名誉会員候補者推薦委員会

2007年度活動報告
 委員長:竹内淳彦
 委 員:朝野洋一、小池一之、白坂 蕃、堀 信行

 本委員会は、学会規約に則り、対象となる全会員の中から複数の候補者を選び、委員の間で慎重に検討・審議を重ねた結果、下記の会員を付記の理由により、名誉会員候補者として推薦することに決定した。

名誉会員候補者:青木栄一君
 推薦理由:青木栄一会員は、長年にわたり、都留文科大学、防衛医科大学、東京学芸大学、駿河台大学に勤務し、人文地理学、とくに交通地理学を中心に研究と教育に従事してきた。この間、地理学評論掲載論文2編、書評等9編をはじめ、地理学関連学術誌にも多数の論稿を発表し、また、関係分野を含めて多くの著書(単著、共著、共編著など)の執筆に携わるなど、貴重な学術研究業績を上げてきた。また、教育者としても多数の有能な人材を育成してきた。
 同君の研究業績は、艦船に始まり鉄道をメインテーマとする交通地理学を中心に、都市地理学、観光地理学、歴史地理学などの分野に広く及んでいる。とくに鉄道については、鉄道技術全般に関する専門的知識を身につけたうえで丹念なフィールドワークと資料発掘に基づいて特定路線の敷設にまつわる社会経済的背景の分析と鉄道網形成の解明を重ね、その成果は著書『日本の地方民鉄と地域社会』(古今書院)に結実している。また、交通地理学の研究史・研究系譜などについての論説も多い。さらに、同君は、交通地理学の第1人者としての責務を果たすとともに、交通を研究対象とする交通史や地方史、社会経済史、産業考古学など関連他分野とも積極的に交流、その発展に貢献しており、その地理学的方法に基づく研究は他の分野においても高い評価を得ている。同君の業績で特筆すべきは、鉄道・艦船関係の専門雑誌に多数の論説や解説を長年にわたり掲載し、多くの若者に夢を与えるとともに地理学の裾野の拡大にも貢献してきたことである。さらに、国際地理学連合(IGU)の観光地理学、交通地理学部会を中心に活動し海外との学術交流に寄与してきた。
 日本地理学会では、会員歴52年、この間、評議員・代議員を9期18年、編集専門委員長、集会専門委員長各1期、専門委員(編集担当・2期)、名誉会員候補者推薦委員長などの役職を歴任した。
 以上の功績により、青木栄一君を本会の名誉会員候補者として推薦する。

名誉会員候補者:榧根 勇君
 推薦理由:榧根 勇君は、長年にわたり、東京教育大学・筑波大学、愛知大学に勤務し、自然地理学、とくに気候学・水文学を中心に研究と教育に従事してきた。この間、25編以上の著書(単著・共著・共編著・訳書など)、および、地理学評論掲載論文13編を含め多くの論文を発表し、貴重な学術研究業績を上げてきた。教育者としても多くの有能な人材育成に貢献してきた。
 同君は、もともと気候学分野の出身で、その後1969年に新設された水収支論講座において、水文学研究に従事、その後、黒部川扇状地を対象に、地下水流動系を精密な観測事実に基づいてまとめた編著書『扇状地の水循環』を1971年に著した。それら研究において適用した観測および解析手法は、その後のわが国におけるフィールド水文調査の良き規範となるものである。また同君は、海外においても、スリランカ、バリ島などをフィールドに、現地研究機関との共同で精力的な調査を実施した。同君は、水文学のテキストや啓蒙書の執筆にも力を注ぎ、『水の循環』(1973)、『水と気象』(1989)、『地下水の世界』(1992)、『水と女神の風土』(2002)などの著書や多くの論文を発表している。
 同君は、国内外の学・協会においても中心的な役割を果たし、日本水文科学会会長、IHP;IAHS;IGBPなどの国内委員会委員長、日本学術会議会員を歴任し、わが国における地理学・水文科学研究の進展に尽力した。
 日本地理学会では、会員歴51年、その間、評議員・代議員9期18年、庶務専門委員長・企画専門委員長各1期、専門委員(庶務・編集・渉外担当各1期)などの役職を歴任した。
 以上の業績により、榧根 勇君を本会の名誉会員候補者として推薦する。 

