第7大学客員教授、パリ国際大学都市館長を歴任し、日仏の研究・文化交流に大きな貢献をし、フランス政府より学術勲章を授与された。
 日本地理学会では、会員歴52年、その間代議員4期を歴任し、欧文機関誌編集、国際共同研究対応委員会等、主に学会の国際的な分野での役職に貢献した。同会員は国際的知名度を生かして、国際地理学連合(IGU)の副会長を務め、日本の地理学を世界に橋渡しするだけでなく、国際地理学連合の改革等にも寄与した。
 以上の功績により、田邉 裕会員を本会の名誉会員候補者として推薦する。
 
2009年度活動報告
 委員長:小池一之
 委 員:朝野洋一、石井英也、永野征男、山下脩二

 本委員会は日本地理学会規約に則り、委員間で慎重に検討・審議した結果、対象となる全会員の中から、下記の3会員を付記した理由により、名誉会員候補者として推薦することに決定致しました。

名誉会員候補者:新井 正君
 推薦理由:新井 正君は、長年にわたり、立正大学に勤務し、自然地理学、とくに水文学、気候学分野を中心とした研究と教育に従事してきた。この間、60編以上の著書・論文(単著、共著など)を発表している。地理学評論には論文15編、書評22編を掲載し、日本地理学会の発展に貢献した。研究課題は気候と水文の境界領域で、自然科学的な厳密さと地理学的な応用を備えた研究を推進してきた。
 同君は、水の熱的な状態を把握することに先ず主眼を置き、水体の中の熱の流れに着目して研究をすすめた。研究対象は日本のダム湖や湖沼を中心に行い、水利用の面からも応用性の高い研究を行ってきたことに大きな特徴がある。さらに、都市域における水収支から都市水文という分野を開拓し、また、GISを使って温暖化や酸性化問題にも取り組んでいる。しかし、その根底には熱収支論と水収支論という思想が常にあり、水を中心にした地域把握の方法は独創的で、“気候は水の母“であるという言葉に象徴されるように、水文学と気候学を融合し、新たに水文気候学という分野を切り開いた功績は大である。
 同君は成果の多くを地理学評論に発表し、さらに多くの単行本としても世に問うている。湖沼やダム湖の水温形成については『水温論』(共立出版、1974年)、自然科学的な視点と地誌学的な視点を持った『日本の水』(三省堂書店、1980年)は地理学の真価を示す書と言っても過言ではない。調査法の『水文環境調査の基礎』(古今書院、1994年、2003年)、『地域分析のための熱・水収支水文学』(古今書院、2004年)は水文気候学を確立した書でもある。『都市の水文環境』(共立出版、1987年)は都市活動の影響を明らかにしたものとしての評価が高く、さらには『日本の地誌』(総論編(1)自然編)(朝倉書店、2005年)や『アトラス日本列島の環境変化』(朝倉書店、1995年)、『水と気候の風景』(古今書院、2005年)がある。英文では、“The Climate of Japan” (Elsevier Pub. Co.、1997年)、“The Kanto Plain and the Yangtze Delta” (古今書院、1996年)、“Lake Kizaki” (Backhuys Co.、2001年) に分担執筆している。
 日本地理学会では、会員歴52年、その間に専門委員会委員(編集2期、集会、企画)、常任委員(編集専門委員長、企画専門委員長2期、集会専門委員長)の役職を歴任した。さらに、国際共同研究対応委員、学会法人化推進委員も務めた。
 以上の功績により、新井 正君を本会の名誉会員候補者として推薦する。