名誉会員候補者:田中眞吾君
 推薦理由:田中眞吾君は、東京教育大学、科学技術庁資源局、神戸大学に勤務し、長年にわたり地形学を基軸に自然地理学について幅広い研究を展開した。とくに近畿地方においては、同君らの研究によって多くの知見が蓄積され、日本の中で地形発達史の研究が最も進んだ地域となった。この間、著書(編著・共著)25編以上、地理学評論掲載論文10編など40編を超す学術論文、調査報告書30編以上など多数の業績を挙げるとともに、地域環境について学術的貢献を重ね、また、教育者として、多くの優れた人材を育成してきた。
 同君の研究業績は、地形学の中でも地形発達史の研究に顕著な成果がある。兵庫県を中心に近畿地方の地形について、たとえば播磨地域で東高西低の傾動運動を見出し、20段を超える段丘地形の発達史を気候変化や海水準変動、地形形成営力と関連づけ、火山灰編年学も導入して形成年代の確定に寄与した。また、山麓の麓屑面の形成が最終氷期の周氷河作用と結びつくことを指摘するなど、新たな知見を次々に加えた。いまや近畿地方は、同君が中心に推進した学術ボーリングの成果を含め、長期にわたる地形発達史について、精度の高い多様な知見が蓄積された代表的な地域となり、歴史研究など関連分野にも影響を与えている。この間、同君は、地理学に対する熱意と見識で多くの研究者に刺激を与え、常に研究進展の牽引役として大きな役割を果たした。
 また、各自治体史や地形発達が読める一連の土地分類図の作成、著書、『兵庫の地理:地形でよむ大地の歴史』(2007年)に集約されている地域誌研究への大きな貢献も特筆される。さらに、長年にわたる自然環境保全や環境影響評価に関する各種機関の委員会で活動や講座などを通じての社会貢献も高く評価される。
 日本地理学会では、会員暦51年、この間、評議員・代議員2期4年、名誉会員候補者推薦委員長を務めた。
 以上の功績により、田中眞吾君を本会の名誉会員候補者として推薦する。
 
2006年度活動報告
 委員長:竹内淳彦
 委 員:朝野洋一、小池一之、白坂 蕃、堀 信行

 本委員会は、学会規約に則り、対象となる全会員の中から複数の候補者を選び、委員の間で慎重に検討・審議を重ねた結果、下記の会員を付記の理由により、名誉会員候補者として推薦することに決定した。

名誉会員候補者:門村 浩君
 推薦理由:門村 浩君は長年にわたり、建設省国土地理院、東京都立大学、北海道大学、立正大学 で、自然地理学のとくに環境地形学を基礎に、環境変動論、自然災害論など地球環境研究に多面的で総合的な研究と教育に従事してきた。この間、著書(編著・共著)18編以上、学術論文70編以上、その他展望・報告書の執筆など多数の優れた業績を挙げるとともに、多くの人材育成に貢献した。
 同君の研究業績は、地形および土地分類や土地評価、低地の地形と地盤、都市域の災害、土地改変に伴う環境変化、火山活動に伴う災害と環境変動、熱帯アフリカの環境変動と気候地形学、サバンナ化、古水文環境変動、砂漠化や土地荒廃とその防止、環境保全、さらに包括的な自然環境論など広範な分野に及んでいる。そしてこれらの研究を第四紀学や工学など関連分野と連携した新たな視座を提示し、フィールドワークを基礎に写真判読による地形学図の創意工夫など手法の開発にも努めた。日本やアフリカなどでの地理学の総合的視点を生かした研究を通して局地的な問題と地球規模の問題とを結びつけ、それらの研究を国際的レベルで展開した。また、国際地理学連合(IGU)の各種委員会や、国際連合の「砂漠化に関する国際専門家パネルメンバー」(IPED)など、各種の国際活動を通じて地理学の立場から環境分野に寄与してきた。
 日本地理学会では、会員暦51年でこの間、会計監査1期2年、評議員5期10年、編集委員長1期、集会専門委員、国際共同研究対応委員、研究奨励賞受賞候補者選考委員長などの役職を歴任した。
 以上の功績により、門村 浩君を本会の名誉会員候補者として推薦する。

名誉会員候補者:藤原健藏君
 推薦理由:藤原健藏君は、長年にわたり、東北大学、広島大学、広島経済大学などに勤務し、自然地理学、とくに地形学を中心に地誌も含め広い分野にわたり、研究と教育に従事してきた。この間、著書(単著・共著・共編著・訳書など)15編以上、学術論文は広島大学退官時までに82編、その他多くの調査報告書、事典などの執筆を続け、貴重な学術研究業績を上げてきた。教育者としても多くの有能な人材育成に貢献してきた。また数次にわたり南極地域観測隊員となり、1967-69には越冬隊員として昭和基地-南極点間往復の学術調査を成功させた。この功績により内閣総理大臣顕彰を受け秩父宮記念学術賞を受賞した。
 同君の研究業績は、専門とする地形学の分野では、東北地方の主な河川流域の地形発達や活断層を含む変動地形に関する研究に始まり、南極地域の氷食地形・雪氷などの研究で多くの成果を上げてきた。また、1988年以降は、10年間以上にわたり科学研究費海外学術研究・国際学術研究費を受け、研究代表者としてインド・熱帯アジアの学術調査に携わってきた。加えて、広島大学に地誌研究所を設置する運動にも積極的に関わり、広島大学総合地誌研究資料センター設置を実現させ、1986-94には同センター長としてセンターの発展に寄与した。
 日本地理学会では、会員歴52年、その間、会計監査1期2年、評議員4期8年、庶務専門委員、国際共同研究対応委員会委員長などの役職を歴任した。
 以上の功績により、藤原健藏君を本会の名誉会員候補者として推薦する。
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