名誉会員候補者:中村和郎君
 推薦理由:中村和郎君は、長年にわたり、東京都立大学、駒澤大学に勤務し、自然地理学や気候学ばかりでなく地理学方法論、地図学や地理教育など幅広い分野の研究と教育に従事してきた。この間、10編以上の著書(単著、編著、共著など)、および地理学評論掲載論文等8編、書評9編を含め多くの論文を発表し、地理学の研究・教育を推進してきた。
 同君の研究態度は、一貫して大気や地表面を構成している自然環境がどのようなまとまり(地域)でどのように配列・分布しているか、システムとしてどのような意味を有しているかという観点で貫かれている。大気現象や地表事象の存在はそれ自体本来的に(システム的に)意味を持っているという視点は地理システム論の発展に大きく寄与したと言っても過言ではない。また、大気大循環という動的なシステムと地表事象という静的なシステムも空間的な広がりや構造を地図化することによってその本質を理解できるという主張である。つまり、地図は地理学の言語であり、道具であるという。また、地理教育にも大きな関心を払い、様々な見解に対して真摯に向き合い、学際的地理学的研究を推進した功績は非常に大きい。
 気候学の分野では『衛星でみる日本の気象』(岩波書店、1982年)、『日本の気候』(岩波書店、1986年、1996年)、『雲と風を読む』(岩波書店、1991年、2007年)、地理学の方法論としては『地理学「知」の冒険』(古今書院、1991年)は地理学徒にとって必読の書である。地理システムの考え方を導入したものとして『地域と景観』(古今書院、1991年)、「地理情報システムを学ぶ』(古今書院、1998年)の著書がある。また、地理学の本質は地図と探検にあるといい、特に地図の効用や利用を説いた『地理学への招待』(古今書院、1988年)、「地図からの発想』(古今書院、2005年)は地理教育にも多大な影響を与えている。
 日本地理学会では、会員歴50年、その間専門委員会委員(編集、集会)、常任委員(庶務専門委員長、渉外専門委員長)、常任委員長、会長の重責を務めた。さらに、学会賞受賞候補者選考委員、国際共同研究対応委員、名誉会員候補者推薦委員、地理教育専門委員、特任委員会委員など多くの学会役員を務め、日本地理学会の発展に多大なる貢献をしてきた。
 以上の功績により、中村和郎君を本会の名誉会員候補者として推薦する。

名誉会員候補者:森川 洋君
 推薦理由:森川 洋君は、広島大学で地理学を学ばれた後、長年にわたり大分大学、広島大学、福山大学に勤務され、1998年、広島大学から名誉教授の称号を授与された。この間に、単著9冊をはじめ多くの共編著が公刊されている。論文としては地理学評論17編をはじめ、毎年、主要な学会誌に多くの論文を発表し、さらには日本地理学会賞、人文地理学会賞、日本都市学会賞を受賞するなど、人文地理学の発展に大きく寄与した。
 同君の研究は、大著である『中心地研究―理論・研究動向および実証―』(大明堂、1974年)、『中心地論Ⅰ・Ⅱ』(大明堂、1980年)・『中心地論Ⅲ』(大明堂、1988年)で代表されるように、地方都市から巨大都市に至る中心地の構造・階層研究にはじまり、しだいにその視点は都市の圏構造の解明へと発展してきた。そして1980年代に入ると、都市の機能的研究に留まらず、結節地域としての地域システムや都市システム研究へ進展させ、つねに研究史や日進月歩の同分野のグローバルな研究動向にも注意を払い、自己の研究をその中に位置づけてきた点に特徴がある。さらに1990年代以降は、中心地理論の先進国ドイツにおける研究をまとめ、『ドイツ―転機に立つ多極分散型国家―』(大明堂、1995年)や、『人文地理学の展開―英語圏とドイツ語圏との比較研究―』(古今書院、2004年)、『ドイツ市町村の地域改革と現状』(古今書院、2005年)を公刊した。その結果、戦後の人文地理学の中で、急速な進展を遂げたこの分野に対し、多大な功績をもたらしたといえる。
 さらに、空間秩序を解明する一貫した研究視点は、今日の地域再編に関わる各種計画にとっても重要であることを『行政地理学研究』(古今書院、2008年)で総括した。総じてその成果は、地理学が隣接科学に伍して、地域計画等に積極的に発言できることを証明した点で高く評価できよう。なお、日本地理学会においては、会員歴55年、その間に評議員・代議員10期、会計監査2期、監事1期をはじめ、各種委員をも歴任し、学会の発展に尽くした。
 以上の功績により、森川 洋君を本会の名誉会員候補者として推薦する。
 
2008年度活動報告
 委員長:小池一之
 委 員:朝野洋一、石井英也、永野征男、山下修二

 本委員会は日本地理学会規約に則り、委員間で慎重に検討・審議した結果、対象となる全会員の中から、下記の2会員を付記した理由により、名誉会員候補者として推薦することに決定致しました。

名誉会員候補者:江波戸 昭君
 推薦理由:江波戸 昭君は、東京大学・大学院で経済地理学を学ばれた。1965年から明治大学専任講師に就任され、以来、2002年に定年退職し、名誉教授の称号を授与された。公刊された論文・著書等は多数かつ多岐にわたり、同君の活動領域の広さを物語っている。
 江波戸君の初期の研究対象は、経済史学における日本資本主義発達史研究の成果を批判的に取り入れた関東甲信地方の製糸業の実態調査で、『蚕糸業地域の経済地理学的研究』(1969、古今書院)にまとめられている。また、他の学問分野に対し経済地理学的アプローチの独自性や有効性を示し、この延長に『地域構造の史的分析』(1992、大明堂)がある。もう一つの研究対象は、同君の郷土といえる東京であり、『東京の地域研究』(1987、大明堂)などである。居住地田園調布に関しては膨大な量の町内会保存資料を活用して計画的都市の発展過程やそこに形成された近代都市コミュニティが生み出した文化を詳細に記述した『郷土誌 田園調布』(2000、田園調布会発行)や『戦時生活と隣組回覧板』(2001、中央公論事業出版)があり、前者は2003年に日本地理学会賞(優秀賞)を、後者は第5回(2002年度)日本自費出版文化賞(地域文化部門)をそれぞれ受賞している。
 同君は学生時代より合唱団に所属し、世界の民族音楽を中心に、自ら訳詞・採譜するなどして研究を続けてきた。その成果は、『増補新版 世界の音 民族の音』(1996、青土社)など多数の著作になっている。
 日本地理学会では、会員歴55年、この間、評議員6期12年、常任委員(会計専門委員長)3期6年、専門委員(企画担当・編集担当各1期)および財政検討委員会委員などを歴任し、学会の発展に尽力した。
 以上の功績により、江波戸 昭君を本会の名誉会員候補者として推薦する。

名誉会員候補者:鈴木秀夫君
 推薦理由:鈴木秀夫君は、長年にわたり、東京大学、清泉女子大学に勤務し、自然地理学、とくに気候学を中心とした研究と教育に従事してきた。この間、10編以上の著書(単著、共著など)、および、地理学評論掲載論文10編を含め多くの論文を発表し、貴重な研究業績を挙げてきた。地理学本来の研究課題である自然と人間との関係を独自の観点から追及し、広く世の中に地理学の存在を知らしめた功績は非常に大きい。
 同君の研究態度は、一貫して大気の総合状態である気候が地表面の状態にどう影響したかという観点で貫かれている。つまり、大気中に内在する不連続―前線―で気候を区分すべきと主張した。一つひとつの前線を地図上に描き、集まるところを前線帯として日本や世界の前線帯を明らかにすると共に、その変動と人間を含めた地表面活動との連関を考察した。また、過去1万年から現在までの気候変化に関する世界の自然地理学や地質学・考古学などの研究成果を地図上に時代毎(1000年ないし100年単位で)にプロットするという膨大な作業と、人間側の変化との関連を卓越した洞察力をもって分布図上で明らかにした研究は、優れて独創的な地理学的研究である。
 同君は成果を地理学評論を中心に発表し、さらに『風土の構造』、『超越者と風土』(以上大明堂)、『氷河期の気候』(古今書院)、『気候変化と人間』(大明堂、後に原書房)の著書にまとめ、さらに『森林の思考・砂漠の思考』、『気候の変化が言葉をかえた』(以上NHKブックス)、『氷河時代』、『風土の構造』(講談社文庫)などの一般書は、地理学の世界だけでなく、世の中に地理学を深く印象付けた研究として高い評価を得ている。
 日本地理学会では、会員歴55年、その間専門委員(庶務、会計担当各1期、渉外担当2期)などの役職を歴任した。
 以上の功績により、鈴木秀夫君を本会の名誉会員候補者として推薦する。
 
2007年度活動報告
 委員長:竹内淳彦
 委 員:朝野洋一、小池一之、白坂 蕃、堀 信行

 本委員会は、学会規約に則り、対象となる全会員の中から複数の候補者を選び、委員の間で慎重に検討・審議を重ねた結果、下記の会員を付記の理由により、名誉会員候補者として推薦することに決定した。

名誉会員候補者:青木栄一君
 推薦理由:青木栄一会員は、長年にわたり、都留文科大学、防衛医科大学、東京学芸大学、駿河台大学に勤務し、人文地理学、とくに交通地理学を中心に研究と教育に従事してきた。この間、地理学評論掲載論文2編、書評等9編をはじめ、地理学関連学術誌にも多数の論稿を発表し、また、関係分野を含めて多くの著書(単著、共著、共編著など)の執筆に携わるなど、貴重な学術研究業績を上げてきた。また、教育者としても多数の有能な人材を育成してきた。
 同君の研究業績は、艦船に始まり鉄道をメインテーマとする交通地理学を中心に、都市地理学、観光地理学、歴史地理学などの分野に広く及んでいる。とくに鉄道については、鉄道技術全般に関する専門的知識を身につけたうえで丹念なフィールドワークと資料発掘に基づいて特定路線の敷設にまつわる社会経済的背景の分析と鉄道網形成の解明を重ね、その成果は著書『日本の地方民鉄と地域社会』(古今書院)に結実している。また、交通地理学の研究史・研究系譜などについての論説も多い。さらに、同君は、交通地理学の第1人者としての責務を果たすとともに、交通を研究対象とする交通史や地方史、社会経済史、産業考古学など関連他分野とも積極的に交流、その発展に貢献しており、その地理学的方法に基づく研究は他の分野においても高い評価を得ている。同君の業績で特筆すべきは、鉄道・艦船関係の専門雑誌に多数の論説や解説を長年にわたり掲載し、多くの若者に夢を与えるとともに地理学の裾野の拡大にも貢献してきたことである。さらに、国際地理学連合(IGU)の観光地理学、交通地理学部会を中心に活動し海外との学術交流に寄与してきた。
 日本地理学会では、会員歴52年、この間、評議員・代議員を9期18年、編集専門委員長、集会専門委員長各1期、専門委員(編集担当・2期)、名誉会員候補者推薦委員長などの役職を歴任した。
 以上の功績により、青木栄一君を本会の名誉会員候補者として推薦する。

名誉会員候補者:榧根 勇君
 推薦理由:榧根 勇君は、長年にわたり、東京教育大学・筑波大学、愛知大学に勤務し、自然地理学、とくに気候学・水文学を中心に研究と教育に従事してきた。この間、25編以上の著書(単著・共著・共編著・訳書など)、および、地理学評論掲載論文13編を含め多くの論文を発表し、貴重な学術研究業績を上げてきた。教育者としても多くの有能な人材育成に貢献してきた。
 同君は、もともと気候学分野の出身で、その後1969年に新設された水収支論講座において、水文学研究に従事、その後、黒部川扇状地を対象に、地下水流動系を精密な観測事実に基づいてまとめた編著書『扇状地の水循環』を1971年に著した。それら研究において適用した観測および解析手法は、その後のわが国におけるフィールド水文調査の良き規範となるものである。また同君は、海外においても、スリランカ、バリ島などをフィールドに、現地研究機関との共同で精力的な調査を実施した。同君は、水文学のテキストや啓蒙書の執筆にも力を注ぎ、『水の循環』(1973)、『水と気象』(1989)、『地下水の世界』(1992)、『水と女神の風土』(2002)などの著書や多くの論文を発表している。
 同君は、国内外の学・協会においても中心的な役割を果たし、日本水文科学会会長、IHP;IAHS;IGBPなどの国内委員会委員長、日本学術会議会員を歴任し、わが国における地理学・水文科学研究の進展に尽力した。
 日本地理学会では、会員歴51年、その間、評議員・代議員9期18年、庶務専門委員長・企画専門委員長各1期、専門委員(庶務・編集・渉外担当各1期)などの役職を歴任した。
 以上の業績により、榧根 勇君を本会の名誉会員候補者として推薦する。 

名誉会員候補者:田中眞吾君
 推薦理由:田中眞吾君は、東京教育大学、科学技術庁資源局、神戸大学に勤務し、長年にわたり地形学を基軸に自然地理学について幅広い研究を展開した。とくに近畿地方においては、同君らの研究によって多くの知見が蓄積され、日本の中で地形発達史の研究が最も進んだ地域となった。この間、著書(編著・共著)25編以上、地理学評論掲載論文10編など40編を超す学術論文、調査報告書30編以上など多数の業績を挙げるとともに、地域環境について学術的貢献を重ね、また、教育者として、多くの優れた人材を育成してきた。
 同君の研究業績は、地形学の中でも地形発達史の研究に顕著な成果がある。兵庫県を中心に近畿地方の地形について、たとえば播磨地域で東高西低の傾動運動を見出し、20段を超える段丘地形の発達史を気候変化や海水準変動、地形形成営力と関連づけ、火山灰編年学も導入して形成年代の確定に寄与した。また、山麓の麓屑面の形成が最終氷期の周氷河作用と結びつくことを指摘するなど、新たな知見を次々に加えた。いまや近畿地方は、同君が中心に推進した学術ボーリングの成果を含め、長期にわたる地形発達史について、精度の高い多様な知見が蓄積された代表的な地域となり、歴史研究など関連分野にも影響を与えている。この間、同君は、地理学に対する熱意と見識で多くの研究者に刺激を与え、常に研究進展の牽引役として大きな役割を果たした。
 また、各自治体史や地形発達が読める一連の土地分類図の作成、著書、『兵庫の地理:地形でよむ大地の歴史』(2007年)に集約されている地域誌研究への大きな貢献も特筆される。さらに、長年にわたる自然環境保全や環境影響評価に関する各種機関の委員会で活動や講座などを通じての社会貢献も高く評価される。
 日本地理学会では、会員暦51年、この間、評議員・代議員2期4年、名誉会員候補者推薦委員長を務めた。
 以上の功績により、田中眞吾君を本会の名誉会員候補者として推薦する。
 
2006年度活動報告
 委員長:竹内淳彦
 委 員:朝野洋一、小池一之、白坂 蕃、堀 信行

 本委員会は、学会規約に則り、対象となる全会員の中から複数の候補者を選び、委員の間で慎重に検討・審議を重ねた結果、下記の会員を付記の理由により、名誉会員候補者として推薦することに決定した。

名誉会員候補者:門村 浩君
 推薦理由:門村 浩君は長年にわたり、建設省国土地理院、東京都立大学、北海道大学、立正大学 で、自然地理学のとくに環境地形学を基礎に、環境変動論、自然災害論など地球環境研究に多面的で総合的な研究と教育に従事してきた。この間、著書(編著・共著)18編以上、学術論文70編以上、その他展望・報告書の執筆など多数の優れた業績を挙げるとともに、多くの人材育成に貢献した。
 同君の研究業績は、地形および土地分類や土地評価、低地の地形と地盤、都市域の災害、土地改変に伴う環境変化、火山活動に伴う災害と環境変動、熱帯アフリカの環境変動と気候地形学、サバンナ化、古水文環境変動、砂漠化や土地荒廃とその防止、環境保全、さらに包括的な自然環境論など広範な分野に及んでいる。そしてこれらの研究を第四紀学や工学など関連分野と連携した新たな視座を提示し、フィールドワークを基礎に写真判読による地形学図の創意工夫など手法の開発にも努めた。日本やアフリカなどでの地理学の総合的視点を生かした研究を通して局地的な問題と地球規模の問題とを結びつけ、それらの研究を国際的レベルで展開した。また、国際地理学連合(IGU)の各種委員会や、国際連合の「砂漠化に関する国際専門家パネルメンバー」(IPED)など、各種の国際活動を通じて地理学の立場から環境分野に寄与してきた。
 日本地理学会では、会員暦51年でこの間、会計監査1期2年、評議員5期10年、編集委員長1期、集会専門委員、国際共同研究対応委員、研究奨励賞受賞候補者選考委員長などの役職を歴任した。
 以上の功績により、門村 浩君を本会の名誉会員候補者として推薦する。

名誉会員候補者:藤原健藏君
 推薦理由:藤原健藏君は、長年にわたり、東北大学、広島大学、広島経済大学などに勤務し、自然地理学、とくに地形学を中心に地誌も含め広い分野にわたり、研究と教育に従事してきた。この間、著書(単著・共著・共編著・訳書など)15編以上、学術論文は広島大学退官時までに82編、その他多くの調査報告書、事典などの執筆を続け、貴重な学術研究業績を上げてきた。教育者としても多くの有能な人材育成に貢献してきた。また数次にわたり南極地域観測隊員となり、1967-69には越冬隊員として昭和基地-南極点間往復の学術調査を成功させた。この功績により内閣総理大臣顕彰を受け秩父宮記念学術賞を受賞した。
 同君の研究業績は、専門とする地形学の分野では、東北地方の主な河川流域の地形発達や活断層を含む変動地形に関する研究に始まり、南極地域の氷食地形・雪氷などの研究で多くの成果を上げてきた。また、1988年以降は、10年間以上にわたり科学研究費海外学術研究・国際学術研究費を受け、研究代表者としてインド・熱帯アジアの学術調査に携わってきた。加えて、広島大学に地誌研究所を設置する運動にも積極的に関わり、広島大学総合地誌研究資料センター設置を実現させ、1986-94には同センター長としてセンターの発展に寄与した。
 日本地理学会では、会員歴52年、その間、会計監査1期2年、評議員4期8年、庶務専門委員、国際共同研究対応委員会委員長などの役職を歴任した。
 以上の功績により、藤原健藏君を本会の名誉会員候補者として推薦する。
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